― 岐阜城×柳ケ瀬×パーク&ライドで「観光回遊」と「生活利便」を両立させる提案
はじめに:岐阜LRTの現在地
岐阜県は「新たな交通システム(LRT)」の導入を掲げ、岐阜圏域のまちづくり資料を公表。岐阜駅を核に中心部循環・北部(岐大/IC)・南部(県庁~岐阜羽島)といった方向性を示し、調査費3000万円を計上して検討を進めています。
本稿では、県外利用者(観光)と県内利用者(日常)それぞれが「乗りたくなる」LRTを実現するために、2つの焦点
- 岐阜城周辺の魅力強化(信長居館跡の活用)+柳ケ瀬の“昭和ミュージアム化”
- 郊外に安価(もしくは無料)のP&R駐車場を整備し、中心部へはLRTで
を建築・不動産・都市経営の視点から、根拠ベースで具体化します。
Ⅰ. 県外利用者(観光)を惹きつける「歴史とレトロ」をLRTで結ぶ
1-1. 岐阜城・信長居館跡を“LRTで行く歴史公園”に

岐阜市は岐阜公園再整備基本計画を改定し、金華山一帯を「信長公の鼓動が聞こえる歴史公園」として磨き上げる方針。山麓の信長居館跡は発掘で庭園・石垣などの実像が明らかになり、案内・展示機能も整備が進んでいます。
提案(停留所×演出)
- 金華山口(岐阜公園)停留所を**“歴史パビリオン”として設計。大屋根・木質+和紙・美濃焼タイルなど地場素材**で統一し、居館跡への回遊動線を分かりやすく誘導。
- 停留所と居館跡に**「AR復元」**の合図を配置(QR/ビーコン)。信長居館の庭・建物のCGレイヤーをスマホ越しに鑑賞できるようにする(城上~山麓の回遊を“物語化”)。
- 周辺に軽飲食・土産・和カフェを集約(面積の小さなキオスク群)。“滞在5→90分”の設計に切り替える。
根拠:岐阜公園は国史跡「岐阜城跡」に指定、再整備の方針が明確。居館跡の展示・案内機能もすでに稼働しており、LRT停留所の「門(ゲート)」化と接続すれば、観光の可視性・回遊性が飛躍的に高まる。
1-2. 柳ケ瀬“昭和ミュージアム化”:アーケード全体を展示空間に

柳ケ瀬は全天候型アーケードと昭和~バブル期の記憶をもつ商店街。リノベやイベントで再起を図っており、空き店舗の活用や新規出店も増えてきました。
提案(展示×商いの両立)
- アーケードの一部区間を**“昭和のまち博物館”として常設展示化(電飾看板・手描き書体・当時の雑貨・映画館ロイヤル劇場のリノベ史などを街路に陳列**)。
- 空きビルフロアは「体験型工房(印刷・写真・玩具修理)」へ。昭和のくらし系ミュージアムや“昭和の町”(大分・豊後高田)の観光回遊づくりが先例。
- LRT停留所:柳ケ瀬口のサインをネオン風タイポで統一。停留所そのものをフォトスポット化し、到着=展示の入口に。
根拠:柳ケ瀬の歴史的文脈は厚く、商店街×文化展示は全国に先例あり。アーケードは全天候の公共空間で、“雨でも回遊できる博物館商店街”はLRTの停留所アクセス価値を高める。
Ⅱ. 県内利用者(生活)の強い味方に:P&Rを“無料or安価+超近接”で
2-1. 宇都宮LRTの成功要因:無料P&R+乗継の明快さ
宇都宮では停留所に併設の無料駐車場・駐輪場を整備し、P&R需要が好調で増設。トランジットセンターは**「駐車場・駐輪場は無料」**と明記し、クルマ→LRTの乗換を後押ししています。
岐阜への適用
- 郊外IC近傍・主要幹線沿い(岐阜IC、県庁周辺、忠節橋北詰、岐南~羽島方面など)に無料or低料金のP&R拠点を整備。
- P&Rから先の中心部道路は「通過抑制・歩行優先」に転換(段階実施)。駐車料金の相互割引、LRT往復割など運賃連動インセンティブを導入。
- P&R敷地は平日:通勤駐車/休日:イベントPの二毛作で稼働率を最大化。
根拠:国交省の整理でもP&Rは都心渋滞緩和・歩行者安全・大気環境改善に寄与。富山市もLRT×P&Rを政策パッケージ化。岐阜は自動車優位ゆえ、**“クルマで来て、最後の数kmはLRT”**の選択肢が鍵。
2-2. デザイン指針:**“秒で乗換”**できる停留所
- 駐車場から停留所まで徒歩1分以内(横断なし・雨に濡れない)を原則に、上屋一体化。
- デジタル掲示で到着までの残り分数と中心部混雑マップを表示。
- ベビーカー・車いすに最適化した導線(縁石段差ゼロ、雨樋の溝なし、連続スロープ)。
Ⅲ. コース設計:観光“金の三角形”と、生活“3本の通勤矢印”
3-1. 観光“金の三角形”
岐阜公園(信長居館跡)—長良川鵜飼—柳ケ瀬を三角形に結ぶLRT+徒歩の回遊を構築。岐阜城・岐阜公園は入場・発掘・鵜飼統計等のデータ整備が進んでおり、ナイトタイム(鵜飼)も含めた昼夜の回遊を描ける。
現地サイン
- 停留所床面に**“戦国ライン”**(金色の点線)を敷設。金華山方面=金、柳ケ瀬=ネオン調など、行き先ごとに色とピクトを統一。
- フォトスポット:停留所上屋の梁に金箔風の家紋パネル、柳ケ瀬側は昭和書体の街路銘板。
3-2. 生活“3本の通勤矢印”
- 南矢印:岐阜羽島—県庁—岐阜駅
- 北矢印:岐阜大学—岐阜IC—長良川沿い
- 環状矢印:岐阜駅—中心部循環(柳ケ瀬・岐阜新聞前・長良川国際会議場方面)
以上の基幹3系統で**“郊外P&R→LRT→中心部徒歩”の型を徹底する。県の公表資料にある3方向のイメージと齟齬がなく、導入初期の分かりやすさ**を担保。
Ⅳ. 建築・不動産:停留所半径300mを“勝てる用途”で固める
4-1. 停留所は小さな複合拠点
- 岐阜公園口:史跡ビジターセンター+和菓子・茶カフェ+着付け・レンタサイクル
- 柳ケ瀬口:昭和ミュージアム(常設+期間企画)+映画・音楽・アニメのサブカル系
- P&R停留所:平日=コワーキング、休日=マルシェ/地産直売
→ 滞在時間×回遊頻度が上がるほど沿道賃料は底上げされ、空き床の埋まりが早まる(富山の沿線誘導の実例に近い考え方)。
4-2. 柳ケ瀬“昭和の町”モデルの横展開
大分・豊後高田市は**「昭和の町」で年間約40万人を呼び込み、商店街再生の全国例に。岐阜は既存のアーケード資産と映画館のリノベなどの下地があり、分散展示+商いの二層構造**で収益化が可能。
Ⅴ. 環境・モビリティ:LRT×P&R=都市の健康づくり
- P&Rの公共的効果(渋滞緩和・歩行者安全・大気汚染回避)は国交省資料で繰り返し整理。岐阜駅前~中心部の人優先空間化とセットで、事故・渋滞・排出をトリプルで下げる。
- 宇都宮の実績(無料P&Rの満車・増設対応)は、価格設定と近接性がキモであることを示す。岐阜でも**「無料/上限200円」**水準をコアに、商店街割引・乗継割を組み合わせたい。
Ⅵ. 実装ロードマップ(試行→本格)
- 社会実験(6–12か月)
- P&R無料+臨時LRT/連接バスで金華山—柳ケ瀬—岐阜駅の“三角回遊”を検証
- スタンプ連動の回遊施策(岐阜公園・居館跡・柳ケ瀬)
- ナイトプログラム:鵜飼&夜景に合わせた夜間ダイヤ(週末延長)
*KPI:LRT(仮運行)乗降/P&R稼働/中心部歩行人数/商店売上/CO₂推計
- デザイン整備(1–3年)
- 停留所原型(金華山口・柳ケ瀬口・P&R拠点)を建築一体で整備
- AR復元・ネオン風サイン・回遊ラインを常設化(岐阜公園再整備と連動)
- ネットワーク拡張(3–10年)
- 北矢印(岐大・IC)/南矢印(県庁・岐阜羽島)を段階延伸、名鉄・バス再編とダイヤ連携
- 需要のあるP&Rから多層立体化へ(平日と休日の用途二毛作は継続)
Ⅶ. まとめ:**「線路」ではなく「舞台装置」**としてのLRT
- 県外には——信長・鵜飼・昭和という“岐阜らしさ”を見える化し、LRTの停留所=展示の入口に。
- 県内には——無料/安価P&R+秒で乗換で“クルマ&レール”の使い分けを日常化。
- まちには——停留所半径300mを“勝てる用途”で埋める都市設計を。不動産・商い・観光の収益循環が回りはじめる。
岐阜のLRTは、歴史と日常を一本の線で束ね、歩いて楽しい中心部をつくるための舞台装置です。あなたの示した**「居館跡の活用」と「柳ケ瀬の博物館化」「P&Rでのすみ分け」は、その舞台に確かな演目**を与えます。あとは、停留所の建築と価格設計という“ディテール”の精度を上げるだけです。
出典(主要)
- 岐阜県:岐阜圏域のまちづくり資料(資料1–6/LRTの考え方・特徴等)。
- 予算・調査:LRT調査費3000万円の補正(建通新聞/岐阜放送/東海テレビ等)。
- 岐阜公園・居館跡:再整備基本計画/案内所(展示)/史跡指定。
- 柳ケ瀬:商店街史とアーケード、活性化の取り組み、空きビル利活用の事例。
- “昭和の町”先例:豊後高田の観光回遊づくり。
- P&Rの効果:国交省資料・導入ポイント。
- 宇都宮LRTのP&R:無料駐車場・駐輪場、平石ほか停留所の拠点運用・増設。
画像出典:岐阜城・居館跡・宇都宮LRT P&R関連(各キャプション先参照)。


コメント