


東京都千代田区、九段下駅およびその近傍エリアでは、近年「まちづくり」として大型再開発が進行しています。今回はその中でも注目の高層ビル計画、特に「九段南一丁目地区 北街区」を中心に、プロジェクトの概要、周辺環境・動機、そして建築・都市デザインの観点から整理し、建築学生/不動産関係者視点で読み取っておきたいポイントを解説します。
1. プロジェクト概要
まず、計画の主要なスペック・スケジュールを整理します。
- 本計画名:九段南一丁目地区 北街区。所在地は東京都千代田区九段南1丁目一帯。 超高層ビル・都市開発研究所+2SkySkySky+2
- 規模:地上32階・地下3階、高さ約 170 m(計画値)。 超高層ビル・都市開発研究所+1
- 用途構成(予定):
- 地下:駐車場・店舗・駅コンコース連絡等。 超高層ビル・都市開発研究所
- 地上1〜2階:店舗等。 超高層ビル・都市開発研究所
- 地上3〜5階:公共公益施設。 超高層ビル・都市開発研究所
- 地上6階:機械室。 超高層ビル・都市開発研究所
- 地上7〜32階:オフィスフロア。 超高層ビル・都市開発研究所
- 事業主体・体制:
- 建築主:九段南一丁目地区市街地再開発準備組合。 超高層ビル・都市開発研究所
- 事業協力者:住友不動産株式会社(推定)等。 超高層ビル・都市開発研究所+1
- コンサルタント:日建設計。 超高層ビル・都市開発研究所
- スケジュール(案):
- 解体着手:2025年度。 超高層ビル・都市開発研究所
- 着工:2028年10月予定。 超高層ビル・都市開発研究所+1
- 竣工:2033年3月予定。 超高層ビル・都市開発研究所
- 計画背景ポイント:
- 駅直結性の確保、オフィス供給のアップグレード、公共施設の充実などが挙げられています。 bluestyle.livedoor.biz+1
このように、九段下エリアにとってかなり大規模な再開発計画であり、街のランドマークになりうるボリューム感があります。
2. なぜこの場所・なぜ今か ― 都市・不動産の視点から
本プロジェクトが出てきた背景を、都市構造・不動産市場・地域イメージの三つの視点から考察します。
① 駅周辺立地の優位性
九段下駅は東京メトロ・都営地下鉄の複数路線が乗り入れており、アクセス性が高い。また、靖国通り沿いや首都高速道路付近といった交通ポートの近さが特徴です。北街区計画の立地も、「北側を靖国通り、西側を都道401号、東側を首都高速5号池袋線に囲まれた一帯」 と紹介されています。 超高層ビル・都市開発研究所
こうした立地はオフィス用途にとって魅力的で、企業・オフィス需要の取り込みという観点から開発が後押しされます。
② オフィス需給と再開発の潮流
都心部では既存のオフィスビルが老朽化・高効率化が遅れているケースが多く、高層化・複合化による土地の更新が加速しています。九段下エリアも例外ではなく、今回の北街区計画はオフィス主体ながら、公共公益施設・店舗など多用途を併せ持つことで、単なるオフィスビル以上の価値創出を狙っています。実際「地上7〜32階をオフィスフロア」と定め、低層部に公共施設・店舗を設ける構成となっています。 超高層ビル・都市開発研究所
③ 地域イメージ刷新・街づくりとの連携
千代田区の「九段南一丁目地区第一種市街地再開発事業」において、2023年12月に都市計画決定がなされ、3つの街区に分けて整備する方針が示されています。 SkySkySky
このように街全体を再構成する流れの中で、単独ビルというより「都市スケールのリニューアル」の一環として位置付けられています。歴史的要素(靖国神社・近隣の戦災復興街区など)とも関わる立地だけに、再開発によって街の風景・機能を次世代に向けて転換する意図が読み取れます。
建築学生・不動産関係者として注目すべきは、こうした「立地+需給+街づくり」の三角が揃っている点です。特に駅直結型、高効率オフィス、高層化というモチーフが典型的に具現化されている事例と言えます。
3. 建築/デザイン観点での読みどころ
プロジェクトには設計・構造・環境の観点からも興味深い要素があります。ここでは特に以下三点を採り上げます。
① 高さ170 m級というスケール
地上32階・高さ約170mという規模は、千代田区・九段下界隈では相当な存在感を持つものです。近接する既存ビル群と比べても「街のスカイラインを変える」レベルの高層化といえます。 超高層ビル・都市開発研究所
構造や施工面では、オフィス用途+公共施設併設という箱の中に求められるフロアプレートの柔軟性や、設備計画の高度化(機械室6階/オフィス7階以上)などが設計上のチャレンジとなるでしょう。
② 公共公益施設+商業機能併設という「複合化」
建て替え型・再開発型の高層オフィスビルが今後求められているのは「ワークプレイス」だけでなく「まち/街区」として機能することです。本計画では3〜5階に公共公益施設、1〜2階に店舗を置く設計構成が明らかにされており、低層部の街に開いた空間性が意図されています。 超高層ビル・都市開発研究所+1
また、駅直結・地下階の駅コンコース連絡も計画に含まれ、交通・動線・街とのつながりを意識した「都市インフラとしてのビル」という文脈も読み取れます。
③ 街並み・歴史との対話
九段下エリアには歴史的な街区構成、官庁街・戦後復興期の建築ストック、さらには 靖国神社 や緑地などのエレメントもあります。こうした文脈に対して、新しい高層ビルがどのように調和・対比を図るかが鍵になります。特に「街のスケールを壊さずに高層化をどう捉えるか」「低層部で街とのつながりをどう作るか」が建築設計・都市デザインのポイントです。
例えば、別プロジェクトでは「腰巻きビル」形式(既存建物を保存しつつ上部に新築)などの手法も採られています。 blue-style.com
この手法を参考に、九段下プロジェクトにおいても「基盤・街並みレイヤー」と「高層レイヤー」の階層構成が意識されていると読むことができます。
4. 建築学生が抑えておきたい学び・活用ポイント
このプロジェクトを「学び/素材」として活用するなら、次の視点を押さえておくと面白いです。
- 構造・設備設計視点:地上32階・170m級という高さを実現するためには、耐震・制振・免震のどの手法が採られるか、また機械設備の集中配置(6階機械室)や階高設定などの検討が重要です。構造設計事務所・施工会社が公表されていれば、施工図・構造図を追いかける良い機会です。
- 都市・街区デザイン視点:街の動線、駅との接続、広場あるいは低層階の公共施設と街との関係性をどう設計しているか。学生作品やゼミでこうした条件を変えて「もし100 m級だったら」「もし用途が住宅混合なら」といった仮定を立てて比較検討するのも有効です。
- 不動産・ビジネス視点:この立地においてオフィス需要・賃料水準・建築コスト・投資回収という観点で評価するとどのように見えるか。高層化・駅直結というプレミアムがつく一方、既存街区との調整・解体・仮移転コスト・工期長期というリスクもあります。このプロジェクトでは解体着手から竣工まで約8年程度を想定しています(2025年着手→2033年竣工)。 超高層ビル・都市開発研究所+1
- 持続可能性・環境設計視点:高さ・規模が大きくなるほどエネルギー効率・設備負荷・空調・照明・換気などが重要になります。例えば他プロジェクトでは「ZEB ready」「CASBEE Sクラス達成」という目標も掲げられています。 kenken.go.jp 本件でもこうした環境性能にも注目すべきでしょう。
5. 今後の展望・注意点
このような大型再開発には、何点か留意しておくべき“展開条件/リスク”があります。
- 着工・竣工の長期化リスク:本計画は8年近い期間が見込まれており、その間の市場変化(オフィス需要の変化、リモートワークの定着、経済情勢、建築コストの上昇など)は影響を与え得ます。
- 地域既存ストック・住民・景観との調整:歴史的な街区・景観・近隣住民の影響など、街づくり上の“調整負荷”が大きくなる場合があります。実際、九段南一丁目再開発では既存建物の解体準備や街区計画決定が進んでいます。 SkySkySky+1
- 用途変化への柔軟性:近年オフィス用途の将来性を巡る議論もあり、再開発ビルが「オフィス専用」だけでなく「オフィス+ホテル/住宅/MICE」等複合用途であることが強みになる傾向にあります。本計画も店舗・公共施設併設という点でその方向を多少持っていると言えます。
- 景観・まちのアイデンティティとの関係:高層化すれば街のスカイラインが変わるという意味で、どのように“街らしさ”を担保するかが重要です。建築学生としては、「どの高さで街並みと調和を取るか」「低層部を街に開くデザインとは何か」をプロジェクトを通して考える良い題材となります。
6. まとめ
今回整理した「九段下・九段南一丁目地区 北街区」プロジェクトは、駅直結、高層オフィス、街づくりとの対話、多用途併設という要素を併せ持つ典型的な都心再開発のモデルケースです。建築学生としては、構造・設備・都市デザイン・不動産マーケットという多角的な視点から学びを得ることができます。また、不動産・まちづくり関係者としても、長期スケジュール・用途変化・地域調整という課題を見通す格好の題材です。
今後もこのプロジェクトの進捗(解体開始、着工、施工形態、設計者公開、設備仕様など)をウォッチしておくことで、実務的な知見・建築設計演習・学生ゼミ検討テーマとしても非常に有用でしょう。「まちに開く」「街とつながる」「時代に応じた高層化」というキーワードを軸に、あなたのブログ「建築×不動産」シリーズでも読者に刺さる切り口がたくさんあると思います。


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