バスでも鉄道でもない“第3の公共交通”の正体と、成功・失敗を分けるポイント



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名古屋で始まる「SRT」とは何か?
最近、名古屋駅〜栄の広小路通で見かけるようになった
ちょっと未来っぽいバスのような乗り物。
それが 名古屋市が導入する
新交通システム「SRT(Smart Roadway Transit)」です。
簡単に言うと
「路面電車ほど重くなく、普通のバスより“都市づくり寄り”な公共交通」
鉄道でもなく、従来の路線バスとも違う
都市の実験装置のような存在です。
なぜ名古屋はSRTを導入したのか?
キーワードは「回遊性」
名古屋の都心は長年こんな課題を抱えてきました。
- 名駅と栄が近いのに「歩いて回りづらい」
- 地下鉄は便利だが「地上の賑わいが生まれにくい」
- 車中心の都市構造で、滞留空間が少ない
そこで名古屋市が狙ったのが
🚶♂️ 歩く+乗る+立ち止まる 都心づくり
SRTは単なる移動手段ではありません。
- バス停 → テラス型の都市空間
- 待ち時間 → 滞留・賑わいの時間
- 移動 → 都市体験
という発想で設計されています。
SRTはどこを走る?【最新情報】


▶ 運行概要(第1段階)
- 区間:名古屋駅 〜 栄(広小路通)
- 距離:約5.6km
- 停留所:7か所
- 運行開始:2026年2月予定
- 運賃:大人210円(IC・タッチ決済対応)
- 特徴:連節バス+デザイン停留所
まずは「名古屋の顔」とも言える軸線から始まります。
都市計画的に見たSRTの“本当の狙い”
① 地下から地上へ、人の動線を戻す
地下鉄は効率的ですが
地上の都市体験をスキップしてしまう側面があります。
SRTはあえて地上を走らせることで、
- 店舗前を人が通る
- 途中下車が生まれる
- 街を「眺めながら」移動できる
という効果を狙っています。
② バス停を「都市の居場所」に変える
SRTの停留所は、いわゆるバス停ではありません。
- ベンチ
- デッキ
- 日除け
- 情報表示
を備えた “なごまちテラス” として整備されます。
👉 これは建築的に言うと
「交通施設の公共空間化」です。
③ 鉄道ほど重くない「試せる公共交通」
地下鉄延伸やLRTは、
- 建設費が巨額
- 失敗できない
- 決定まで10年以上
という重さがあります。
SRTは
実験 → 改善 → 拡張 ができるのが最大の武器です。
メリット|SRTはどこが評価される?
✅ 都心の回遊性が上がる
名駅と栄が「1本の分かりやすい線」でつながることで
観光・買い物・イベントの回遊がしやすくなります。
✅ 歩行者空間と相性がいい
広小路通の再編(歩道拡幅・滞留空間)とセットで
“車のための道”から“人のための通り”へ転換可能。
✅ 投資コストが比較的低い
鉄道ほどの初期投資をせず
都市効果を検証できるのは自治体にとって大きな利点です。
デメリット|正直、ここは不安
❌ 定時性はバスの宿命
専用レーンや信号制御が弱いと
「結局、普通のバスでは?」と言われかねません。
❌ 道路空間の取り合いが起きる
- 車線削減
- 駐停車スペース
- 荷捌き問題
など、沿道合意形成が最大の壁になります。
❌ 運行日・本数が少ない
現段階では
「生活の足」というより「都心回遊・観光寄り」。
日常利用に育つかは今後次第です。
今後、SRTで注目すべき5つのポイント
- 遅延はどの程度出るのか?
- 停留所テラスは本当に使われているか?
- 利用者は観光客だけになっていないか?
- 平日・毎日運行に拡張できるか?
- 次の路線展開(周遊化)はあるか?
👉 ここがクリアできれば
SRTは「名古屋モデル」として全国に波及する可能性があります。
まとめ|SRTは“交通”というより都市実験
SRTは万能な解決策ではありません。
でも、
- 都市の使い方を変える
- 人の動きを変える
- 公共空間の価値を上げる
という意味で、
かなり攻めた都市計画ツールです。
名古屋は今、
「車の都市」から次の段階に進もうとしています。
名古屋、SRTに関連する記事はこちら
SRT、LRT、BRTの違い
他都市交通システム比較
参考文献
- 名古屋市「新たな路面公共交通システムSRT」
- 名古屋市 地域公共交通協議会 資料
- Impress Watch「名古屋の新交通SRT」
- Travel Watch「SRT試乗レポート」


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