【東京再開発マップ ②】八重洲・日本橋

都市・再開発

― 首都高が消え、川が街の主役になる10年

建設中 計画中 竣工済 インフラ事業

第2回は八重洲・日本橋。第1回の丸の内・大手町が「東京駅の西側」なら、こちらは東側です。

このエリアを理解する鍵は、個々のビルではなく首都高の地下化です。日本橋区間の地下ルート完成は2035年度、高架橋の撤去完了は2040年度を予定しています。<cite index=”79-1″>2025年4月5日には八重洲線(神田橋JCT〜西銀座JCT)が2035年度までの長期通行止めに入り、KK線も同日に廃止されました。</cite> Shutoko

つまり、いま動いている再開発群は「10年後に川沿いが一等地になる」ことを前提に、川に顔を向けて設計されている。ここが丸の内側との決定的な違いです。


① 八重洲二丁目中地区第一種市街地再開発事業「YAESU CORE」

敷地面積 約19,563㎡/2029年1月末竣工予定

東京駅前で最大級のプロジェクトです。地上43階・地下3階、高さ223.42m、延床面積約389,384㎡。建築主は八重洲二丁目中地区市街地再開発組合(参加組合員:都市再生機構、鹿島建設、住友不動産、阪急阪神不動産、ヒューリック、三井不動産)で、設計・施工は鹿島建設。<cite index=”61-1″>再開発のために37棟が解体されました。</cite> Livedoor

2026年8月24日、施設名称が『YAESU CORE』に決定したと発表されました。人・もの・情報・文化・交通が交わる八重洲の新たな”核”になる、という意味が込められています。 Wikipedia

用途構成が特異です。地下2〜地下1階にバスターミナル東京八重洲、地下1〜3階に商業施設、3〜6階の南東側に劇場、3〜4階の北東側にインターナショナルスクール、3〜38階にオフィス、40〜43階にサービスアパートメント。オフィスフロアの一部にはHondaの本社が移転してくることが決まっており、商業施設は約50店舗で計画、八重洲ブックセンターも再出店します。 Livedoor

劇場は阪急電鉄が劇場床の区分所有権を取得し、梅田芸術劇場が運営する約1,300席。<cite index=”53-1″>ミュージカル・演劇・宝塚歌劇・コンサートの上演を想定し、開業は2029年度予定です。</cite> Hhp

北隣の東京ミッドタウン八重洲とは地下通路と地上2階の歩行者デッキで接続され、両施設合わせて100店舗超・約5,000坪の商業空間になります。<cite index=”53-1″>さらに地下通路で八重洲地下街、京橋エドグランともつながり、東京駅から京橋駅までの歩行者ネットワークが構築されます。</cite> Livedoor

なお本事業は「東京駅前八重洲一丁目東地区」「東京ミッドタウン八重洲」「八重洲二丁目中地区」の3事業からなる”東京駅前3地区再開発”の最後に竣工する集大成という位置づけです。 Mitsui Fudosan

② 東京駅前八重洲一丁目東A地区・B地区「TOFROM YAESU」

延べ面積 約225,200㎡(B地区)/2025年度竣工

大丸東京店の向かい一帯の再開発で、B地区には地上54階・高さ250mの「TOFROM YAESU TOWER」が建設され、オフィスのほか下層階に医療施設・非常用発電施設・ビジネス交流施設などが入ります。東京駅側の角地のA地区には地上10階・地下2階の「TOFROM YAESU THE FRONT」が誕生。<cite index=”69-1″>用途は事務所、店舗、カンファレンス、医療施設、バスターミナル、駐車場などで、都市再生特別地区を活用し、国際都市東京の玄関口にふさわしい交通結節機能の強化を図るものです。</cite> TOKYO BEST OFFICE

事業者の東京建物は、このエリアをYNK(八重洲・日本橋・京橋)と呼んでいます。首都高地下化をはじめとする日本橋川再生計画やTokyo Sky Corridor計画、羽田空港アクセス線(仮称)による東京駅から羽田空港へのダイレクトアクセス、つくばエクスプレスと都心部・臨海地域地下鉄構想の東京駅接続に向けた動きなど、複数の交通計画が重なるエリアの玄関口という位置づけです。 Tatemono

③ 八重洲一丁目北地区第一種市街地再開発事業

高さ約235m/南街区2028年度・北街区2031年度竣工予定

日本橋川に真正面から向き合う計画です。南北街区一体を段階的に整備するプロジェクトで、南街区は基準階面積約860坪のオフィスを中心とする高層棟、北街区は首都高の地下化に伴い整備される日本橋川沿いの水辺空間と、それに連続する低層の商業施設を配置。南北街区間の歩行者デッキで動線をつなぎます。南街区では日本橋駅と東京駅を地下通路で結び、日本橋駅・大手町駅・東京駅・京橋駅間の広域地下歩行者ネットワークを実現。宿泊施設としてThe Ascott Limitedの最上位ラグジュアリーブランド「The Crest Collection」を日本初誘致し、高度金融人材サポート施設も設置されます。<cite index=”75-1″>規模は地上45階・地下5階、延床面積約186,500㎡で、2024年11月19日に着工しました。</cite> PR TIMES

北街区が「延床約1,000㎡の低層」という配分がポイントです。容積を南に寄せ、川沿いはあえて低く抑える——首都高が消えた後の水辺景観を優先した構成で、設計課題でも参考にしやすい判断だと思います。

④ 日本橋一丁目中地区「東京ミッドタウン日本橋」

敷地面積 約15,560㎡/2026年竣工予定

延べ面積約374,800㎡、基準階面積は低層部約6,281㎡(約1,900坪)/高層部約4,298㎡(約1,300坪)。用途は店舗、事務所、カンファレンス施設、ビジネス支援施設、ホテル、サービスアパートメント、駐車場等です。(竣工時期は資料により2026年3月〜9月で幅があります。2021年12月に着工し、2026年3月竣工を目指すとされていました。) Office NaviLIFULL HOME’S

この再開発が必要とされた理由のひとつが首都高日本橋区間の地下化です。地下化は日本橋川の地下だけでなく一部で建物敷地の地下空間を活用する必要があるため、建物の更新が不可欠でした。地下化事業と市街地再開発事業が一体で進められています。 LIFULL HOME’S

C街区地下にはエネルギーセンターが設置され、コージェネレーションシステムによる排熱利用や中圧ガス発電により停電時でも事業継続が可能な構成。将来的には周辺地区への供給も検討されています。 Mitsui Fudosan

⑤ 日本橋室町一丁目地区第一種市街地再開発事業

区域面積 約1.1ha/A街区2031年度・B街区2033年度・C・D街区2034年度以降

超高層のA街区と、日本橋川沿いに配置される低層のB・C・D街区に分かれます。A街区は地上34階・地下4階、高さ約173m、敷地面積約4,800㎡、延床面積約116,100㎡で、参加組合員は三井不動産。低層部に店舗やライフサイエンス産業支援施設、中層部にオフィス、高層部に住宅を配置し、低層のB街区は店舗、C・D街区は倉庫の計画です。敷地内にあった「むろまち小路」は貫通通路として生まれ変わります。C街区の一部とD街区の地下は首都高地下化のトンネルルートにあたり、敷地の浅い場所をトンネルが通ります。 Livedoor

自分の敷地の地下を高速道路が貫通する前提で建築を設計するという、かなり異例な条件です。

⑥ 日本橋一丁目東地区第一種市街地再開発事業

区域面積 約3.6ha/A・B街区2031年度、C・D・E街区2038年度

このエリア最大の区域面積を持ち、完了が2038年度という超長期プロジェクトです。東京メトロ・都営地下鉄日本橋駅に隣接し、永代通りと昭和通りが交差する江戸橋一丁目交差点に接する立地。地区内は旧耐震基準の建物割合が高く、日本橋川沿いに建物が隙間なく建てられて市街地と水辺空間が分断されているという課題がありました。駅・まち・川をつなぐ歩行者基盤の整備、首都高地下化の実現に向けた協力、水辺の憩い広場の整備、都心型複合MICE拠点を支えるカンファレンスの整備などが図られます。 Tokyo Metropolitan Government

用途は事務所、店舗、住宅、カンファレンス、サービスアパートメント、生活支援施設。江戸橋南側に2棟の高層棟が並び、国家戦略住宅やサービスアパートメント、各種生活支援施設を備え、川沿いには約2,000㎡の広場や緑地、眺望テラスが生まれます。横断デッキにより日本橋一丁目中地区ともつながります。参画は三井不動産、東急不動産、日鉄興和不動産です。 Nihonbashiriverwalk

⑦⑧ 日本橋リバーウォークと首都高地下化

個別事業を束ねる上位概念が「日本橋リバーウォーク」です。親水空間と川沿い歩行者ネットワークを中心に、日本橋川沿いの再開発区域とその周辺一帯を指すエリア名称で、首都高日本橋区間地下化事業と5つの再開発事業が連携し、国・東京都・中央区・首都高・民間事業者と地域が一体で進めています。5つの開発区域を合わせた面積は約11ha。 Mitsui Fudosan

その5地区とは、日本橋一丁目中地区・八重洲一丁目北地区・日本橋室町一丁目地区・日本橋一丁目東地区・日本橋一丁目1・2番地区。川幅を含め幅約100m・長さ1,200mに及ぶ親水空間が生まれる計画で、2025年春に一般社団法人日本橋リバーウォークエリアマネジメントが設立され、プレゼンテーション拠点「VISTA」も開設されました。 Mitsui Fudosan

地下化工事の技術的難度も相当です。地下化区間は神田橋JCTから鎧橋付近まで。新幹線や山手線が交差する新常盤橋付近から地下に入り、江戸橋を過ぎたあたりで地上に戻るルートで、既存の地下鉄や上下水道管、電線を避けながら構築されます。銀座周辺の区間は直径12.7mのシールドトンネルで、都心のため通常必要な工事ヤードが確保できず、2階建て構造の工事ヤードと防音ハウスが用いられます。 LIFULL HOME’SBuildApp News

⑨ (参考)京橋三丁目東地区第一種市街地再開発事業

地上35階・地下4階・高さ約180m/2026年度着工〜2030年度竣工予定

東京建物が進める計画で、KK線の既存施設の再生を扱う「Tokyo Sky Corridor(空中回廊)」構想と連動します。八重洲の南、銀座との境界にあたるため、エリア③(銀座・新橋・築地)でも触れる可能性がありますが、YNK一体の文脈ではここに置くのが自然です。 TOKYO BEST OFFICE


まとめ:八重洲・日本橋の20年後

事業規模完成時期
YAESU CORE(八重洲二丁目中)約19,563㎡/223m2029年1月
TOFROM YAESU延べ約225,200㎡/250m2025年度
八重洲一丁目北地区約235m2028・2031年度
東京ミッドタウン日本橋約15,560㎡2026年
日本橋室町一丁目地区約1.1ha/173m2031〜2034年度
日本橋一丁目東地区約3.6ha2031・2038年度
首都高地下化約1.8km2035年度(撤去2040年度)

丸の内側が「街路と広場を編む」再開発だとすれば、八重洲・日本橋は「インフラを消して、川という自然条件を取り戻す」再開発です。1963年に日本橋の上に架けられた高架を、約80年かけて元に戻す。都市計画としてこれほど分かりやすい”やり直し”は他にありません。

ただし完成は2040年度。いま設計を学んでいる世代が、実務の中核でこの風景の仕上げを担うことになります。

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