京王多摩川ハモンズの物件概要を見ると、用途地域の欄に「近隣商業地域」と書かれています。
「商業地域ってことは、隣にパチンコ店が建ったりするの?」「住むには騒がしいのでは?」と感じる方もいるかもしれません。
結論から言うと、近隣商業地域のデメリットは確かにあります。ただ、京王多摩川駅前には「地区計画」という独自のルールがあり、そのデメリットの多くが抑えられています。
この記事では、近隣商業地域の基本から、調布市が定めた地区計画の中身まで宅建士が宅建の視点から解説します。
前回の記事では、ハモンズの敷地が「仮換地」であることと、区画整理・清算金について解説しました。あわせてご覧ください。
そもそも用途地域とは?
用途地域とは、「この場所にはどんな建物を建ててよいか」を地域ごとに決めたルールです。住宅地の中に大きな工場が建ったり、静かな住宅街に繁華街ができたりしないよう、街を13種類に色分けしています。
13種類は大きく分けて、住居系・商業系・工業系の3つのグループがあります。

近隣商業地域とは?
近隣商業地域は、商業系の2つのうちの1つで、「近隣の住民が日用品の買い物をする店舗などの利便性を高める地域」とされています。駅前や大きな道路沿いによく指定されていて、マンションが建つことも珍しくありません。
駅徒歩2分に265戸のマンションが建てられるのも、商業系の用途地域だからこそです。近隣商業地域は「住むのに向かない場所」ではなく、「利便性と引き換えに、建てられる建物の幅が広い場所」と考えるとわかりやすいです。
近隣商業地域の一般的なデメリット
とはいえ、住居系の地域と比べると、次のようなデメリットがあります。
建てられる建物の幅が広い
店舗・事務所・ホテルのほか、カラオケボックス、パチンコ店、映画館、小規模な工場なども建てることができます。
大きな建物が建ちやすい
建蔽率(敷地に対する建物の面積の割合)や容積率が、住居系の地域より高く設定されることが一般的です。京王多摩川駅前の近隣商業地域も、建蔽率80%・容積率300%とされています。
日当たりや眺望が守られにくい
住居系の地域ほど日照が保護されないため、隣に大きな建物が建つと、日当たりや眺望に影響が出ることがあります。
ここまで読むと不安になるかもしれませんが、ここからが本題です。
京王多摩川駅前には「地区計画」がある
地区計画とは、用途地域よりもさらに細かく、その地区だけのルールを市が定める制度です。用途地域が「全国共通の大まかなルール」だとすると、地区計画は「この街のためのオーダーメイドのルール」です。
京王多摩川駅周辺では、2023年5月に「京王多摩川駅周辺地区地区計画」が決定されました。区域は京王多摩川駅を中心とした約24.7haです。

この区域は、土地利用の方針によって6つの地区に分けられています。そのうち、建てられない建物や壁面後退などの具体的なルール(地区整備計画)が定められているのは、駅前の「駅前複合拠点地区A地区」約2.95haだけです。

調布市の説明会資料によると、A地区は土地区画整理事業で基盤整備を行うエリアとされていて、区画整理区域内にあるハモンズの敷地もこのA地区に含まれます。
では、A地区にどんなルールがあるのか見ていきましょう。
ルール1:不安な施設は建てられない
A地区では、次の建物を建てることができません。
- 風俗営業の用途に使う建物(パチンコ店なども含まれる)
- 神社・寺院・教会など

近隣商業地域で多くの人が一番気にする「パチンコ店や風俗店が近くにできる」という心配は、この地区計画によって抑えられています。
ルール2:建蔽率は80%から60%に
用途地域では建蔽率80%とされていますが、地区計画で60%に引き下げられています。敷地の4割以上は建物を建てない空地として残ることになり、建物が敷地いっぱいに詰め込まれるのを防いでいます。
さらに、敷地面積の最低限度は4,000㎡とされています。小さな敷地に細長いビルが乱立するような街並みにはなりにくいルールです。
ルール3:道路沿いに広い歩道空間が生まれる
地区計画では、道路に面した建物の壁を、道路境界から1〜5m後ろに下げる「壁面後退」が定められています。そのうえ、場所によっては道路境界から1.0m、1.5m、4.0m以上の「歩道状空地」を確保することになっています。

しかも、この後退部分には、門・塀・広告物・看板などを原則として置くことができません。道路に面する垣や柵も、生垣か、向こう側が見えるフェンスにすることになっています。
その結果、建物の前には看板や塀に邪魔されない、広く見通しの良い歩行者空間が生まれます。
さらにA地区では、新しい道路、公園(約1,675㎡)、3か所の広場、歩行者用通路なども整備されることになっています。
ルール4:1階はお店に、通りににぎわいを
A地区では、建物の1階(主要な道路に面する建物は1階と2階)を住居にすることができません。そのため、通り沿いには店舗などが並ぶことになります。
1階が住居ばかりの通りは、夜になると暗く人通りも少なくなりがちです。1階が店舗になることで、夜も人通りと灯りのある通りが期待できます。
また、建物の色は原色を避けた落ち着いた色彩とし、大型ビジョンやネオン、LED表示板を設ける場合は周辺環境に配慮することとされています。
ルール5:高さにも上限がある
建物の高さは37.5m以下とされています(物件概要には高度地区31mもあわせて記載されています)。さらに、主要な道路に面する高さ10mを超える建物には、冬至日の日影についての規制もかかります。
近隣商業地域でも、「とんでもなく高いビルが目の前に建つ」ということは起きにくいルールになっています。
それでも知っておきたい注意点
ここまで見ると安心材料が多いですが、正直にお伝えしておきたい点もあります。
具体的なルールがあるのはA地区だけ
さきほどの土地利用の区分図のとおり、地区計画の区域は約24.7haと広いものの、具体的なルールが定められているのは駅前のA地区だけです。南側のB地区や周辺のエリアは、方針が示されているにとどまります。ハモンズの周りすべてが同じルールで守られているわけではありません。
まだ街は完成途中
地区計画の容積率は、道路や公園などの公共施設が整備されるまでは暫定的に80%(主要道路から20m以内は150%)に抑えられていて、整備後に300%となる仕組みです。つまり、区画整理が完了したあとに、駅前の建物の計画が本格化する可能性があります。前回の記事で解説した区画整理の進み具合とあわせて、今後の動向に注目しておきたいところです。
まとめ
- 近隣商業地域は、利便性と引き換えに建てられる建物の幅が広い用途地域
- 京王多摩川駅前のA地区では地区計画により、パチンコ店などの風俗営業の用途は建てられない
- 建蔽率は80%から60%に引き下げられ、敷地には空地が残る
- 壁面後退と歩道状空地によって、看板や塀のない広い歩行者空間が生まれる
- 1階が店舗になるため、人通りと灯りのある通りが期待できる
- ただし具体的なルールがあるのはA地区だけ。周辺の将来の開発は別途確認しよう
物件を見るときは、「近隣商業地域」という名前だけで判断するのではなく、その場所にどんな地区計画があるかを見ることが大切です。用途地域は街の大まかな性格を、地区計画はその街の本当の姿を教えてくれます。


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