東京再開発マップ ③】銀座・新橋・築地

都市・再開発

― 高速道路を「たたむ」ことで生まれる、東京最大の空き地

建設中 計画中 竣工済 インフラ・公共空間

第3回は銀座・新橋・築地。丸の内が「街路を編む」、八重洲・日本橋が「高速を地下に沈める」再開発だとすれば、このエリアは「高速道路を廃止して人に開く」と「都心に残った19haの更地を使う」という2つの巨大な操作が同時に起きています。

ちなみに③と②は連動しています。KK線が廃止された理由は、日本橋周辺の再開発と首都高都心環状線の地下化に伴い、新たに整備する「新京橋連結路」とルートが重複するためです。江戸橋JCTの一部ランプ廃止で環状が破綻するのを防ぐため新京橋連結路を敷設しますが、これが八重洲線から直通するルートとなり、八重洲線と接続していたKK線側が廃止されることになりました。 Kuruma News

日本橋に青空を戻すために、銀座の上空から高速道路が消える。この因果関係が、③を読むうえでの前提です。


① 築地地区まちづくり事業(旧築地市場跡地)

敷地面積 約19ha/2026年度着工予定

都心に残された最後の大規模用地です。築地市場跡地に約9,000億円を投じる再開発で、約19万㎡の敷地に計9棟。事業者は三井不動産を代表企業とする特別目的会社「築地まちづくり」で、東京都が公募型プロポーザル方式により2024年4月に選定、2025年3月に基本協定を締結済みです。2026年度末には定期借地権設定契約を結び、敷地を70年間貸し付ける予定。構成員にはトヨタ不動産、読売新聞グループ本社、鹿島、清水建設、竹中工務店、日建設計、パシフィックコンサルタンツ、朝日新聞社、トヨタ自動車が名を連ねます。 Nikkei

総延床面積は約126万700㎡。中央に大規模集客・交流施設(マルチスタジアム)を配置し、それを囲むように高さ約110m〜210mの超高層オフィス・タワーマンション・超高層ホテルなどが建ち並びます。所在地は中央区築地五丁目・六丁目の都有地で、隅田川、浜離宮恩賜庭園、晴海通り、築地場外市場、新大橋通りに囲まれた敷地を環状2号線が貫きます。 Livedoor

2025年8月に策定された基本計画では、「扇」をデザインモチーフとした東京の新たなアイコンとなる景観形成が示されました。銀座から続く文化・芸術の流れ、築地場外市場の食文化、新橋・汐留のビジネス拠点、隣接する医療施設との連携により、大規模集客・交流機能、迎賓・ホスピタリティ機能、食文化を継承・発展させる機能、周辺医療施設と連携しイノベーションを創出する機能を導入します。 Mitsui Fudosan

スケジュールは段階的です。2026〜2027年度に先行してにぎわい施設が暫定オープン、2029年度に隅田川沿いの「舟運・シアターホール複合棟」が開業、2030年代前半に「まちびらき一期」として大規模集客・交流施設やライフサイエンス・商業複合棟、MICE・ホテル・レジデンス棟が開業、2030年代後半に二期という流れです。 Kenbiya

陸・海・空のモビリティが乗り入れ可能な広域交通結節点を整備し、緑被率約40%、太陽光発電、水素ステーション、バイオガス発電などカーボンニュートラルに向けた取り組みも掲げられています。 Mitsui Fudosan

「スタジアムを核に都心の街区を組む」という構成は日本ではほぼ前例がなく、これから10年で最も議論を呼ぶプロジェクトになると思います。

② HIBIYA CROSSPARK(内幸町一丁目街区)

総延床面積 約110万㎡/2028〜2037年度

日比谷公園の東側一帯を丸ごと更新する、都心最大級の複合再開発です。2026年4月14日、事業者10社(NTT、NTTアーバンソリューションズ、NTT都市開発、NTT東日本、第一生命保険、中央日本土地建物、帝国ホテル、東京センチュリー、東京電力ホールディングス、三井不動産)が街区名称を「HIBIYA CROSSPARK(日比谷クロスパーク)」に決定し、街区コンセプト「風が生まれる場所になろう。」を策定しました。 Mitsui Fudosan

構成は南・中・北の3地区です。北地区は帝国ホテルの建替えで、Ⅰ期に地上46階・高さ約230mのノースタワー、Ⅱ期に地上29階・高さ約145mの新本館を建設。中地区は日比谷U-1ビルやNTT日比谷ビル等がある場所に地上46階・高さ約230m・延床約37万㎡のセントラルタワーが建ち、日比谷公園とは大規模なデッキで接続されます。南地区はみずほ銀行内幸町ビル等の場所に地上43階・高さ約230m・延床約31万㎡のサウスタワーが建設されます。 Livedoor

実際の高さは、南地区タワーが地上46階・高さ227.78m(最高232.52m)、中地区のNTT日比谷タワーが地上48階・高さ229.357m(最高233.527m)。<cite index=”95-1″>帝国ホテル東京 新本館のデザインは、フランス在住の建築家・田根剛氏(ATTA)の案が採用されています。</cite> Skyskysky

ただし、帝国ホテル部分は大幅にスケジュールが変わりました。帝国ホテルは、当初2024年度中としていたタワー館の解体工事着工を2030年度末頃とすることを発表。理由として、再開発計画の進捗状況、昨今の建築費・労務費・エネルギー価格等の物価動向、近時の社会環境の影響を踏まえた事業計画の検証を挙げています。<cite index=”98-1″>そのため、解体着工までの間はタワー館でのホテル事業と不動産賃貸事業の営業が継続されます。</cite> Impress Watch

建設費高騰が超大型再開発のスケジュールを実際に動かした、明確な事例です。ここ数年の建築を学ぶうえで押さえておきたい論点だと思います。

③ 築地二丁目地区第一種市街地再開発事業

区域面積 約0.6ha/2031年1月竣工予定

築地市場跡地に先行する「露払い」的プロジェクトです。日鉄興和不動産とNTT都市開発が施行者で、2026年7月29日に東京都知事より権利変換計画の認可、同日付で国土交通大臣より民間都市再生事業計画の認定を受けました。敷地は築地本願寺や中央区立京橋築地小学校に近く、東京メトロ日比谷線「築地」駅に隣接する約0.6haの区域。築地地区における先行開発プロジェクトとして、築地駅に直結する新たなオフィス・商業施設等と公共施設の整備を進めるものです。 Nskre

規模は地上20階・地下2階、高さ101.98m、延べ面積56,300㎡。設計は日本設計、施工は西松建設で、2027年2月上旬着工・2031年1月下旬竣工の予定です。低層部に店舗、中高層部にオフィスを配置し、駅前広場や大規模交流広場も整備。東京都は2024年7月31日に個人施行を認可しており、その時点の総事業費は約432億円でした。 Skyskysky

④ Tokyo Sky Corridor(旧KK線)

全長約2km/2030年代〜2040年代に順次開放

このエリアで最も”建築的”に面白い事業かもしれません。2025年4月に廃止されたKK線を歩行者中心の高架遊歩道として再生するプロジェクトで、銀座・京橋・新橋の上空に緑豊かな歩行者空間が誕生します。かつて「水路」から「道路」へと姿を変えた都市の隙間が、今度は「人」と「緑」のための空間へ回帰する——地上約8mの高さから日本屈指の商業地区を一望できる、東京の新たな観光名所となる計画です。 Benzi

銀座・有楽町・新橋をつなぐ歩行者回遊空間として広場や緑地、文化施設を配置し、東京駅や八重洲地下街とも接続予定。視点場の設置やアート・イベントスペースの導入も構想されており、段階的な整備で2030年代から2040年代にかけて全区間開放を予定しています。 Skyscrapers-and-urbandevelopment

すでに一部は公開されています。2026年4月には「Roof Park Fes & Walk 2026」が開催され、小池都知事は「人が集い、歩き、楽しむ『歩行者中心』の公共的な空間へと生まれ変わっている」「有楽町、京橋、銀座、新橋という個性的で豊かな地域が重なって、その上を歩く」と述べました。 Kuruma News

ニューヨークのハイラインとよく比較されますが、あちらが廃線の貨物高架なのに対し、こちらは現役の都市高速を政策判断で止めて転用している点が決定的に違います。しかも構造物は民間(東京高速道路株式会社)が所有し、下部は既存のビルという特殊な成り立ちです。

⑤⑥⑦⑧ 新橋・築地川の動き

新橋駅の両側でも再開発準備が進んでいます。SL広場に面したニュー新橋ビルを含む西口側には「新橋駅西口地区市街地再開発準備組合」が設立され、事業協力者として野村不動産とNTT都市開発が選定されています。汐留口側の新橋駅前ビル1・2号館(1966年開業)を含む東口側にも準備組合が設立されています。 Town-review

ニュー新橋ビルは戦後のヤミ市整理から生まれた「戦後初の再開発ビル」で、1日の来場者は1万人を超え、”おやじビル”の愛称で親しまれてきました。<cite index=”113-1″>市街地改造法に基づく都市計画事業として建設され、通路をループ状にして行き止まりをつくらず、各階の共用部に固有色を与えるという設計上の工夫がなされています。</cite> Wikipedia

戦後の再開発第1号が、令和の再開発で建て替えられる。日本の市街地再開発制度の一周目が終わる象徴的な案件です。

駅そのものの整備方針も動き出しました。新橋駅周辺地区の基盤整備方針では、虎ノ門・内幸町・築地などの開発と連携し、羽田空港アクセス線、東京BRT、Tokyo Sky Corridorの整備にあわせて、周辺エリアとつながる玄関口としての役割と機能を強化するとしています。 Kenbiya

築地側では首都高の上部利用も検討されています。中央区は首都高速道路 都心環状線 築地川区間の上部空間を活用する「築地川アメニティ整備構想」の概要を明らかにしており、首都高速道路株式会社との基本協定も進められています。 Kenbiya


まとめ:銀座・新橋・築地の20年後

事業規模完成時期
築地地区まちづくり事業約19ha/延べ約126万㎡2030年代(二期は後半)
HIBIYA CROSSPARK総延べ約110万㎡/230m級3棟2028〜2037年度
築地二丁目地区約0.6ha/102m2031年1月
Tokyo Sky Corridor全長約2km2030〜2040年代
新橋駅西口・東口準備組合段階2030年代

このエリアのテーマは「引き算」です。KK線を廃止し、築地川の上に蓋をかけ、市場という巨大な産業施設を撤去する。丸の内や八重洲が床を積み上げているのに対し、銀座・新橋・築地ではまず何かを消してから、空いた場所に街を戻している。

そして消えるものの多くが、高度成長期に「便利さ」の名のもとに都市へ挿入されたインフラです。1964年に整備されたKK線・首都高・築地川の埋め立てが、約80年かけて反転する。東京の都市史のなかで、ひとつの時代が終わる区画だと言っていいと思います。

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