ハワイに都市鉄道『Skyline』開通 ─ 何が変わる?現地のプラスとマイナスを建築・都市開発の視点から読む

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2023年、ホノルル都市圏で長年建設が進められてきた高架鉄道 「Skyline(スカイライン)」 の一部区間がついに開通し、アメリカ国内でも注目を集めています。
観光地ハワイで本格的な都市鉄道が走り始めたことは「島の交通史の大きな転換点」といえます。本記事では、開通の背景・狙いを端的にまとめたうえで、メリットとデメリットを都市計画・不動産の目線で立体的に解説します。


■ Skyline開通の背景と概要

ホノルルは慢性的な交通渋滞が全米でもワースト上位といわれ、道路一本依存の都市構造が長年の課題でした。
その解決策として、**空港〜アラモアナ方面へ至る高架鉄道(全長約32km)**を整備する巨大プロジェクトがスタート。2023年にまず西側区間(イースト・カポレイ〜アロハ・スタジアム)が開業しました。

  • 方式:無人運転の高架鉄道(AGT方式に近いライトメトロ)
  • 運営:HART(Honolulu Authority for Rapid Transportation)
  • 将来計画:空港・ダウンタウン・アラモアナセンターまで延伸予定

プラスの面:都市と暮らしに生まれる新しい価値

① 渋滞緩和と移動の安定性向上

ホノルルは朝夕のH1フリーウェイの渋滞が深刻。
スカイラインは自動車に左右されないため、通勤時間の安定化が期待され、観光客の移動手段としても新しい選択肢になります。

② TOD(Transit Oriented Development)による街づくりの活性化

駅周辺での 高密度・歩行者中心の開発 が進むと、
・住宅不足の緩和
・地価の安定化
・商業の活性化
といった都市機能の改善が期待されます。
アラモアナ周辺や空港周辺では、既に再開発計画が動き始めています。

③ 観光資源としての新インフラ

高架からの景色は観光客にとって「新アトラクション」。
ワイキキ以外の地域に観光動線が広がることで、地域間の経済格差解消にも寄与します。


マイナスの面:巨大プロジェクトが抱えた課題

① 建設費の大幅な膨張

当初計画より数十億ドル規模で費用が膨れ上がり、アメリカ国内でも問題視されています。
税金負担増、延伸区間の縮小議論など、財政面の不安は依然残ります。

② 景観・環境への影響

高架構造は景観へのインパクトが大きいため、
「海の見えるハワイらしい景観が損なわれる」という批判も多いです。
また、観光の中心部を通ることで騒音・日陰の発生などの影響も指摘されています。

③ 観光動線の変化による街の再編

鉄道開通により人流が変わることで、
「既存バス路線の縮小」「小規模商店街の衰退」といった交通再編の痛みが出る可能性があります。

④ 完成までの長期化と不透明感

アラモアナまでの延伸が遅れており、
「本当に空港まで便利になるのか?」という市民の不安はまだ残っています。


総括:ハワイの都市づくりは“自動車依存”から転換できるか?

スカイライン開通は、
「観光都市から持続可能な“暮らす都市”へ」
というホノルルの長年の構造転換を象徴する出来事です。

渋滞緩和や新たな街づくりの推進など大きなメリットがある一方、
財政負担や景観問題など、都市鉄道ゆえの深い課題も抱えています。

今後の焦点は、

  • 延伸が計画通り進むか
  • TODで住宅・商業の質がどう変わるか
  • 観光と地域住民のバランスをどう取るか

という「都市の価値をどう再編集するか」という点に移っていきます。

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