はじめに|名古屋のSRTは「ただの新型バス」なのか?

交通・インフラ

名古屋市が導入を進める SRT(Smart Roadway Transit)
ニュースやSNSでは「連節バス」「新しい路線バス」と紹介されがちですが、
実は、日本の都市交通の中でもかなり異色です。

なぜならSRTは、

  • 交通だけを良くする制度ではなく
  • 都市の使い方そのものを変えようとしている

からです。

この記事では、名古屋SRTと似た仕組みを持つ日本の都市と比較しながら、
何が同じで、何が決定的に違うのかを、都市計画の視点で解説します。


そもそも名古屋SRTとは?

SRT(Smart Roadway Transit)とは、
名古屋市 が都心部に導入する新しい路面公共交通です。

詳しくはこちらの記事でまとめています。

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またSRT、LRT、BRTの違いについてはこちら

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SRTの基本情報(第1段階)

  • ルート:名古屋駅 〜 栄(広小路通)
  • 距離:約5.6km
  • 停留所:7か所
  • 車両:連節バス
  • 特徴:
    • デザインされた停留所(なごまちテラス)
    • キャッシュレス・デジタル連携
    • 都心回遊を重視した運行設計

👉 「移動」+「滞留」+「景観」までセットなのが最大の特徴です。


比較する日本の事例はこの3都市

名古屋SRTと発想・仕組みが近い事例として、次の3つを取り上げます。

  1. 横浜市:観光×連節バス
  2. 神戸市:再開発×連節バス
  3. 三陸地域:BRT(バス高速輸送)

① 横浜市|ベイサイドブルー

横浜市

https://ycvb.yokohama/img_data/T03412_1.jpg
https://hamakore.yokohama/uploads/2020/06/bayside-blue-yokohama-yamashitafuto-info-09.jpg

できた背景

横浜駅とみなとみらい地区は近いものの、
鉄道では微妙・徒歩では遠いという“すき間”がありました。

そこで導入されたのが、
観光と都心回遊を目的とした連節バスです。

特徴

  • 連節バスによる高輸送力
  • 観光ルートに特化
  • 車両デザインの象徴性が高い

名古屋との共通点

  • 都心の回遊性向上が目的
  • 地上交通で「動き」を見せる設計

相違点

  • 横浜は観光補助交通が中心
  • 名古屋は都市構造を変える主軸交通を狙っている

② 神戸市|Port Loop(ポートループ)

神戸市

https://www.city.kobe.lg.jp/images/40157/portloop_issiki.png
https://atoa-kobe.jp/news/upload/2023/471250861117669394.jpg

できた背景

神戸はウォーターフロント再開発が進む一方で、
都心と海側の回遊不足が課題でした。

特徴

  • 再開発エリアを巡る連節バス
  • 観光・イベント時の輸送強化
  • 都市イメージを高めるルート設計

名古屋との共通点

  • 再開発×交通をセットで考えている
  • 連節バスを「都市演出」に使っている

相違点

  • 神戸:点と点を結ぶ回遊路線
  • 名古屋:都心を貫く“背骨”としての交通

③ 三陸地域|BRT(気仙沼線・大船渡線)

三陸地域

https://images.tetsudo.com/report/279/brtf_001.jpg
https://www.jreast.co.jp/railway/train/brt/img/top_railimg.jpg

できた背景

東日本大震災後、
鉄道の代替・復旧手段として導入されたのがBRTです。

特徴

  • 専用走行路を持つ
  • 定時性が非常に高い
  • 生活交通としての安定性重視

名古屋との共通点

  • 鉄道ほど重くない交通手法
  • 柔軟な運用が可能

相違点

  • 三陸:生活の足
  • 名古屋:都市の賑わい装置

一目で分かる比較表

項目名古屋SRT横浜神戸三陸BRT
主目的都心構造の再編観光回遊再開発回遊生活交通
車両連節バス連節バス連節バス通常バス
専用道なしなしなしあり
停留所テラス型通常通常簡易
都市デザイン
実験性×

👉 「交通×公共空間×実験」を同時にやっているのは名古屋だけ


なぜ名古屋SRTは“異質”なのか?

名古屋SRTの最大の特徴は、

交通を整えるために都市を変えるのではなく
都市を変えるために交通を使っている

点にあります。

  • 地下鉄を補完する存在
  • 観光バスの延長
    ではなく、

🚦 都市を再編集するためのツール

として位置づけられています。


今後注目すべきポイント

  1. 定時性をどう確保するか
  2. 停留所が本当に“居場所”になるか
  3. 観光専用で終わらないか
  4. 平日常時運行に拡張できるか
  5. 全国モデルになれるか

まとめ|SRTは日本の都市交通の分岐点

名古屋SRTは成功すれば、

  • 地方中枢都市の新しい標準
  • 「鉄道でもBRTでもない第3の選択肢」

になる可能性があります。

逆に失敗すれば、
「結局バスだった」という評価で終わるでしょう。

だからこそ、
名古屋SRTは 日本の都市政策の実験場なのです。

名古屋都市圏に関する記事はこちら

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参考文献

  • 名古屋市「新たな路面公共交通システムSRT」
  • 横浜市交通局「ベイサイドブルー」
  • 神戸市「Port Loop(ポートループ)」
  • JR東日本「BRTのご案内」
  • Impress Watch/Travel Watch 各種報道

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