静岡県ドーム問題の概要はこちらにまとめています。
1) 「公式に出ている数字」を固定する
静岡県の一覧表(R4建設委員会配布資料)には、球場タイプ別に
- 概算事業費(建設費)
- 年間維持管理費(大規模修繕費含む)
- 年間利用者数
- 年間直接消費額(県内)
- 年間経済波及効果(県内)
がまとまっています。
今回の比較は、議論の中心に近い 2タイプを使います。
- 屋外:1.3万人・盛土構造・照明なし(タイプD)
- 概算事業費:70億円
- 年間維持管理費:1.2億円
- 年間利用者数:6.7万人
- 年間直接消費額:1.6億円
- 年間経済波及効果:2.8億円
- ドーム:2.2万人・多目的ドーム(タイプX)
- 概算事業費:370億円
- 年間維持管理費:4.8億円
- 年間利用者数:12.7万人(うちイベント4万人)
- 年間直接消費額:10.6億円
- 年間経済波及効果:21.4億円
重要:この時点で、県自身が「ドームは利用者・消費・波及が大きい」前提で試算している。
2) サイズが違う問題を“式で補正”する
ユーザー要望は「ドーム型と屋外型を比較」。
ただし公式のドーム(X)は2.2万人、屋外(D)は1.3万人です。
そこで、13,000席級の“小規模ドーム”を想定したい場合、まずは保守的に
線形補正(席数比例)
で見積もります(過小・過大の両リスクはあるが、式が透明)。
2-1) 13,000席ドームの概算建設費(推定)
Cdome,13k=Cdome,22k×22,00013,000 =370億×0.5909≈218.6億円
→ 約219億円(推定)
※実際には「固定費(屋根・設備の下限)」があるため、線形より高く出る可能性もあります。だからこの推定は“楽観寄り”です。
2-2) 13,000席ドームの年間維持管理費(推定)
Odome,13k=4.8億×22,00013,000≈2.84億円/年
→ 約2.8億円/年(推定)
2-3) ここまでの比較(13,000席で揃えた場合)
- 屋外(公式):建設70億/維持1.2億
- ドーム(推定):建設219億/維持2.8億
3) 30年トータルコスト
T=C+30×O
- 屋外: Tout=70+30×1.2=70+36=106億円
- ドーム(13k推定): Tdome=218.6+30×2.84≈218.6+85.2=303.8億円
結論(トータル):
13,000席で揃えると 約2.9倍(303.8/106)。
(これが「初期投資が支配的」という意味)
4) ここからが本題:想定収益を“積み上げ”で入れる
収益は大きく3つに分けます。
- ネーミングライツ(固定収入)
- 貸館料(イベント稼働で変動)
- 館内売上の取り分(契約次第で変動)
4-1) ネーミングライツ:根拠
宮城県の公表では、楽天モバイルパーク宮城の命名権は 年2億100万円。
これを席数比例で13,000席へ補正(粗いが透明)。
仮に楽天球場を約30,000席級と置くと、NR13k≈2.01億×30,00013,000≈0.87億円/年
→ 年0.9億円程度(上限目安)
地方中規模なら保守的に 0.3〜0.9億/年のレンジで扱うのが現実的です。
4-2) 貸館料:根拠(実際の料金表)
- みずほPayPayドーム:使用料の注意書き含め公式ページがあり
- バンテリンドーム ナゴヤ:**コンサート1日 1,100万円(平日)/1,210万円(土日祝)**など料金表が公開
ここでは、根拠が明確なバンテリンドームの公開価格をベースに、席数比例で13,000席へ補正します(35,000席級として補正)。Fee13k≈1,100万円×35,00013,000≈409万円/日
→ 本番日 約410万円/日(推定)
屋外球場の「公的使用料」は自治体ごとに安すぎて比較になりにくいので、ここではドーム対比で1/3(天候リスクと設備差)という保守仮定を置きます。
- 屋外本番:140万円/日(=410×1/3)
4-3) 館内売上の取り分(式で置く)
Food=Natt×Spend×TakeRate
例:
- 1人あたり飲食物販 Spend = 1,000円
- 施設取り分 TakeRate = 30%
→ 施設粗利 = 300円/人
5) 年間収益モデル(“稼働本数”で差が出る)
ここがドームの生死を分けます。
シナリオ設定
- 屋外:本番30日(大会等中心、雨で目減りあり)
- ドーム:本番60日(野球+コンサート+展示会)
※ドームのイベント動員は県資料でも「イベント4万人」を見込んでいます。
5-1) 年間貸館収入(推定)
- 屋外: Rrent,out=30×140万円=4,200万円=0.42億
- ドーム: Rrent,dome=60×410万円=2.46億
(設営撤去日まで精緻化したい場合は、PayPayドームのように区分して計算できます。)
5-2) 年間ネーミングライツ
- 屋外:0.3〜0.7億
- ドーム:0.5〜0.9億(露出が増える前提)
5-3) 年間館内粗利
平均来場者を
- 屋外:8,000人×30日=24万人
- ドーム:9,000人×60日=54万人
と置くと、
- 屋外:24万人×300円= 0.72億
- ドーム:54万人×300円= 1.62億
6) 運営収支(OPEXだけ差し引く)
6-1) 屋外(目安)
Rout=NR(0.5)+Rent(0.42)+Food(0.72)≈1.64億 Profitout=Rout−OPEX(1.2)≈+0.44億/年
6-2) ドーム(目安)
Rdome=NR(0.7)+Rent(2.46)+Food(1.62)≈4.78億 Profitdome=Rdome−OPEX(2.84)≈+1.94億/年
結論(運営だけ):稼働本数を作れるならドームが強い。
ただし、これは「本番60日が本当に成立するか」に完全に依存します。
7) それでも建設費が重い:投資回収年数(式)
Payback=ProfitC
- 屋外: 70/0.44≈159年
- ドーム(13k推定): 218.6/1.94≈113年
どちらも“施設単体の黒字回収”は現実的ではない
だから公共投資では、県資料にもあるように「県内直接消費」「経済波及効果」「まちづくり(外部効果)」がセットで語られます。
8) 外部効果(県の公式試算)をどう読むか
県の公式試算では、ドーム(X)は
- 年間直接消費額:10.6億
- 年間経済波及効果:21.4億
と、屋外(D)の
- 直接消費:1.6億
- 波及:2.8億
より大きい前提です。
ここは「本当にその需要が立地・交通・運営で実現するか」が都市計画&不動産の勝負所です。
(=“箱”の議論だけで決めると事故る)
参考文献・一次ソース
- 静岡県:遠州灘海浜公園(篠原地区)関連(球場タイプ評価・官民連携・概算)
- SBS NEWS:小規模ドーム案/コスト増/民間提案の報道
- 宮城県:楽天モバイルパーク宮城 ネーミングライツ年額(公式)
- バンテリンドーム ナゴヤ:利用料金(公式)
- みずほPayPayドーム:使用料ページ(公式・設営撤去の注意書き)


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