有楽町駅前の約1万㎡が、2026年夏に更地になりました。有楽町ビル・新有楽町ビルの跡地です。
地図:OpenStreetMap/位置は概略です。駅出入口・減築部分の位置は推定を含みます。
普通の再開発なら、ここで仮囲いを立てて数年間封鎖し、次の超高層を建てます。ところが三菱地所が選んだのは違う道でした。「数年だけ使う施設を、わざわざ本気で建てる」という判断です。それが2026年9月1日に着工した「YURAKUCHO PARK」です。
しかもこの施設、最初から「数年後に解体せず、別の場所へ移設する」前提で設計されています。CLTの接合部をすべて脱着可能にする金具まで新規開発しました。
この記事では、有楽町ビル建替計画の全体の流れと、その「つなぎ期間」に何ができるのかを整理します。
全体の流れ
このプロジェクトは2段階になっています。ここが理解の最大のポイントです。
| フェーズ | 内容 | 時期 |
|---|---|---|
| 第1段階 | 有楽町ビル・新有楽町ビルの解体 | 2024年12月〜2026年8月 |
| 第2段階(暫定利用) | YURAKUCHO PARK の建設・運営 | 2026年9月着工〜2027年開業〜数年間 |
| 第3段階(本命) | 有楽町ビル・新有楽町ビル建替計画(超高層) | 時期未定 |
つまりYURAKUCHO PARKは本体の建替までの数年間だけ存在する施設です。三菱地所自身が、数年間の暫定利用期間だからこそ実現できる挑戦や価値創出を、将来の「有楽町ビル・新有楽町ビル建替計画」へと発展させていくと明言しています。
詳しい時系列はこうです。
| 時期 | できごと |
|---|---|
| 2021年7月 | 有楽町ビル・新有楽町ビルの建替計画着手を発表 |
| 2024年12月1日 | 解体工事着工(大成建設) |
| 2025年7月28日 | YURAKUCHO PARK構想を公表 |
| 2026年8月31日 | 地上部の解体工事完了 |
| 2026年9月1日 | YURAKUCHO PARK 新築工事着工 |
| 2027年 | YURAKUCHO PARK竣工・JAPA VALLEY TOKYO開業予定 |
| 数年後 | 施設を移設し、本体の建替計画へ |
では、まず解体された2棟とは何だったのか。
解体された有楽町ビル・新有楽町ビル
| 有楽町ビル | 新有楽町ビル | |
|---|---|---|
| 竣工 | 1966年 | 1967年 |
| 跡地面積 | 約3,551㎡ | 約7,233㎡ |
築55年前後での建て替えでした。三菱地所は建替理由として、テナントニーズの高度化、脱炭素社会の実現に向けた社会的要請への対応強化、災害時における事業継続性を意識した防災機能の強化などの機能更新を挙げています。
2棟の跡地を合わせた約1万㎡(1ヘクタール)が、YURAKUCHO PARKの舞台です。
そこに何ができるのか、完成イメージを見てみます。


上に見えているのが完成イメージです。注目すべきは高さです。
YURAKUCHO PARKの規模——たった「地上1階・約5m」
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 工事名称 | (仮称)YURAKUCHO PARK計画 新築工事 |
| 所在地 | 東京都千代田区有楽町一丁目 |
| 敷地面積 | 新有楽町ビル跡地 約7,233㎡ + 有楽町ビル跡地 約3,551㎡ |
| 構造・階数 | 木造(CLT造)・S造、地上1階 |
| 最高高さ | 約5m |
| 主要用途 | 店舗(飲食・物販)、イベントスペース |
| 建築・空間設計 | 三菱地所設計 |
| 施工 | 大成建設 |
| 着工 | 2026年9月1日 |
| 開業予定 | 2027年 |
有楽町駅前の1ヘクタールに、高さ5mの木造平屋。これがどれだけ異例かというと、周囲は100m超のオフィスビルに囲まれた場所です。都心の一等地の容積率を、あえて使わないという選択をしています。
コンセプトは3語で示されています。
- CHALLENGE:この場所、この期間だからこそ実現できる挑戦
- CULTURE:国内外の多様なカルチャーを集積・発信する舞台をつくる
- PARK:心が動き、出逢いが生まれる場をつくり、未来の礎を育む
三菱地所はこれまでTOKYO TORCHの「TOKYO TORCH Park」や丸の内仲通りの「Marunouchi Street Park」など、”PARK”を単なる緑地や広場ではなく、イベントや文化活動を通じて人々が関わり合う都市の舞台、都市体験の場と位置付けてきました。その系譜に連なる施設です。
中身:NOT A HOTELと「JAPA VALLEY TOKYO」
施設の中身を担うのがNOT A HOTEL株式会社です。
世界的な建築家やクリエイターが手がける唯一無二の建築を中心に、土地の魅力を味わうパーソナルなサービスを組み合わせた体験を届けているNOT A HOTELが企画・デザイン・プロデュースとして参画し、同社の新プロジェクト「JAPA VALLEY TOKYO」を共同展開する予定です。開業は2027年予定。
報道ベースでは、ファレル・ウィリアムス、NIGO®、KAWSといった国際的なクリエイターの関与が伝えられており、アート・商業・ホスピタリティが融合した複合空間になるとされています。
建築として何がすごいのか
ここが建築を学ぶ人間として一番面白い部分です。三菱地所設計は、この工事を「都心における前例のない設計・施工手法への挑戦」と位置づけ、4つの技術的特徴を挙げています。
① 地下躯体を活かした人工地盤
暫定利用期間を創出するため、まず有楽町ビル・新有楽町ビルの地上部を全面的に解体。その上で地下の既存躯体を活かした地盤を構築することで、その上部での建築物の建設を可能にしました。
これにより土砂の埋め戻しが不要になり、資源の削減にも寄与します。
普通なら地下も解体して埋め戻すか、地下を残して蓋をして放置するかの二択です。地下躯体をそのまま「人工地盤」として使い、その上に新しい建築を載せる——数年後にまた解体することが決まっている条件下で、最も合理的な解を選んでいます。
② 大丸有エリア初の大規模CLT建築
木造建築の主要構造にCLT(Cross Laminated Timber、直交集成板)を採用しています。しかも使い方が先駆的です。
一般的には壁などの「面的な構造材」に用いるCLTを、柱や梁のような「線的な構造材」として使う先駆的手法で、11棟の「アーチ門型架構棟」を整備します(令和8年度 CLT活用建築物等実証事業に採択)。
数字を押さえておきます。
- 国産スギ材を用いたCLT総使用材積 約480m³
- 延焼防止建築物の基準を満たすことで、都心の防火地域において100㎡超のCLT「あらわし」の建築物を実現
- 大手町・丸の内・有楽町エリアにおいて、この規模のCLT建築群の展開は初
「防火地域でCLTあらわし」がどれほど難しいかは、建築を学んでいれば分かるはずです。有楽町駅前という最も厳しい防火規制がかかる場所で、木を隠さずに見せる——延焼防止建築物の規定を使って突破しています。
施工体制では三菱地所ウッドビルドが木工事に参画し、MEC Industryの国産材資材も一部採用されています。


③ 移設を前提とした「サーキュラー建築」
このプロジェクトの核心がここです。
モックアップによる実験を経て、CLTによるアーチ門型架構を実現する新たな固定金具を開発・設計しました。この金具はCLTの全接合部の脱着を可能とし、有楽町での数年間の供用を経たのち、CLT架構と敷地内で育てた植栽の一部は移設が可能な仕様になっています。
三菱地所設計はこれを、建築材料の一方向的な消費ではなく、都市のあいだを木が循環する「サーキュラー建築」の実践と説明しています。そして一文がすべてを言い表しています——暫定利用だからこそ、「壊さず移す」ための設計に投資する、新たな都市開発のあり方の提示。
ここが本当に重要です。数年で撤去される施設は、普通なら「安く・仮設で」つくります。ところがこのプロジェクトは逆に、撤去を前提とするからこそ設計に投資している。金具を新規開発してモックアップ実験までやる暫定施設は、日本の都市開発でほぼ前例がありません。
植栽まで移設対象なのも見逃せません。敷地内で数年かけて育てた木を、次の場所へ連れて行くという発想です。
④ 「減築」でメトロ接続だけを残す
これも技術的に面白い判断です。
新有楽町ビル(地上14階・地下4階)は地上部を全面的に解体しましたが、東京メトロ有楽町駅D2出入口に接続する1スパンのみを、地下2階から地上2階まで切り出すかたちで存置しています。
大規模オフィスビルから、必要な機能を持つ1ブロックだけを構造的に独立させ、残りを撤去する「減築」という手法です。これにより地上部の解体完了後も地下鉄との接続機能を維持し、暫定利用期間中の来街者アクセスを確保しています。
14階建てのビルを解体しながら、駅につながる1スパンだけをタワー状に残す。構造的な自立をどう確保したのかは、かなり見ごたえのある解体計画です。現地に行くと、この「取り残された1ブロック」が実際に見られます。
全国12自治体との連携
もう一つの特徴が地域資源の活用です。
来街者に広く開かれた公共的な空間に、日本の地域が育ててきた物語のある素材・建材を採り入れ、世界の来街者に手触りや経年変化まで含めた「日本素材の本物の質」の体験を提供するとしています。具体的には、ベンチや植栽の一部などに12自治体の地域資源を活用します。
これはTOKYO TORCHで地方自治体と連携し日本各地の魅力を発信してきた取り組みの承継で、空間を構成する素材そのものから日本のものづくりを届けるという考え方です。
丸の内NEXTステージにおける位置づけ
なぜ有楽町でこんな実験ができるのか。三菱地所の全体戦略を見ると理由が分かります。
三菱地所は「丸の内NEXTステージ」として、丸の内エリアの両翼に位置する「常盤橋」と「有楽町」を重点開発エリアに位置付けています。
| 拠点 | プロジェクト | 性格 |
|---|---|---|
| 北の翼(常盤橋) | TOKYO TORCH/Torch Tower(385m・2028年度竣工予定) | 高さと規模でシンボルをつくる |
| 南の翼(有楽町) | YURAKUCHO PARK(5m・2027年開業予定) | 文化と実験で価値をつくる |
385mと5m。同じ会社が同時に進める両極端が、そのまま戦略の両輪になっています。
有楽町の再構築では、YURAKUCHO PARK(暫定利用)だけでなく、丸の内3-1プロジェクト(再開発)、新国際ビルのリニューアル(既存ビル更新)という3つの異なる手法を並行させているのも特徴です。
まとめ:この開発の読み方
- 2段階の計画——本命の超高層建替の前に、数年間の暫定利用フェーズを挟む
- 暫定施設なのに1ヘクタール・高さ5m・木造平屋という異例のボリューム設定
- 地下躯体を人工地盤に転用し、埋め戻しを省略
- 大丸有エリア初の大規模CLT建築、防火地域でCLTあらわしを実現
- 全接合部が脱着可能な金具を新規開発し、架構と植栽を数年後に移設
- 減築で駅接続の1スパンだけを残す高難度の解体計画
- NOT A HOTELの「JAPA VALLEY TOKYO」が2027年開業予定
一言でまとめるなら、「壊す前提の建築に、どこまで本気を出せるか」という実験です。都市の遊休期間をどう扱うかは世界中の都市が抱える課題で、そこに「移設可能な木造建築」という解を出してきたのがこのプロジェクトの意義だと思います。
2027年の開業後、数年してこのCLT架構がどこへ移設されるのか。そこまで追いかける価値のある建築です。
よくある質問
Q. YURAKUCHO PARKはいつ開業する?
2027年の開業予定です(2026年8月時点の発表)。新築工事は2026年9月1日に着工しました。
Q. YURAKUCHO PARKは何ができる施設?
店舗(飲食・物販)とイベントスペースです。NOT A HOTELが企画・プロデュースする「JAPA VALLEY TOKYO」が共同展開される予定です。
Q. 建物の規模は?
木造(CLT造)・S造の地上1階、最高高さ約5m。敷地は新有楽町ビル跡地約7,233㎡と有楽町ビル跡地約3,551㎡の合計約1万㎡です。
Q. 数年後はどうなる?
有楽町ビル・新有楽町ビル建替計画へと移行します。YURAKUCHO PARKのCLT架構と植栽の一部は、移設が可能な仕様で設計されています。
Q. 有楽町ビル・新有楽町ビルの解体はいつ終わった?
地上部の解体工事は2026年8月31日に完了しました。ただし新有楽町ビルのメトロ接続部分1スパンは存置されています。


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