



島根県松江市で、松江城近傍に建設中の高さ19階・約60メートルの高層マンションを巡り、**「景観を守れ」「城下町の風景が壊される」**と反対していた市民団体・住民らによる仮処分申請。ところが、2025年11月末、裁判所(松江地方裁判所)はこれを却下した――このニュースが地元で大きな波紋を呼んでいます。
以下、状況を整理しつつ、この問題の論点と今後考えられる展開をまとめます。
🔎 背景:なぜこのマンションが問題になったのか
- 建設されているマンションは、建設会社が大手の 京阪電鉄不動産。19階建てで高さ約60メートル。松江城の天守と同等、あるいはそれを上回る高さになるとされる。
- 問題視される最大の理由は「城下町・松江城を中心とした歴史的景観の喪失」。住民や市民団体は、「松江らしさ」「地域の風土」「観光資源たる景観」が壊される」と主張し、建設差し止めを求めていた。
- 地元行政(松江市)もこの問題を重く受け止め、当該建設地を含む「松江城周辺の眺望・景観基準」の見直しを2025年春から進めており、将来的に規制強化を予定。
⚖️ 仮処分申請と裁判所の判断
■ 住民側の主張
9月12日、住民グループらは「このマンション建設は松江城周囲の景観を著しく損なう」「将来の世界遺産登録の可能性を自ら閉ざす」などとして、**建設の差し止め(仮処分命令)**を松江地裁に申し立てた。
■ 裁判所の判断
2025年11月27日、松江地裁はこの申請を却下。判決理由として「現行の法令・手続きに違反はなく、『景観利益の不法な侵害』を認めるには至らない」と判断した。つまり、建設は合法であり、差し止める根拠はない――という結論。
📰 反応と今後の見通し
- 仮処分却下を受け、住民団体は「16階〜19階部分の撤去」「高さ制限の再設定」を求める本訴訟を2025年12月中にも起こす意向を表明。
- 一方で、松江市は「景観事前協議制度の導入」「景観審議会での新基準設定」を進め、将来的な高層建築には慎重な姿勢を示す。だが現行計画に対しては法的なストッパーが難しいというのが現実。
🏯 なぜこの問題は重要か — 建築・不動産・都市の視点から
■ 伝統と近代化のせめぎ合い
日本には、歴史的な景観を守るべき地域は多数。だが、人口減・空き家・老朽化――この文脈で「再開発・収益建築」が入り込むと、「どこに線を引くか」が難しい。今回の松江はその象徴。
■ “合法”と“地域文化の価値”のギャップ
たとえ法令・手続きに則っていても、地域の“目に見えない価値”――景観、文化、歴史――をどう評価するかは別問題。司法判断は「法律適合」であっても、地域の合意とは異なる場合がある。
■ 不動産価値 vs まちの資産価値
高層マンションは不動産価値・収益性を上げるが、地域にとってはまち全体の魅力や住みやすさ、観光資源になる。どちらを優先するかは、簡単には割り切れない。
✅ 結論と問い
現在のところ、この高層マンションは「合法的に建設継続可能」だが、地元住民や自治体は景観保護の観点から強く反発、今後の訴訟や制度見直しで再び争点になる可能性が高い。


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