【東京再開発マップ ⑬】城東

都市・再開発

― 駅前1棟で街が変わる。等身大の再開発

建設中 計画・準備組合 竣工済

第13回は城東。錦糸町・北千住・曳舟・押上を中心に、指定エリアに含まれない城北(赤羽・十条)もあわせて扱います。

①〜⑫のような300m級のプロジェクトはここにはありません。最大でも123m。でもこのスケールの再開発こそ、日本の大半の街で実際に起きていることです。駅前の雑居ビル群を1棟にまとめ、低層に商業と公共施設、上層に住宅を積む。この定型がどう機能しているかを見るのに、城東は最適なエリアです。


① 北千住駅前地区第一種市街地再開発事業

約0.6ha/地上29階・高さ約123m/2031年度完了予定

城東で最も具体化が進んでいる案件です。

東京都足立区は2026年6月15日、「北千住駅前地区第一種市街地再開発事業」と関連する地区計画の変更を都市計画決定しました。新設される建物はRC一部S造地下1階地上29階建て、延べ約44,900㎡。高さの限度は130mで、施設は約123mとなる見込みです。1〜4階は商業・子育て支援施設、5〜9階は宿泊施設、10〜29階は住宅とし、住戸数は250〜300戸。地下には駐車場(130〜140台)などを設けます。駅東西の連続性や地域の防災性向上を目的に、北千住駅と接続する歩行者デッキや昇降機も整備。駅東口周辺の安全性・回遊性・快適性の向上のため、約640㎡の広場や歩道上空地も設けます。事業協力者として三井不動産レジデンシャル、トーショー・ホールディングス、大成建設が参画しています。2025年10月時点での見通しでは、2026年度下期の再開発組合設立、2027年度の権利変換計画認可、2028年度の解体・新築工事着手、2031年度の工事完了を目指しています。

計画は途中で修正されました。北千住駅前地区市街地再開発準備組合は、区など関係機関との協議を踏まえて計画を修正。施設は南北方向に約60mの規模になる予定でしたが、駅側への圧迫感を軽減するため約45mに変更されています。

「駅側への圧迫感」を理由に建物を15m縮める。①〜⑫の大規模案件では容積を最大化する方向でしか話が進まなかったのに対し、こういう調整が入るのが中規模再開発の特徴です。

低層部の設計も具体的です。対象エリアは北千住駅東口を出てすぐの駅前広場周辺から学園通りにかけての約0.6ヘクタールで、老朽化した木造密集住宅や細分化された小規模店舗が混在していた敷地を集約するものです。南側に整備される広場では可動式ベンチやかまどベンチ等の設置が検討され、近隣の交通広場や東京電機大学と連続した街路樹も整備。東側の学園西通り沿いには路面店舗を配置して既存商店街との調和や賑わいの連続性を形成し、店舗前に可動式ベンチ等を設置して滞在できる空間にする計画です。

かまどベンチ(災害時に炊き出しができるベンチ)という細部に、この規模の再開発が何を求められているかが出ています。超高層タワーの足元の巨大アトリウムではなく、商店街と連続する路面店と、座れるベンチ。

北千住駅は5路線が乗り入れる都内屈指のターミナルで、西口にはルミネやマルイがある一方、東口(通称・電大口)は東京電機大学のキャンパス開設以降、下町情緒と学生街の活気が同居する独自の空気感を育んできました。

②③ 錦糸町 ― 駅前ビルの世代交代

錦糸町では駅前の主要ビルが順次更新されています。(仮称)楽天地ビル建替計画(A棟)は用途が店舗・ホテル、地上14階/地下1階、延床面積約24,000㎡。(仮称)錦糸町駅前ビル計画は用途が店舗・オフィス、地上10階、延床面積約15,000㎡です。

錦糸町の再開発の歴史は長く、1975年の「東京都長期計画」において錦糸町は隣接する亀戸と一体的に江東の副都心として位置づけられました。錦糸町駅南口地区では墨田区・丸井共同ビルの建設により1983年にすみだ産業会館がオープン。その後、錦糸町駅北口地区第一種市街地再開発事業により駅北口に駅前広場が整備され、1997年に商業・業務、文化施設等が集積するアルカタワーズ錦糸町、すみだトリフォニーホールがオープンしました。2003年には東京メトロ半蔵門線が延伸し錦糸町駅・押上駅が開業、2006年には錦糸公園北側の旧精工舎工場跡地に商業業務施設オリナスがオープンしています。

副都心指定から50年。⑧新宿や⑨池袋と同じ「副都心」というカテゴリーでも、錦糸町の再開発は駅前ビル単位で進んできました。いま起きているのは、その第一世代(1980〜90年代)の建て替えです。

なお墨田区の資料では課題も示されています。錦糸町駅周辺は墨田区および東京東部の中心としてにぎわいを見せているものの、2006年と2016年の土地利用区分を比較すると、商業・工業用地が減少し住宅用地が増加しています。

副都心が住宅地化している。⑫湾岸と同じ現象が、より古い市街地でも起きているということです。

④ 東武曳舟駅前地区

2032年度竣工予定

墨田区の東武曳舟駅前で再開発の検討が始まりました。駅周辺には東京曳舟病院や墨田区の行政・公共施設、スーパーマーケットなどが建ち並びます。徒歩5分の距離には京成電鉄押上線の京成曳舟駅もあり、2013〜15年にかけて上下線が高架化され、周辺は昭和レトロブームが残る下町であると同時に、駅南側は2000年代後半以降に大規模な再開発が行われ、近年はいくつものタワーマンションが整備されてきました。2025年12月にはUR都市機構が駅前再開発の事業パートナーとなる民間事業者の募集を始めています。

URが公募でパートナーを探すという進め方は、地権者が多く民間だけでは組成しにくい地区でよく使われる手法です。城東ではこのパターンが増えています。

⑤⑥ 城北 ― 赤羽・十条

指定の15エリアには城北の区分がないので、ここで扱います。

赤羽一丁目第一地区は赤羽駅東口から徒歩2〜3分、「東本通り」という幹線道路の交差点角にあり、東側には「LaLaガーデン」というアーケード商店街があります。2024年時点では雑居ビルが建ち並び、飲食店やオフィスが入居。1970年築のものなど築古のビルが多く、建て替えの時期を迎えていました。計画中の建物は地上26階・地下1階建て、高さ約110m。2025年10月に除却整地工事着工、2026年10月に26階建タワーマンション建設工事着手、2029年6月に建物竣工の予定です。第二地区・第三地区でも準備組合設立届が提出されています。

ただしここでも建設費の壁が出ています。北区が発行する「赤羽PRESS」によれば、令和14年(2032年)9月の竣工を目指していた赤羽一丁目第一地区について、昨今の工事費高騰などを踏まえ現在は事業計画の再調整と工事期間の精査を行っているとのことです。

十条では「十条駅西口地区第一種市街地再開発事業」が約1.7ヘクタールを対象に行われています。計画では地区内に約540戸の住宅に加え、ショッピング施設や地下駐車場を備える高層ビルが建設されるほか、新たな駅前広場などが整備されます。

赤羽の地価も動いています。赤羽駅から徒歩5分ほどの住宅地である赤羽南一丁目の地価公示価格は、2021年の1㎡あたり約106万円から2026年には約164万円へと5年で1.5倍以上に上昇し、上昇率は年々加速して直近では前年比14.7%の伸びを記録しています。


まとめ:城東の10年後

事業規模完成時期
北千住駅前地区約0.6ha/123m・250〜300戸2031年度
楽天地ビル建替(錦糸町)14階/約24,000㎡2020年代後半
錦糸町駅前ビル10階/約15,000㎡2020年代後半
東武曳舟駅前地区2032年度
赤羽一丁目第一地区26階・110m2029年6月(再調整中)
十条駅西口地区約1.7ha/約540戸2020年代後半

城東の再開発を①〜⑫と並べて見ると、用途構成がほぼ同じであることに気づきます。低層に商業と子育て支援施設、中層にホテル、高層に住宅。北千住も赤羽も十条も、この順序で積まれている。

これは怠慢ではなく、制度の帰結です。市街地再開発事業で容積を積むには公共貢献が要り、自治体が求めるのは保育所や子育て支援施設や広場。事業の採算を成立させるのは住宅の分譲収入。ホテルは中層の使いにくい階を埋める。結果として、日本中の駅前再開発が同じ断面になる。

一方で、城東には希望もあります。北千住の「圧迫感を軽減するため約45mに縮小」という判断や、かまどベンチと路面店で商店街につなぐ設計は、都心の巨大案件では出てこない配慮です。街の規模が小さいぶん、住民の声が計画に届いている。

そして共通の課題も見えます。赤羽一丁目第一地区の事業計画再調整は、③帝国ホテル、④六本木五丁目西地区、⑧新宿西南口と同じ建設費高騰が原因です。都心の巨大再開発が遅れているのと同じ理由で、駅前の110mも止まりかけている。この問題は規模を問わないということです。

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