岐阜県LRT計画とかつての岐阜市電を「都市・建築・不動産」で比較する

岐阜LRT
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はじめに

岐阜県が公表した「新たな交通システム(LRT)導入」イメージは、岐阜駅を核に循環(中心部)・北部(岐大/岐阜IC)・南部(県庁~岐阜羽島)の3方向を想定する構想段階の計画です。県は関連資料をまとめて公開し、9月補正で調査費3,000万円を計上して検討を進めています。岐阜県庁+2岐阜県庁+2
一方、**岐阜市電(名鉄岐阜市内線ほか/美濃町線・揖斐線等を含む系統)**は2005年までに廃止され、岐阜の「路面電車の街」は歴史の幕を閉じました。ウィキペディア+2ウィキペディア+2

本稿では、目的・制度設計/空間とデザイン/運行技術/財務・ガバナンス/都市・不動産効果/ネットワーク整合の6視点で、新LRT構想 vs 旧・岐阜市電を比較考察します。適宜、県公表イメージや過去写真を交えます(画像出典は各キャプション・引用先参照)。


1) 目的・制度設計:まちづくりの「上位目的」が違う

岐阜県LRTの位置づけは、“交通インフラ単体”ではなく、歩行回遊性の高い中心市街地づくり拠点(岐阜羽島・県庁・岐阜大学)間の結節を通じた地域構造の再設計です。県は「LRTとは」「新たな交通システム整備の考え」を公式資料で示し、都市政策(まちづくり)と一体で語っています。岐阜県庁+1

対して岐阜市電の晩年は、自動車優先の道路政策の中で定時性を失い、「路面に白線だけの停留所」など安全・利便の弱さも相まって衰退。結果として縮小・廃止へ至りました。ここには“都市を変える交通”という上位目的が弱かった時代背景が見て取れます。メルクマール

補足比較(外部事例):富山はLRT化を**「コンパクトシティ」の核**に位置づけ、政策目的と一体で推進し成果を得た好例。岐阜の新LRTは富山型の「上位設計」をどこまで具体化できるかが鍵です。JTtri+2国土交通省+2


2) 空間とデザイン:停留所・優先制御・街路のつくり方

新LRTは低床ホーム × バリアフリー × 連続的な歩行空間が前提。駅前広場の再編や走行空間の明確化、**信号優先(PTPS)などで“歩くまち × 定時性”**を都市デザインとして実装します(県イメージ参照)。岐阜県庁

一方の岐阜市電は、最末期に**“軌道内を自動車通行化”で優先権を取り消した経緯があり、停留所環境も脆弱でした。結果として定時性・安全性・ブランド性**を毀損。都市空間の負のループに陥りました。メルクマール

建築視点では、LRT停留所を**「屋外パビリオン」として設計し、雨風除け・照明・広告・観光案内・小規模売店など用途複合を図ると「駅=集客装置」として機能します。岐阜駅や県庁前、長良川沿い等は地場素材(木・和紙・美濃焼)を使った意匠で地域性を演出**する余地が大きいでしょう(成功例の多くは“停留所の建築デザイン”が強い)。※外部一般知見


3) 運行技術・車両:低床連接 vs 旧型車

新LRTは低床連接車(多扉)+段差ゼロで、単線区間や行先別循環の組み立ても含めて高頻度・定時性を狙います(県公表イメージ/概念図)。岐阜県庁
旧来の岐阜市電は旧型車両が長く残り、乗降性・情報案内・冷暖房などの面で“現代都市の移動”に十分対応しきれなかった面が否めません。

技術の違いは**「誰が移動できるか」を変えます。LRTは高齢者・ベビーカー・観光客の“段差バリア”を解消し、街なか滞在時間と沿道の売上**を底上げしやすいのが強みです。※外部一般知見(LRT一般論は国交省資料等に整理)国土交通省


4) 財務・ガバナンス:県主導の構想段階 vs 私鉄運営の撤退

岐阜県LRT県主導の構想段階。調査費を確保し、事業主体や運営スキームは未定です。民間投資の呼び込みやPFI、公設民営などの枠組み設計が今後の焦点。建通新聞社+1
岐阜市電私鉄(名鉄)運営で、モータリゼーションや道路政策と競合し赤字・撤退に至りました。ウィキペディア

さらに、県の**パブリックコメント(県民意見)には「財政負担が重い」「BRT等の代替」**を求める声もあり、合意形成が避けて通れません。岐阜県庁

比較軸:BRTの高度化でも都市モビリティを改善しうる——という国研の整理もあるため、**「なぜ鉄レールなのか」**の説明は不可欠です。国土交通省国土技術政策総合研究所


5) 都市・不動産への波及:**“駅前×回遊”**をどうつくり直すか

新LRTは岐阜羽島—県庁—岐阜駅—中心部—岐大/IC拠点間の“線”を引き直す構想。これにより、徒歩5〜10分圏の価値(地価・賃料)や商業・オフィスの立地判断が更新されます。駅前再編や柳ヶ瀬の回遊性強化を伴えば、「テナントの再配置(駅前&停留所前へ)」「小規模ホテル・サービスオフィス」「大学・研究機関のサテライト」等の誘致シナリオが現実味を帯びます。

一方、岐阜市電の廃止後は、中心市街地の賑わいが持続的に落ち込み、自動車依存・郊外志向が進んだという指摘が多い。政策選択(路面電車優先の放棄)も衰退要因の一つと論じられています。「廃止=即再生」にはつながらなかった事実が重い。メルクマール

富山の示唆:LRT化とエリアマネジメント拠点複合開発(駅上・駅前の再開発)を同時に進める都市は、沿線不動産の厚みが増します。岐阜でも停留所半径300mの用途誘導歩行者優先のストリートデザインが効果の決め手。国土交通省+1


6) ネットワーク整合:名鉄線・道路・観光動線との兼ね合い

新LRTは名鉄竹鼻線や在来バスとの競合・補完設計、長良川の渡河岐阜城・岐阜公園へのアクセスなど複数の設計制約を抱えます。岐阜新聞の解説でも、ルート評価の論点(城下・川越え・中心通過の是非・競合関係)が整理されています。
旧・岐阜市電は道路交通と競合し、優先制御を失った結果渋滞や定時性悪化に埋没。廃止後の交通状況の変化も統計的に報じられています(人身事故は減少したが、通勤帯交通量は増加など)。ネットワーク全体設計の弱さが露呈しました。ウィキペディア


まとめ:「なぜ今、レールでまちを編み直すのか」

  • 岐阜市電の教訓は、上位目的(都市像)と空間・運行設計が不可分であること。優先制御や停留所環境を欠いたままでは、路面電車は道路交通に飲み込まれる。メルクマール
  • 新LRTは、県主導の構想段階財源・事業スキーム・名鉄/道路との整合停留所建築と歩行空間デザイン、**合意形成(BRT比較を含む)**を“セット”で磨き込めるかが勝負。岐阜県庁+2建通新聞社+2
  • 建築×不動産の視点では、停留所半径300mの「勝てる用途」配置(小規模ホテル、専門クリニック、サービスオフィス、学生向け住宅/共用ラボ等)と、柳ヶ瀬・長良川の景観資産を結ぶ動線を**“歩いて楽しい空間”**として設計できるかが、**賑わいと地価の“底上げ”**を決めます。※外部一般知見

結局、「LRT=線路」ではなく、「LRT=まちの骨格」。岐阜は、市電の終章から20年目に、都市の書き換えに再挑戦しようとしています。成功には、政策(上位目的)→空間設計→運行→不動産誘導一気通貫が必要です。


参考・出典(主な一次・公的・一次情報準拠)

  • 岐阜県 都市政策課「まちづくりの推進(LRTとは等の資料)」、および同課の報道発表(資料1〜6 公表)。岐阜県庁+1
  • 岐阜県 9月補正でLRT調査費3,000万円(建通新聞Digital)。建通新聞社
  • 名鉄岐阜市内線(岐阜市電)廃止・沿線影響(Wikipedia ほか)。ウィキペディア
  • 名鉄揖斐線の廃止。ウィキペディア
  • 岐阜市の路面電車政策と衰退の経緯(Merkmal)。メルクマール
  • 富山市LRTの政策的整理(MLIT資料/JTRRI論考)。国土交通省+1
  • 県のLRTイメージ・ルート解説(鉄道計画データベース/鉄道協会ニュース等のまとめ)。
  • ルート論点(岐阜新聞デジタル企画)。
  • 代替(BRT)の有効性整理(国総研ブリーフ)。国土交通省国土技術政策総合研究所
  • 県への意見(LRT構想への反対等・県公表資料)。岐阜県庁

画像出典:岐阜県公表イメージ(再掲記事)、岐阜新聞・個人サイトの過去写真、各まとめ記事より(それぞれの引用元リンク/キャプションに準拠)。

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