松山駅前再開発のマスタープランは本当に「遅い」のか

松山駅前再開発

—他都市の駅前再整備と“速度”を比べて見える課題—

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はじめに

JR松山駅は2024年9月に新駅舎が開業し、高架化により交通の結節性が一段進みました。とはいえ、駅前広場や交通ターミナル、路面電車の乗り入れといった周辺整備の“本丸”はこれから。年表を見ると、「西口駅前広場は2025年度末に着工し、2028年度までに整備予定」「東口は26〜28年度に整地」「LRT(市内電車)の駅前乗り入れは期日未定」という段取りで、**“駅は先にできたが顔づくりはこれから”**の状態です。jr-matsuyama-stn-redevelopment.com+1

この記事では、広島・金沢・富山という駅前整備の先行事例と「構想→設計→施工→供用」までのおおまかな“スピード感”を比べ、そのうえで松山のマスタープラン策定・実施のボトルネックを5点に整理します。


比較① 広島:駅ビル更新×路面電車の駅直結を“段階供用”で前倒し

  • 基本方針の明確化:2010年代前半に「南口広場の再整備と路面電車の駅前大橋ルート」へ舵を切る方針を策定(環境アセス・都市計画決定を経て事業着手を想定)。w-shin.com
  • 駅ビル建替え着手:2020年、本体工事に着手。市はこれに合わせて広場再整備の準備工事を段階的に進めた。トラベル Watch
  • 段階供用の活用:2024年に南口広場のバスエリア暫定利用、2025年3月にタクシーエリア暫定利用を開始。路面電車の新ルートは2025年8月の営業開始に向けて工事が進行中。「全部できてから開ける」ではなく、段階的に機能を立ち上げるやり方が特長です。広島市公式サイト

ざっくりの“速度感”:基本方針明確化→約5〜10年で大枠の供用開始(駅ビル更新と一体で“先に使えるところから”開けていく)。
視覚イメージ:駅舎と路面電車が同じレベルでつながる“駅内直結”の姿を、完成イメージの早期公開で共有したのも合意形成を助けました。


比較② 金沢:象徴的な空間(鼓門・もてなしドーム)を7年で完成

  • 着工から完成:金沢駅東口広場は1998年3月に本格着工し、2005年3月20日に完成“見せ場”を明快に定義した駅前広場整備の王道例で、都市ブランドの確立にも直結しました。digilib.city.kanazawa.ishikawa.jp+1

ざっくりの“速度感”:着工→供用まで約7年
視覚イメージ:ガラスドーム下の全天候型の駅前回遊空間が来街者の体験を変えた象徴(=合意形成に効く“わかりやすい目的”)でした。


比較③ 富山:LRTの南北接続で**“交通を主役”に据えた駅前更新**

  • 目的の一本化:駅前広場“だけ”でなく、LRTネットワークの形成というゴールを据え、駅高架下で南北の路面電車を直結2020年3月21日に接続・直通運転開始富山市公式サイト

ざっくりの“速度感”:鉄道高架・駅前広場整備と一体でLRT接続を完成
視覚イメージ:**“駅そのものが公共交通の乗換ハブ”**になる姿を実現。整備ステップが明確で、完成像の共有が早かったのが特徴です。


松山の今:駅は開いた、でも“顔”と“交通運用”はこれから

  • 駅は完成:2024年9月、新駅舎が稼働。高架化+新改札+商業動線で基本性能は向上。
  • 周辺整備の工程
    • 西口駅前広場:2025年度内に旧駅舎解体・線路撤去→2025年12月着工、2028年度までに整備
    • 東口駅前広場26〜28年度に整地
    • 交通ターミナル/市内電車乗り入れ整備時期は未定(検討中)
      …と発表・報道ベースの情報が整理されています。工程は動きつつあるが、運用の中核(バスタ・LRT)の時期が定まっていないのが現状です。jr-matsuyama-stn-redevelopment.com+1
  • 計画の系譜:2019年の駅前の“目指すべき方向性”資料、2019年度の基本計画策定への助言体制、2023年の**「交通拠点機能強化整備方針」策定**を経て、いま実施設計・工事段取りに移っている段階。松山市役所+2udcm.jp+2

ざっくりの“速度感”:方向性の明確化(2019)→駅完成(2024)→広場着工(2025)→完成(2028)で、方向性から「顔づくり完了」まで約9年ペース。
ただし交通ターミナルとLRTの時期が未定
なため、“駅前の使い勝手”を決める核の工程が見えにくいのがボトルネックです。jr-matsuyama-stn-redevelopment.com


速度差の理由をほどく:松山の5つの課題

  1. “完成像”の共有が抽象的
    • 広島は「駅ビル×路面電車の駅内直結」という絵が強い。金沢は「鼓門・もてなしドーム」という象徴が早期に定着。
    • 松山は**“歩いて暮らせる拠点”**を掲げつつも、LRTの駅前導入時期が不明で、**運用イメージ(乗換・待合・滞留の体験像)**が伝わりにくい。象徴画像=合意形成の潤滑油をもっと前面に。w-shin.com+1
  2. 段階供用の設計が弱い
    • 広島はバス・タクシーの暫定利用で生活動線を先に改善し、“できたところから使う”
    • 松山は西口広場の完成が2028年度と比較的遠く、途中の使い心地をどう高めるかの提示が不足。仮設での乗継改善・雨天動線など、中間KPIを見せるべき。広島市公式サイト+1
  3. 交通(LRT・バスタ)の“核”が確定していない
    • 富山はLRT接続というゴールが明快
    • 松山は乗り入れ時期未定LRT停留所の位置・動線・信号制御・バスとの結節を先に決め、広場の設計に“交通要件”をロックすると、下流の迷いが減る。富山市公式サイト+1
  4. アリーナ等“需要装置”との連携スケジュール
    • 駅前に集客装置(アリーナ等)を置くかどうか、規模・搬入・人流の条件が計画全体に波及。最適地議論を続けるなら、駅前広場側の“可変性”を設計仕様に織り込む(イベント時動線/平時の賑わいの二毛作)。※アリーナの詳細検討は別稿参照。note(ノート)
  5. “市の事業”としての意思決定プロセスの可視化
    • 鉄道高架は県駅前広場や結節は市が主体。所管の違いが“体感速度の差”に見える。工程表に**判断ゲート(設計凍結・入札・供用フェーズ)**を明示すると、市民の理解は進む。note(ノート)

“宅建士 × 建築学生”の視点での提案

  • KPIで進捗管理を見える化(段階供用KPI)
    1. 雨に濡れない乗換導線の割合(仮設でも可)
    2. ピーク時のバス・タクシー滞留時間
    3. 駅前広場の常時滞在人口(平日・休日)
      → 中間値を公開し、市民合意を“速度”に変える(広島の暫定利用は好例)。広島市公式サイト
  • LRT停留所とバスタの“同レベル・短距離”原則
    → 富山の直結のように乗換30〜60秒を狙う動線計画を先出し。建築計画は上屋・風環境・音環境まで踏み込む。富山市公式サイト
  • 象徴性と日常性の両立
    → 金沢のような**象徴要素(雨天対応の大屋根・木質天井の連続等)**を“駅前の顔”として設定しつつ、**平日昼間の使われ方(学習・ワーク・待合)**をデザインで支える。digilib.city.kanazawa.ishikawa.jp
  • 段階供用の都市デザイン
    → 2025〜28年の移行期に向けて、可搬家具・仮設パーゴラ(屋根なし木製格子状フレーム)・仮設デッキ等を**“臨時的活用の都市設計”として導入し、「今から変わる」を体感**させる。

まとめ:松山の“遅さ”は解像度の低さに見える

他都市の駅前整備は、

対して松山は、2019年に方向性を整理→2024年駅開業→2025年広場着工→2028年広場完成予定という約9年スパンで進んでいます。決定的に遅いというより、“交通の核(LRT・バスタ)の時期と空間像”が見えないために、体感として遅く見えるのが実態です。ここを段階供用KPIと象徴イメージの前出しで補えば、速度の印象は確実に変わるはずです。松山市役所+1


参考・出典

  • 松山市「松山駅周辺地区の目指すべき方向性(駅まち会議・資料)」2019。松山市役所
  • UDCM(アーバンデザインセンターみなとみらい等 年報):松山駅前広場の基本計画支援(2019年度活動)。udcm.jp
  • 松山駅周辺再開発進捗まとめ(非公式記録):駅前広場・道路の工程、LRT乗入れの現状整理。jr-matsuyama-stn-redevelopment.com
  • 毎日新聞:JR松山駅の新駅舎開業(2024/9/29)。
  • 広島市「広島駅南口広場の再整備等 事業概要/再評価資料」:段階供用の進捗、LRT新ルート開業時期。広島市公式サイト+1
  • JR西日本×広島電鉄:駅前大橋ルート・駅直結イメージ。
  • 金沢市:金沢駅東広場(もてなしドーム)記録誌・マスタープラン等(着工1998→完成2005)。digilib.city.kanazawa.ishikawa.jp+1
  • 富山市:LRT南北接続の事業概要・報道(2020/3/21接続)。富山市公式サイト

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