なぜ高松の商店街は蘇ったのか ― 丸亀町に学ぶ“止まらない再生”の仕組み

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以下では「高松市の商店街再生」の中でも、全国的に“成功例”として語られることが多い**高松丸亀町商店街(高松中央商店街の中核)**を中心に、再生に至るまでの流れ → 成功要因の順で、整理します。


1. 再生に至るまでの流れ(何が起き、どう進めたか)

① 衰退の危機認識:郊外化・車社会化で中心が空洞化

高松市でも、郊外化・車社会化の影響で、中心市街地は居住人口の減少、歩行者通行量の減少、空き店舗増といった典型的な課題を抱えるようになりました。

② 「商店街だけ」ではなく“まち”としての再生構想へ(1990年前後)

丸亀町では、商店街側が中心となって協議を進め、1990年に再開発計画をとりまとめたとされています。ここで大事なのは、単なる店舗改装ではなく、都市機能(住む・集う・楽しむ)まで含めた再編を目標にした点です。

③ 戦略の骨格を決める:470mをA〜Gの「街区」に分け、段階的に更新

丸亀町商店街は470mをA〜Gの7街区に分割し、街区ごとにテーマ(役割)を持たせつつ、段階的に再開発していく方式を採用しました。

  • 一気に全部を壊して作り直すのでなく、商店街機能を動かしながら更新できるようにする(=“連鎖型”で進める)という考え方です。

④ 推進体制の確立:まちづくり会社(第三セクター)で“計画・調整・運営”を一本化(1999)

再開発は「建てる」だけでなく、権利調整・テナント誘致・維持管理・販促・イベント運営など、やることが膨大です。
そこで丸亀町は、専門家の知見と商店街の経験を組み合わせ、行政も加わる形で、1999年に第三セクターの“高松丸亀町まちづくり会社”を設立し、総合的に担う仕組みを作りました。

⑤ 最大の難所「土地問題」への処方箋:所有と利用の分離(定期借地権)

地方中心市街地の再生で詰まりやすいのが、権利が細かく分かれた土地・建物の調整です。
丸亀町はここで、**土地の所有は残したまま、利用権を集約して一体運用する(所有と利用の分離)**という考え方を取り入れ、**定期借地契約などで“利用権を束ねる”**方向に舵を切りました。

⑥ 先導プロジェクトで“成功体験”を作り、連鎖を生む(A→B/C→G…)

勢いを作るため、再開発の起爆剤となる先導的プロジェクトを選び、モデルを示して後続へつなぐ方針が取られました。
高松市の整理では、段階的に次のように進展しています。

  • 平成18年度:A街区(高松丸亀町壱番街)
  • 平成21年度:B・C街区(小規模連鎖型の任意再開発)
  • 平成24年度:G街区(最大規模、丸亀町グリーン)オープン

2. 成功した要因(なぜ“回った”のか)

ここからが本題で、成功要因を「仕組み」「不動産」「デザイン・運営」「都市との接続」に分けて整理します。


要因1:商店街を“ひとつのショッピングセンター”として運営する発想

丸亀町は、商店街全体を一つのSC(ショッピングセンター)のように運営することを目指し、統一したデザインルールや、街区ごとの役割設定を行いました。
これにより、

  • バラバラな店の集合体 → 体験としての街
  • “何があるか分からない” → 目的を持って回遊できる
    に変わりやすくなります。

要因2:「A〜G街区×段階更新」で、合意形成と事業スピードを両立

再生は時間がかかるほど衰退が進みます。そこで、慣れ親しんだ単位(街区)で合意形成し、順次スピーディに更新する方式を採りました。
この方式の効き方は大きく3つです。

  1. 商店街機能を止めない(工事中でも周辺が営業し続ける)
  2. 各街区がテーマ設定され、**“いい意味で競い合う”**空気が生まれる
  3. 先行成功(A街区)が、後続の心理的ハードルを下げる(連鎖)

要因3:「まちづくり会社」で、権利調整・リーシング・維持管理・販促を一体化した

丸亀町の強みは、建物を作って終わりではなく、

  • 権利調整
  • テナントリーシング(誘致・入替)
  • 施設完成後の警備・清掃など維持管理
  • 情報誌発行、催事企画など販売促進
    までを一括で回す体制を持った点です。
    「ハードの完成」より、実はこっちが再生の心臓部です。

要因4:最大の詰まりどころ「土地問題」を、所有と利用の分離で突破

丸亀町の再生が“再現しにくい”と言われる最大理由は、この部分の難度が高いからです。
丸亀町では、まちづくり会社が地権者と定期借地契約を結び、複数の土地の利用権を集約して運営することで、統一コンセプトの街並み・店舗構成を実現しやすくしました。

さらに特徴的なのが、リスクを地権者も一部負う仕組みです。テナント家賃収入が下がれば、翌年の地代・家賃も連動して下がる形で、地権者側も“運営の当事者”になります。
これは、「作ったけど埋まらない」を構造的に減らす方向に働きます。


要因5:賑わい拠点(ドーム広場等)+イベントで「来る理由」を設計した

A街区周辺の象徴的空間(ガラスドームなど)は“写真映え”だけでなく、イベントが回る広場として機能し、休日の賑わいづくりに寄与したと整理されています。
つまり、買い物需要が縮む時代でも、

  • 広場=目的地
  • イベント=来街動機
    を仕込んだのが強い。

要因6:公的支援を「てこ」にしつつ、主導は民間側が握った

国の補助(国交省の市街地再開発事業補助、経産省の商業活性化系補助など)を活用し、対象経費が整理されている資料もあります。
一方で、危機感を起点に商店街振興組合が民間主導で取り組みを開始した点も明記されています。
「補助金があるからやった」ではなく、“やる主体”が先に立っていて、補助は加速装置になっている構図です。


要因7:中心市街地全体の文脈(コンパクトシティ等)と接続できた

高松市は中心市街地の再生を、商店街単体ではなく、交通・拠点形成などと絡めて語っています(例:サンポート高松、コンパクト・エコシティ特区など)。
商店街が“点”で光っても、周辺が暗いと人は定着しません。
丸亀町の更新は、結果として中心部の拠点性強化と噛み合いやすかった、という見方ができます。


3. まとめ(成功の核を一言で言うと)

高松・丸亀町の商店街再生の核は、

  • 街区分割による段階更新(止まらない、合意できる、連鎖する)
  • まちづくり会社による“計画〜運営”の一体マネジメント
  • 所有と利用の分離で、土地問題を運営の力に変えた

この3点が噛み合って、“ハード整備で終わらない再生”になったことです。


参考文献

  • 高松市「中心市街地活性化係(市街地再開発事業について)」
  • 内閣府(地方創生・中心市街地関連事例)「不動産の所有と利用の分離の活用による取組(香川県高松市)」
  • 一般社団法人 不動産流通経営協会 REINET「四国・高松丸亀町 商店街の構造再編・賑わい拠点の創生」
  • (補足・事例研究)黒田彰三「香川県高松市丸亀町 商店街活性化の成功例」

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