長浜市の市街地再生は何がすごい?黒壁から始まった成功の仕組みを解説

https://svcstrg.cld.navitime.jp/travelguide/p25060001/p25060001_01.jpg
https://sp-ao.shortpixel.ai/client/q_glossy%2Cret_img%2Cw_670%2Ch_502/https%3A//img01.jalannews.jp/img/2023/06/20230614_kurokabe_2.jpg
https://kitabiwako.jp/wp_sys/wp-content/uploads/2018/04/IMG_1571-1024x683.jpg
https://www.ekimachinagahama.com/wp-content/uploads/2020/06/about-1.jpg

長浜市(滋賀県)の「市街地再生(中心市街地の再生)」が“成功事例”として語られるとき、核になっているのは ①歴史資産を壊して作り替えるのではなく、活かして稼ぐ(コンバージョン型) と、②行政だけでも民間だけでもなく、まちを運営する“事業体(まちづくり会社等)”を育てた こと、そして ③駅前などのハード整備で回遊と日常利用の土台を作り直した ことです。以下、流れに沿って解説します。


1. 出発点:中心市街地が抱えていた典型的な課題

長浜も他の地方都市と同様に、モータリゼーションや郊外化で中心部の商業が弱り、空き店舗・空き家が増える、来街目的が薄れる、という課題を抱えていました。そこで長浜が取った戦略は、「大型再開発で一気に置き換える」よりも、既存ストックを磨き直して“目的地”をつくり、波及させるやり方でした。


2. 第1の転換点:黒壁スクエア=“観光商業の創生”を、既存建物の再生でやった

2-1. まちの象徴を“保存+事業化”した

長浜の中心部で象徴的だった建物(旧銀行建築=黒壁の建物)を核に、第三セクター的な形で「株式会社黒壁」が設立され、ガラスをテーマにした拠点(工房・飲食等)として展開していきます。黒壁は1989年に黒壁ガラス館を拠点にオープンし、その後も周辺の町家・空き店舗等の利用権を集約しながらショップや飲食、体験へ広げていった、という経緯が整理されています。

ポイントは「箱を作ってテナントを埋める」ではなく、

  • 建物の歴史性(北国街道沿いの町並み・町家など)
  • テーマ性(ガラス)
  • 体験性(工房・ミュージアム等)
    を束ねて、“行く理由”をつくったことです。

2-2. 空き店舗対策を“運営(テナントミックス)”で回した

長浜の強みは、空き店舗・空き家を「補助金で改修して終わり」にせず、利用権の集約→改修投資→転貸→テナントミックスという、いわば“小さなディベロッパー機能”を地域側が持った点です。

実際に第2期計画の説明でも、

  • 黒壁が北国街道周辺の建物を借家契約等で集約し、店舗等を整備・運営してきたこと
  • その後「㈱新長浜計画」などが、空きが出た町家の利用権を取得して改修し、ニーズに合わせて転貸する役割を担ってきたこと
    が明記されています。

さらに中小機構の事例紹介でも、黒壁を起点に不動産活用の目的に応じた組織が派生し、まちづくり会社が駐車場運営や町家賃貸、再生バンク等の事業を担っている、という“運営体制の多角化”が語られています。

成功の核心はここで、観光地化そのものより「空き物件を事業として回す仕組み」を地域が獲得したことが長期的に効きます。


3. 第2の転換点:国の制度も使い、中心市街地を「計画」と「投資」でアップデート

黒壁のような民間主導の芽を“点”で終わらせず、長浜市は国の中心市街地活性化制度などを用いて、エリア全体を回遊・都市機能・居住の観点から組み直していきます。

3-1. 「中心市街地活性化基本計画」(2009年認定→約11年間)

長浜市は 平成21年(2009年)に中心市街地活性化基本計画の認定を受け、その後(少なくとも)計画期間満了の令和元年度末まで、交流人口の獲得を軸に取り組みを進めた、と市の将来ビジョン策定背景に整理されています。

同じく市資料では、この期間に黒壁周辺の来訪者が年間200万人を達成した旨が触れられています。
(※この数字は“黒壁周辺”の来訪者としての記述で、都市全体の観光客数とは定義が異なる可能性がある点は留意。)

3-2. ハード整備:駅周辺・回遊動線・公共公益施設

市の「社会資本総合整備計画」ページでは、基本計画に基づき

  • 歴史・伝統文化の継承
  • 長浜駅周辺と中心商店街を連続一体的につなぐ回遊空間の創出
  • 公共公益施設整備による都市機能の強化
    を進めた、と説明されています。

さらに都市再生整備計画の資料には、駅東地区の第一種市街地再開発事業など、複数の事業を組み合わせて基盤整備を進める枠組みが示されています。


4. 象徴的プロジェクト:えきまちテラス長浜(駅東地区の市街地再開発)

「えきまちテラス長浜」は、**第2期中心市街地活性化基本計画で位置づけられた「長浜駅東地区第一種市街地再開発事業」**で誕生した施設、と施設側が説明しています。

この説明が重要なのは、

  • 都市再開発法にもとづく第一種市街地再開発
  • 地権者で構成される組合施行
  • 権利変換
  • 補助金+保留床処分金等で事業費を賄う仕組み
    といった“王道の再開発スキーム”を、駅前の結節点に適用している点です。

つまり長浜は、

  • 歴史ストックのコンバージョン(黒壁・町家)=細やかな面的更新
  • 駅前の再開発=結節点の機能更新
    を“両輪”にして、観光だけでなく日常利用(暮らし・サービス・交流)へ寄せていく構造を作っています。

5. 長浜が「成功」しやすかった設計思想(他都市が真似するときの要点)

ここまでの事実関係を踏まえ、成功要因を“再現可能な形”に翻訳すると、だいたい次の6つに整理できます。

①「テーマ」と「本物性」で目的地を作った

ガラスというテーマを掲げ、工房・飲食・物販・文化機能へ展開し、来街理由を作った。

② 空き物件対策を「運営の仕組み」にした

利用権の集約、改修投資、転貸、テナントミックスを担う主体(黒壁、新長浜計画など)を育て、空き家・空き店舗を“流通”させた。

③ 行政は「直接経営」より、制度設計・基盤整備・後押しに回った

中心市街地活性化基本計画、社会資本整備、都市再生整備計画などで、回遊・都市機能・公共施設を整え、民間活動が回りやすい土台を作った。

④ 駅前(結節点)を更新し、観光動線を“日常動線”に接続した

駅東地区の再開発(えきまちテラス等)で、駅を降りてから中心部へ“歩いて行ける”体験価値を上げた。

⑤ 成功の定義を「イベント的な賑わい」だけに置かなかった

第2期計画等では、単に観光客数だけでなく、空き店舗対策や居住、都市機能といった複数の目標・指標でマネジメントする発想が読み取れます。

⑥ その後の環境変化(コロナ等)を受け、次のビジョンに更新した

中心市街地活性化基本計画の満了後、コロナ禍の社会変化を踏まえて「湖の辺のまち長浜未来ビジョン」を策定した、と市が整理しています。
→ “計画を作って終わり”ではなく、環境変化に合わせて軸足を移す意思決定をしている点も、長期的な強さです。


6. まとめ:長浜のやり方を一言でいうと

長浜市の市街地再生は、
「歴史資産×テーマ(ガラス)で目的地を作る」→「空き物件を運営で回す」→「駅前や公共空間を投資でつなぎ、回遊と日常利用に拡張する」
という順番で、点(黒壁)を面(中心市街地)に広げていったモデルです。

「どの補助制度を使ったか」以上に、“まちを運営する主体(ディベロッパー機能)”を地域に埋め込めたかが勝敗を分けた、と捉えると理解しやすいです。


参考文献・参考資料

  • 内閣府 地方創生推進事務局(中心市街地活性化)「第2期 長浜市中心市街地活性化基本計画(全文)」
  • 長浜市「社会資本総合整備計画(長浜市中心市街地活性化のまちづくり推進計画)」
  • 長浜市「湖(うみ)の辺(べ)のまち長浜未来ビジョン(策定背景)」
  • えきまちテラス長浜「えきまちテラス長浜とは(長浜駅東地区第一種市街地再開発事業の説明)」
  • 株式会社黒壁 公式「黒壁について(会社概要・沿革)」
  • (一財)地域総合整備財団(ふるさと財団)系資料「滋賀・長浜 中心市街更新“観光商業の創生”物語(黒壁スクエアの経緯)」
  • 中小機構「まちかつ:長浜まちづくり株式会社(事業多様化・町家活用等)」
  • 国立国会図書館デジタル(研究資料)「滋賀県長浜市の『黒壁ガラススクエア』を例として」

コメント

タイトルとURLをコピーしました