【東京再開発マップ ⑫】湾岸

都市・再開発

― 住宅で街をつくる。鉄道のない場所に、鉄道が来る

建設中 計画・準備中 竣工済 交通インフラ

第12回は湾岸。中央区の勝どき・豊海・月島・晴海から、江東区の豊洲・有明までを扱います。

①〜⑪と決定的に違うのは、主用途が住宅だという点です。丸の内も渋谷も品川もオフィスが主役でしたが、湾岸では総戸数2,000戸級のタワーが同時多発的に建っている。中央区湾岸では単なるタワーマンション供給にとどまらず、防災性、公共空間、生活利便施設を一体的に更新する市街地再編が進んでおり、勝どき・月島・豊海は湾岸エリアの住宅需要を受け止める中心的な地域として、今後も人口増加と都市機能更新の結節点になっていくことが想定されています。

そしてもうひとつの特徴が、交通が後から来ること。街ができてから鉄道を通すという、日本ではあまり例のない順序で進んでいます。


① 豊海地区第一種市街地再開発事業(THE TOYOMI TOWER MARINE&SKY)

区域面積 約2.0ha/2026年11月竣工予定

湾岸で最大級のタワーです。「勝どき・豊海地区まちづくりガイドライン」の対象範囲である豊海で進められている事業で、三井不動産レジデンシャル、東急不動産、東京建物、野村不動産、三菱地所レジデンス、清水建設の6社が手掛けます。ガイドラインの目的である”新しい都心ライフスタイルを育むまち”となるべく、約2.0ヘクタールの土地に地上53階地下1階建ての商住複合大規模施設「THE TOYOMI TOWER MARINE&SKY」が建設され、2023年1月に着工しました。施設には区民館も含まれています。地上53階建て・2,046戸という超大規模タワーで、2026年11月の竣工を控えています。勝どき・豊海地区は、八重洲や日本橋、銀座など国際ビジネス拠点となる都心エリアと、有明や台場といった国際ビジネスおよび国際観光拠点となる副都心エリアの間に位置しています。

デベロッパー6社が1つの事業に参画するという体制は、リスク分散と販売力の確保のためですが、裏を返せば1社では抱えきれない規模だということでもあります。

② 勝どき東地区第一種市街地再開発事業

B棟 地上29階・約106m/2029年5月竣工予定

B棟(地上29階・約106m)が2026年4月に新築工事へ着手し、2029年5月の竣工を予定しています。BRT(バス高速輸送システム)などの新交通システム導入やウォーターフロントの特性を活かした都市空間の創出が計画されています。パークタワー勝どきミッド/サウスに続く3棟目のタワーマンションにあたります。

③④ 月島三丁目北地区・南地区

北地区A街区 高さ約199m・1,285戸/2026年6月竣工/南地区 744戸/2028年9月竣工予定

このシリーズで扱ってきた中でも、都市計画的にいちばん議論を呼ぶ案件かもしれません。

北地区のうちA街区では、高さ約199m、総戸数1,285戸(うち非分譲住戸340戸、広告対象外住戸30戸)の住宅を中核に、木造住宅密集地の解消、建物共同化、広場整備などを通じた防災性向上が掲げられており、竣工は2026年6月下旬、2027年3月下旬に入居が予定されています。南地区では総戸数744戸(うち一般販売対象戸数516戸)の超高層建築物が2024年1月に着工し、2028年9月下旬の竣工に向けて事業が進められています。

月島は、もんじゃストリートで知られる路地と長屋の街です。その木造密集市街地を、防災性向上を理由に199mのタワーへ置き換える。⑪秋葉原で見た「らしさと更新」の対立が、ここでは住宅地の形で現れています。

非分譲住戸340戸という数字が、権利変換で従前の地権者に返される床です。市街地再開発事業の仕組みを具体的に知りたい人は、この比率(1,285戸中340戸)を見ておくといいと思います。

⑤ HARUMI FLAG(晴海五丁目西地区)

約18ha/まちびらき完了

東京2020大会の選手村跡地です。晴海ではHARUMI FLAGのまちびらきが完了し、SKY DUOへの入居が始まっています。

約5,600戸という規模は単独の住宅開発として国内最大級で、⑥品川の高輪ゲートウェイシティ(約13ha)を上回る面積を持ちます。分譲価格の設定や都有地の売却価格をめぐって訴訟も起きており、公有地を使った大規模住宅供給のあり方という論点を残しました。

⑥⑦ 江東区側 ― 豊洲と有明

豊洲では豊洲二・三丁目地区市街地再開発事業が段階的に進み、水辺の公共空間整備も並行しています。

有明で注目すべきは産業の転換です。有明南地区では、コナミグループとテレビ朝日の進出が大きな注目を集めています。

展示場と物流の街だった有明が、コンテンツ産業の集積地になりつつある。②八重洲・日本橋がバイオやライフサイエンス、⑨池袋がアート・カルチャーを掲げているのと同じで、エリアごとに産業のキャラクターを設定して床を埋めるというのが、いまの東京の再開発の共通手法です。

⑧ 都心部・臨海地域地下鉄 ― 街の後から来る鉄道

湾岸を語るうえで避けて通れないのがこの新線です。

2022年11月に公表された事業計画案によると、都心部の起終点を東京駅(八重洲口)、臨海部の起終点を有明・東京ビッグサイト駅とする6.1kmで、途中5駅(新銀座、新築地、勝どき、晴海、豊洲市場/すべて仮称)を設けます。東京駅では秋葉原駅からの延伸計画がある常磐新線(つくばエクスプレス)、有明・東京ビッグサイト駅では羽田空港アクセス線との接続を今後検討します。建設費は約4,200億円から5,100億円で、費用対効果は1.0以上、30年以内で累積資金収支が黒字になるとしています。東京都は2030年までの着工、2040年の開業を目指しています。起点が東京駅なのは、駅周辺で国際ビジネス拠点が形成される将来像が示され多くの大規模再開発が進捗していること、東京駅が新幹線や各方面への在来線が行き交う大規模ターミナルであることが理由です。国際ビジネス拠点との連携や人の交流を広域的なものにすることで、臨海部のポテンシャルを最大限向上させるとしています。中央区と江東区をつなぐ地下鉄で、晴海のような鉄道空白地帯にも駅ができる構想です。

BRTも動いています。東京BRTの東京駅ルートは2026年秋の運行開始が予定されています。東京都臨海部地域公共交通計画(計画期間2026〜2030年度)では、新豊洲駅前への新停留所設置や東京国際クルーズターミナル・ビッグサイト方面への延伸が「検討を進める」、有明アリーナ・東京ビッグサイトの観客輸送の仕組みや晴海フラッグ〜豊洲間の増便が「検討する」とされました。

HARUMI FLAGに約1万人が住み始めてから、最寄り駅ができるのが2040年。この時間差こそが、湾岸の再開発を評価するときの最大の論点だと思います。


まとめ:湾岸の20年後

事業規模完成時期
豊海地区(THE TOYOMI TOWER)約2.0ha/53階・2,046戸2026年11月
勝どき東地区 B棟29階・106m2029年5月
月島三丁目北地区199m・1,285戸2026年6月
月島三丁目南地区744戸2028年9月
HARUMI FLAG約18ha・約5,600戸完了
都心部・臨海地域地下鉄6.1km・7駅2040年開業目標

湾岸の再開発は、①〜⑪とは根本的に発想が違います。都心部の再開発が「すでにある集積をさらに濃くする」ものだとすれば、湾岸は**「何もなかった埋立地に街そのものを一から立ち上げる」**という営みです。

その結果、都市計画としては珍しい順序が生まれました。普通は鉄道が通り、駅ができ、人が集まり、街になる。湾岸では逆に、住宅が建ち、人が住み、それから鉄道が計画される。交通インフラの進化がエリア全体の資産価値を押し上げる構図と説明されますが、裏返せば2040年まで、住民は不便を受け入れ続けるということでもあります。

もうひとつ気になるのが、住宅一本足という構造です。オフィスも商業も文化施設も、湾岸では「タワーマンションの低層部」に収められている。街の骨格が住宅供給の論理で決まると、人口が減り始めたときに何が残るのか。

月島の路地が199mのタワーに置き換わり、選手村跡地に1万人が暮らし、2040年に地下鉄が開業する。このシリーズで扱った15エリアの中で、最も実験的で、最も検証が必要なエリアが湾岸だと思います。

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