TOFROM YAESU(トフロム ヤエス)とは?東京駅前に何ができたのか解説

都市・再開発

2026年9月10日、東京駅八重洲中央口の目の前に「TOFROM YAESU(トフロム ヤエス)」が開業しました。高さ約250mのタワーと10階建ての低層棟、2棟で構成される街区です。

このプロジェクト、実は構想開始から約25年かかっています。2000年の「東京駅前地区再生推進懇談会」から数えて26年目の完成。東京の再開発としても異例の長さです。

上の画像がTOFROM YAESU TOWER(B地区)、下がTOFROM YAESU THE FRONT(A地区)。この記事では、この2棟に「何ができたのか」をフロアごとに整理します。

2棟の基本スペック

地図:OpenStreetMap/位置は概略です。地下施設は地上の該当位置に表示しています。

TOFROM YAESU TOWER(B地区)TOFROM YAESU THE FRONT(A地区)
所在地中央区八重洲一丁目6・7・8・9番の一部中央区八重洲一丁目9番の一部
規模地上51階・地下4階地上10階・地下2階
高さ約250m(249.72m)約45m
敷地面積約10,600㎡約1,300㎡
延床面積約225,000㎡約12,000㎡
構造S造・RC造・SRC造・CFT造S造・RC造・SRC造
設計大林組一級建築士事務所大成建設一級建築士事務所
施工大林・大成建設共同企業体大成建設
竣工2026年2月28日2026年7月15日
主要用途事務所、医療施設、劇場・カンファレンス、バスターミナル、店舗、住宅等事務所、店舗、診療所等

事業名は「東京駅前八重洲一丁目東地区第一種市街地再開発事業(A地区・B地区)」。東京建物が再開発組合の一員として参画した国家戦略特区の事業です。

名称の意味:「TO」と「FROM」

「TOFROM」は英語の「TO」と「FROM」を組み合わせた造語です。日本中、ひいては世界中のヒト・モノ・コトがここに集まってつながり、ここから多様な価値が生み出され発信されていく場所になってほしい、という思いが込められています。

ロゴは結び目がモチーフ。シンボルマークの3本の結び目は八重洲の「Y」を表し、世界中の「ヒト」「モノ」「コト」の3つが交じりあう存在という意味が込められています。

東京駅という日本最大のターミナルの真正面という立地を、そのまま名前にした施設だと言えます。

何ができたのか——TOWERのフロア構成

51階建ての中身を上から見ていきます。

施設
41FYAESU SKY LOUNGE/EXEVIA TOKYO YAESU
中高層階オフィス(14〜19階に東京建物本社が移転)
13Fウェルビーイングフロア「Wab.(ワボ)」
10FEXEVIA TOKYO YAESU
6・7F日本医科大学八重洲健診ステーション
3〜6F劇場・カンファレンス施設
1〜2F商業施設、屋内広場「檜物町スクエア」
地下バスターミナル東京八重洲 第2期エリア

順に見ます。

① 商業「TOFROM YAESU Shop & Restaurant」:68店舗

商業ゾーンの規模は約6,000㎡・68店舗予定で、2026年9月10日の開業時点では55店舗がオープンしました。

コンセプトは「東京ならでは」の発信。江戸から続く八重洲の多様な食文化を継承しつつ、個性豊かな飲食店舗を中心に構成されています。1階・2階には路面店のように店舗が連なり、八重洲の街歩きを楽しくする空間が整備されました。

TOWER1階には屋内広場「檜物町スクエア(ひものちょうスクエア)」が整備されています。「檜物町」はこの一帯の旧町名で、地名の記憶を広場の名前に残した形です。

THE FRONTの地下エントランスゲートは八重洲地下街(ヤエチカ)に直結しています。

「TOFROM YAESU TOWER」檜物町スクエアのイメージ。 [画像ギャラリー 11/13] - ステージナタリー
東京駅直結の大規模複合ビル「TOFROM YAESU TOWER」が竣工 地上51階・地下4階の再開発事業 | AMP[アンプ] - 人生の ...
施設 - TOFROM YAESU

屋内広場「檜物町スクエア」の様子です。続いて、この施設の大きな特徴である劇場を見ます。

② 劇場・カンファレンス施設(3〜6階):東京駅前初の段床型劇場

ぴあ株式会社と株式会社コングレが運営する劇場・カンファレンス施設が3〜6階に入りました。

  • 約800名収容の段床型劇場(東京駅前初)
  • 大型の展示会・講演会等を実施可能な平土間ホール
  • 各種会議・交流イベント用の会議室

演劇・ミュージカル・音楽ライブ等の催事を誘致し、東京駅周辺エリアで不足していたエンタテインメントを通じた文化発信拠点を整備するとともに、MICE(国際会議、展示会・イベント、講演会、セミナー等)の誘致にも取り組むとされています。

「東京駅前初の段床型劇場」という表現がポイントです。東京駅周辺は日本最大のビジネス街でありながら、劇場空間が決定的に不足していました。ちなみに隣のYAESU CORE(2029年竣工予定)にも阪急・梅田芸術劇場の約1,300席の劇場が入るので、八重洲は数年で「劇場街」に変わります

③ 医療「日本医科大学八重洲健診ステーション」(6・7階)

6・7階に入るのが健診施設です。ここも内容が本格的です。

  • FDG-PETによるがんの早期発見
  • βアミロイドPETによるアルツハイマー病診断
  • 日本医科大学付属病院(文京区)との連携による高度医療サービス
  • 外国語対応、災害時の医療連携
  • レディース健診部門

オフィスビルの低層部にPET検査室が入るのは珍しく、駅前立地を活かした「通いやすい高度健診」という発想です。

④ ウェルビーイングフロア「Wab.(ワボ)」(13階)

このプロジェクトで東京建物が最も力を入れているのがウェルビーイング施策です。13階のフロア全体が入居企業のワーカー向け共用スペースになっています。

主な内容はこうです。

  • 食堂・カフェ&バー・ビュッフェカウンター
  • サードプレイスとしてのラウンジ空間
  • イベントキッチン、イベントスペース
  • 緑化・アート・お茶に特化した会議室
  • 脳科学で実証された音楽と映像による刺激で集中・リラックスできる個室ブース
  • パウダールーム、搾乳室を備えたトイレ
  • 季節感を感じられるエレベーターホール

メインエリアのデザイナーには株式会社FLOOATが起用されています。

東京建物は独自に「ウェルビーイングスコア」という測定ツールを開発し、20個の「ウェルビーイング向上因子」を特定した上で、それを満たす機能を実装したと説明しています。予防医学研究者・石川善樹氏の監修で首都圏のビジネスパーソン1万人に調査を行った成果です。

「なんとなく快適」ではなく指標をつくってから設計している点が、このオフィスの特徴です。

⑤ 「YAESU SKY LOUNGE」(41階):地上190mで温泉ミスト

41階のリフレッシュ空間がこの建物の名物になりそうです。

東京湾を一望でき、地上約190mながら多彩な緑に囲まれた空間で、中でも個室空間「RE:TREAT Room(リトリートルーム)powered by Upmind」が異色です。

  • 全国の源泉を凝縮抽出・モバイル化するクラフト温泉の特許技術(株式会社LeFuro)と協業
  • 温泉ミストによる湯治体験ができる「喫泉室」として利用可能
  • 国内最大のマインドフルネスアプリUpmind監修の瞑想・仮眠プログラム
  • 健康的なメニューを提供するカフェテリア

地上190mのオフィスで温泉に当たるという発想は、他のオフィスビルでまず見ません。

⑥ フレキシブルオフィス「EXEVIA TOKYO YAESU」(10・41階)

東京建物グループのエキスパートオフィスが運営するハイグレードフレキシブルオフィスが10階と41階に入ります。1名〜90名程度まで対応し、短期利用も可能。ラウンジ、会議室、コワーキングスペース、個室ブースを備え、TOWERのオフィス共用施設としても機能します。

⑦ バスターミナル東京八重洲 第2期エリア(地下)

TOWERの地下には、UR都市機構が一体で整備する「バスターミナル東京八重洲」の第2期エリアが整備されました。2026年3月20日に開業し、第1期と合わせて13バースに拡大しています。運営は京王電鉄バス。

重要なのはここです——開業時には、現在路上で発着している移行対象の高速バスはすべてこのバスターミナルに移行します。八重洲の路上に並んでいた高速バス乗り場が、地下に集約されたわけです。

ヤエチカ(八重洲地下街)から同じフロアで乗り場までアクセスでき、旅行者向けインフォメーション施設も併設されています。

第3期(YAESU CORE、2029年度予定)が加わると、3エリア合計で20バースの国内最大級となります。

⑧ THE FRONT屋上「Rooftop Terrace」

A地区のTHE FRONT屋上階には「Rooftop Terrace」が整備されました。東京駅のパノラマビューが眼下に広がるオープンエアの空間で、リフレッシュやアフターワークのコミュニケーション促進の場としての利用が想定されています。

45mという高さは、東京駅の赤レンガ駅舎とドームを見下ろしすぎない絶妙な視点です。ここは丸の内3-1プロジェクトの「31mの屋上テラス」と同じ発想で、超高層の頂部より低層部の屋上の方が街との関係が濃いという設計判断が読み取れます。

25年の歩み

このプロジェクトの時間軸を見ておきます。

できごと
2000年東京駅前地区再生推進懇談会
2001年日本橋東京駅前地区協議会
2003年八重洲一丁目地区協議会ワーキング
2005年八重洲一丁目地区まちづくり勉強会
2007年八重洲一丁目地区地元再生研究委員会
2008年市街地再開発準備組合設立
2015年都市計画決定
2019年B地区 組合設立認可
2020年B地区 権利変換計画認可/既存建物解体着手
2021年10月B地区 着工
2022年A地区 組合設立認可
2023年A地区 権利変換計画認可
2024年A地区 着工
2026年2月28日TOWER 竣工
2026年3月20日バスターミナル第2期エリア開業
2026年7月15日THE FRONT 竣工
2026年9月10日街区開業

懇談会から着工まで21年、そこから開業まで5年。準備組合設立(2008年)から18年です。第一種市街地再開発事業は権利者の合意形成に時間がかかりますが、その実例としてこの年表はかなり参考になります。

エリア戦略:YNKの玄関口

東京建物はこの立地を「YNKエリア」の玄関口と位置づけています。YNKは八重洲(Yaesu)・日本橋(Nihonbashi)・京橋(Kyobashi)の頭文字です。

このエリアで今後予定されている変化も押さえておくと、投資判断の文脈が見えてきます。

  • 首都高地下化をはじめとした日本橋川再生計画
  • Tokyo Sky Corridor計画(首都高の高架跡地の活用)
  • 羽田空港アクセス線による東京駅から羽田空港へのダイレクトアクセス化
  • つくばエクスプレス、都心部・臨海地域地下鉄構想の東京駅接続

つまりTOFROM YAESUは、東京駅の交通結節機能がさらに強化される前提で建てられた建物です。

まとめ:TOFROM YAESUに何ができたか

  1. TOWER:地上51階・約250m・延床約225,000㎡(2026年2月竣工)
  2. THE FRONT:地上10階・約45m・延床約12,000㎡(2026年7月竣工)
  3. 商業68店舗(開業時55店舗)+屋内広場「檜物町スクエア」
  4. 東京駅前初の段床型劇場(約800席)+平土間ホール+カンファレンス
  5. PET検査対応の健診施設(日本医科大学八重洲健診ステーション)
  6. ウェルビーイングフロア「Wab.」(13階)とYAESU SKY LOUNGE(41階・温泉ミスト)
  7. バスターミナル東京八重洲 第2期で13バースに拡大、路上発着の高速バスを地下へ集約
  8. THE FRONT屋上に東京駅を見下ろすRooftop Terrace
  9. 東京駅前3地区再開発のうち2番目の完成、残るはYAESU CORE(2029年)

このプロジェクトの独自性は、オフィスの付加価値を「ウェルビーイング」という測定可能な指標で組み立てた点だと思います。温泉ミストや瞑想プログラムは一見ネタのようですが、その背後に1万人調査と20個の因子分析があるという構造です。同じ東京駅前でトーチタワーが「高さ」、YAESU COREが「用途の量」で勝負しているのに対し、TOFROM YAESUは「中で過ごす時間の質」で差別化しています。

開業したばかりなので、実際に41階まで上がって体験してみる価値があります。

よくある質問

Q. TOFROM YAESUはいつ開業した?
2026年9月10日に開業しました。TOWERは2026年2月28日竣工、THE FRONTは2026年7月15日竣工です。

Q. 場所はどこ?
東京都中央区八重洲一丁目。TOWERが6・7・8・9番の一部、THE FRONTが9番の一部です。東京駅八重洲中央口の正面で、地下ネットワークを通じて東京駅に直結しています。

Q. 高さと階数は?
TOWERが地上51階・地下4階、高さ約250m(249.72m)。THE FRONTが地上10階・地下2階、高さ約45mです。

Q. 商業施設は何店舗?
「TOFROM YAESU Shop & Restaurant」として約6,000㎡に68店舗が出店予定で、2026年9月10日の開業時点では55店舗がオープンしました。

Q. 展望施設はある?
一般向けの展望施設はありません。41階の「YAESU SKY LOUNGE」はオフィス入居企業のワーカー向け施設です。THE FRONT屋上の「Rooftop Terrace」から東京駅を望めます。

Q. 劇場の規模は?
約800名収容の段床型劇場です。ぴあとコングレが運営し、3〜6階に平土間ホールや会議室とあわせて整備されています。

出典

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