【東京再開発マップ ⑪】上野・秋葉原

都市・再開発

―「らしさ」が争点になる再開発

建設中 計画・準備組合 竣工済 構想・基盤整備

第11回は上野・秋葉原。①〜⑩とは違う論点がここにはあります。

丸の内や品川では「どんな街をつくるか」が問われますが、上野・秋葉原では「いまある街をどこまで壊していいか」が問われている。⑦渋谷の西武跡地や⑩神田の学士会館でも触れた話ですが、このエリアではそれが事業の進捗そのものを左右しています。


① 東上野四丁目A-1地区(東上野四・五丁目地区)

地区全体 約6.9ha/2030年代半ば完成予定

上野駅前で長く動かなかったエリアが、ようやく前に進み始めました。

上野駅が位置する台東区では、2019年3月に「台東区都市計画マスタープラン」を発表し、これを基に「上野地区まちづくりビジョン」も策定され、おもに「東上野4・5丁目地区」「御徒町駅周辺地区」「秋葉原地区」で再開発を計画。2024年3月より東上野4・5丁目地区で本格的な再開発が始動しました。対象区域は台東区役所や上野警察署などの公共施設も集まっている東上野4丁目エリアで、これを「A地区」として地域コミュニティの活性化を目指した複合市街地へ再整備。オフィス・商業施設・住宅を中心に、地域住民が交流しやすい環境を整えるとともに、防災機能の向上を目指した街づくりが行われる予定です。検討区域では、浅草通りの玄関口としての立地特性や上野駅とのアクセス利便性を踏まえ、建築敷地の整序・共同化により土地の有効利用・高度利用を図っていくとされ、上野駅前の新たな顔となる複合拠点は2030年代半ばに完成予定。事業協力者として東京メトロと大林組が選定されました。台東区は2018年3月に「東上野四丁目地区エントランス街区勉強会」を設立し全16回の勉強会を開催、A-1地区について準備組合を設立することに地権者の賛同を得て、2024年3月に「東上野四丁目A-1地区再開発準備組合」を設立しました。実現すれば上野と浅草をつなぐ浅草通りの玄関口として、商業、文化、観光、防災機能などを備えた複合拠点が誕生します。対象は上野警察署を含む約1.0ヘクタールの敷地です。 At HomeKenbiya

課題認識も明快です。上野駅から浅草駅の間は一部を除いてエアポケットになっており、周辺は多くの観光客で賑わっているものの、特に上野駅の東側エリアでは豊富な資源を生かしきれていないとされます。台東区の取り組みは今回が初めてではなく、2017年に「上野地区まちづくりビジョン策定委員会」を組織、2019年に上位計画として「東上野四・五丁目地区地区計画」を発表、2022年には土地区画整理事業の施行認可申請を行うなど準備を進めてきました。 Rakumachi

勉強会16回、準備開始から準備組合設立まで6年。⑩飯田橋・神田でも見た合意形成の時間軸が、ここでも同じように必要とされています。

② 上野駅周辺の基盤整備

2027年度に方向性(構想)を提示予定

建物より先に、駅と公園の関係を組み替える動きが進んでいます。

東京都台東区は上野駅周辺での「人中心の空間づくり」を具現化するため、2026年度当初予算案に「上野地区まちづくり推進」として2億7,792万円を計上。「基盤整備」「駐車場地域ルール」「機能誘導方策」を3本柱とし、2027年度にも上野地区の都市空間再編の方向性を打ち出す考えです。基盤整備では、地下と地上、デッキなどで上野恩賜公園と上野駅、さらに駅周辺のまちをつなぐ検討を加速。歩行者交通量や混雑度合い、滞在の快適性の分析・調査、公共交通の実態把握を進めます。機能誘導方策では、地区計画などを活用して商業・業務・ホテルなどの適切な配置を誘導し、低層部に商業、中層部に業務・ホテルを配置するなどの役割分担を想定しています。区は2024年策定の「上野地区まちづくりビジョン」で「上野の歴史を活かした都市空間の創出」「日本の玄関口となる交通結節点として、国際都市の顔に相応しいおもてなし空間の創出」などを掲げ、東西都市軸の強化に向けた歩行者ネットワークの構築を打ち出しています。一方、現状のパンダ橋(東西自由通路)は、にぎわいが不足しているほか、東上野4丁目側につながっていないなどの課題があるとされています。 KensetsunewsKensetsunews

上野は公園(西)/駅/低層市街地(東)という3層構造で、西側の文化施設群と東側の生活市街地が駅で断絶している。パンダ橋という自由通路はありながら賑わいが生まれない。この分断をどう解くかが、上野の都市計画の中心課題です。⑨池袋の東西デッキとまったく同じ構図です。

③ 外神田一丁目南部地区第一種市街地再開発事業

区域面積 約1.7ha/2030年度着工予定

秋葉原で最も規模が大きく、最ももめている案件です。

外神田一丁目1・2・3番地区再開発準備組合が計画を進めており、2026年度に本組合を設立して事業計画の認可を目指し、2029年度に権利変換計画の認可を取得、2030年度の着工を予定しています。施行区域はJR秋葉原駅西側で、中央通りや神田川、JR総武線に囲まれた三角地帯の約1.7haです。A街区は高さ約170m、B街区は高さ約50mで、2030年代の竣工予定です。神田川と総武線と中央通りに挟まれた三角形地帯の再開発で、秋葉原駅周辺では最も高い超高層オフィスビルが計画されています。呼び方は「外神田一丁目地区」「外神田一丁目1・2・3番地区第一種市街地再開発事業」「外神田一丁目南部地区」と複数あります。事業の位置づけとしては、秋葉原駅に近接し、2002年の都市再生緊急整備地域指定を契機に都市機能の更新が推進されてきたエリアであること、南側の神田川沿いには江戸時代の筋違見付、明治期の旧万世橋駅を中心とした賑わいの歴史があることが挙げられています。千代田区都市計画マスタープランでは、万世橋の歴史性や電気街・サブカルチャーのまちとしての文化、次世代の先端性、高質なアメニティを感じられるまちづくりを進めることが位置づけられています。 Kensetsunews + 3

ただし合意形成は難航しています。計画地は約1万9,000㎡で、中央通り沿いにはラオックス秋葉原本店、エディオンAKIBA、オノデン本館といった家電量販店のビルが建ち並び、周辺に雑居ビルも点在。検討開始は2003年12月で、20年以上にわたり地権者らとの議論が続いています。千代田区は2021年春から都市計画決定に向けて本格的に説明を進めていますが、「秋葉原らしさ」がなくなることへの懸念などから反対する地権者も多く、事業主体となる再開発組合の設立に必要な権利者の3分の2の同意が得られていない状況です。背景には、秋葉原にバス停が設置されていないため観光バスが中央通りで路上駐車している、神田川沿いの千代田清掃事務所の駐車場が不足しているといった実務的な課題もあります。 WikipediaWikipedia

**「3分の2の同意」**という数字が、市街地再開発事業のリアルです。⑩飯田橋駅東地区は権利変換で止まり、ここは組合設立の手前で止まっている。制度としての再開発が、どの段階で誰の同意を要求するのかがよく分かる例です。

④⑤ 秋葉原の他の動き

秋葉原駅前東地区第一種市街地再開発事業では、土地の集約化による街区再編整備を行い、交通結節点である秋葉原駅前にふさわしい高度利用と都市機能の更新を図り、業務・商業・居住・サービス等の多様な機能の集積と、安全で快適な歩行者ネットワークの創出および回遊性の向上により駅前の拠点となる複合市街地の実現を目指します。地域の玄関口として駅前空間に不足した滞留空間を補うため、賑わいを創出するとともに防災機能を備えたオープンスペースを整備し、バリアフリーに配慮した動線計画により駅へのアクセス性を向上させ、駅前の賑わいを東側に連続させる拠点を形成するとしています。 Tokyo Metropolitan Government

すでに完成した事例もあります。神田練塀町地区第一種市街地再開発事業は、旧耐震の密集市街地(約0.5ha)を高さ約112mの免震構造複合ビルへ更新し、約370㎡の公共広場・帰宅困難者一時滞在スペース・防災設備を整備して秋葉原駅前の防災拠点を確立。総事業費は約233億円でした。2025年公示地価では秋葉原周辺が前年比+14.96%の374万円/㎡を記録しています。 ina-media

⑥⑦ 面としての台東区

台東区の再開発は、単独エリアの点的な整備ではなく複数の拠点が連携する面的な都市更新として進められています。上野駅周辺では東上野四・五丁目地区を中心に約6.9haの大規模再開発が始動。浅草地区では2026年3月に「浅草未来図案(まちづくりビジョン)」が策定され、概ね20年後の将来像として浅草駅周辺の交通結節機能の強化や六区ブロードウェイ周辺の回遊拠点化など観光地としての質的転換を目指しています。さらに御徒町駅周辺地区や秋葉原地区でも再開発の検討が進み、台東区全体がひとつの大きな都市更新の波の中にあるといえます。 Office-check


まとめ:上野・秋葉原の10年後

事業規模完成時期
東上野四丁目A-1地区約1.0ha(地区全体6.9ha)2030年代半ば
外神田一丁目南部地区約1.7ha/170m・50m2030年代
秋葉原駅前東地区検討中未定
神田練塀町地区約0.5ha/112m竣工済
上野駅周辺 基盤整備2027年度に方向性

このエリアで起きているのは、「街の個性」と「更新の必要性」が正面からぶつかるという事態です。

再開発により外神田一丁目を中心に地価が大幅に上昇し、個人経営の小規模な専門店はテナント料の上昇に対応できず撤退を余儀なくされるケースも増えています。代わりにチェーン店やカフェ、海外資本の企業が進出し、秋葉原の「独特さ」が薄れることへの懸念も挙がっている。一方で、バリアフリー化された歩道、大型の商業施設やホテルの誘致、多言語対応の観光案内所など、街の安全性や利便性が向上しているのも事実です。 Akihabara Trend Lab

この両論は、どちらも正しいのだと思います。旧耐震の雑居ビルが緊急輸送道路に面して並んでいる状態は、防災上は明確なリスクです。同時に、そのビルの区分所有区画にジャンクパーツ屋や小さな専門店が入っていることが、秋葉原を秋葉原にしてきたのも事実です。

検討開始から20年以上経っても3分の2の同意が集まらないという事実は、単に権利者が頑固だという話ではなく、再開発という制度が「床の価値」でしか補償を設計できないことの限界を示しているのだと思います。床は権利変換で置き換えられても、家賃の安さは置き換えられない。 Wikipedia

上野の東側と、秋葉原の三角地帯。この2つがどんな形で決着するかは、2030年代の東京を考えるうえでかなり重要な事例になるはずです。

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