岐阜市の中心市街地(岐阜駅周辺〜柳ヶ瀬)を見ていると、「再開発って、もう手遅れなんじゃないか」と感じる瞬間がある。
その感覚は、単なる印象論ではない。都市の“回復力”を決める条件が、岐阜ではことごとく不利に働いているからだ。
この記事では、3つの根拠——
- 高松のようにデパートが残らない(=中心商業の核が崩れる)
- 長浜のように“文化財を生かすだけで回る”ほど小さな街ではない
- 富山より格段に自動車社会
——を軸に、なぜ岐阜の再開発が難易度MAXになっているのかを整理する。
1) 「デパート消滅」は、街の“心臓”が止まるのに近い
岐阜の象徴だった岐阜高島屋は2024年7月31日に閉店し、柳ヶ瀬の風景は決定的に変わった。長年、街の中心で「理由を作っていた施設」が消えた意味は重い。
デパートの役割は、単に“買い物ができる場所”ではない。
- ハレの日需要(贈答、フォーマル、物産展)を中心へ引き戻す
- 周辺の飲食・サービスへ波及する導線を生む
- 「中心に行けば間違いない」という都市の信頼を支える
これが失われると、中心市街地は「用事がある人だけが行く場所」へ落ちやすい。
高松は、現在も高松三越が営業している。
言いたいポイントは「中心商業の核が残る/残らないで難易度が跳ね上がる」で、岐阜はその核を失った側にいる、という点だ。
2) 長浜みたいに「文化財×観光の一点突破」では回しにくい(街が大きい)
長浜(黒壁スクエア周辺)は、歴史的建造物(登録有形文化財等)を核に、徒歩回遊できるサイズ感で“観光×まちなか消費”を成立させてきた街として語られやすい。長浜市自身も、まちなかに明治期建造物や町家が残る景観形成を重要資源として位置づけている。
しかし岐阜は、同じ戦法をそのまま移植しにくい。
- 都市規模が大きく、生活圏が広い
- 観光“だけ”で中心を回すには、日常利用(通勤・通学・行政・医療・学び等)と結び直す必要がある
- 「残っている建物を磨けば勝てる」より、「都市構造そのものを組み替える」比重が大きい
要するに、岐阜は“文化財リノベで完結するサイズ”ではない。だから再開発は、観光ではなく都市経営(住む・働く・移動する)の話になる。
3) 決定打:岐阜は“富山以上に”自動車依存が強く、中心が不利なゲームになっている
岐阜市の総合交通計画では、交通手段分担率として自動車が68.2%(2011年)など、自動車依存の高さが明記されている。
また別調査でも、市役所来庁の主交通手段は自動車83%という結果が出ている(用途は限定されるが、生活感覚としての車依存を裏づける材料にはなる)。
ここが何を意味するかというと——
- 郊外:無料駐車場+ワンストップ施設(モール等)
- 都心:駐車が有料/少ない、回遊が弱い、目的が分散
という構図になりやすく、中心市街地は“わざわざ行く理由”の設計に失敗すると負ける。
そして岐阜市の中心市街地活性化基本計画自体が、中心商業が厳しくなった要因として
モータリゼーションの進展、住宅の郊外化、ロードサイド店の進出、大型店撤退などを挙げている。
つまり「車社会だから厳しい」は外野の感想ではなく、市の公式認識でもある。
一方、富山は“公共交通を柱にしたコンパクトなまちづくり”を明確に掲げ、鉄軌道・バス沿線に機能を集積する戦略を継続している。
この差が、中心市街地の立て直し難易度を分ける。
結論:岐阜市の再開発は本当に「手遅れ」なのか?
ここまでの条件だけ見ると、正直かなり厳しい。
核(デパート)を失い、街は大きく、車社会で中心が不利——
ただし、「手遅れ=もう何をしても無理」ではない。
岐阜の中心は、行政・文化・民間の動きが完全に止まっているわけではなく、柳ヶ瀬でも民間主体の取組やリノベ等の動きが記述されている。
“手遅れにならない”ための現実的な方向性
- 買い物で勝とうとしない:中心は「商業」より「学び・文化・公共・仕事・住」を束ねて“目的地”を作る
- 車社会を否定しない:駐車・降車・回遊の設計を都市デザインとしてやり切る(中心での滞在価値を上げる)
- 駅前と柳ヶ瀬を分断しない:点の再開発ではなく、歩行者導線で“線”を作る
岐阜の戦い方は「デパート復活」でも「黒壁のコピー」でもなく、“車社会の中で中心に行く理由を再発明する”ことだと思う。
参考文献
- 東海テレビニュース「1977年柳ヶ瀬商店街に開業…『岐阜高島屋』最終営業日 閉店…」(2024/07/31)
- 岐阜新聞「岐阜高島屋最後の日、柳ケ瀬の様子は【タイムライン】」(2024/07/31)
- 岐阜市「岐阜市中心市街地活性化基本計画」(モータリゼーション、郊外化、大型店撤退等の記述)
- 岐阜市「岐阜市総合交通計画(本編)」(交通手段分担率など)
- 富山県「富山市の目指すコンパクトシティ」(公共交通沿線への集積方針等)
- 国土交通省 東北運輸局資料「コンパクトシティ戦略による富山型都市経営の構築」
- 長浜市「湖(うみ)の辺(べ)のまち長浜未来ビジョン」(登録有形文化財等のストック活用)
- 株式会社黒壁「黒壁について」(黒壁ガラス館・街並み資源の説明)

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