
三越前駅前、中央通り沿いの街区で解体工事が進んでいます。「日本橋室町一丁目地区第一種市街地再開発事業」です。
この事業、完成までのスケジュールを見ると驚きます。解体が2027年末まで、最初の棟の竣工が2032年3月末、最後の街区は2034年度以降。実に10年近くかかる計画です。
理由は明快で、この敷地の地下を、地下化される首都高のトンネルが通るからです。単なるビルの建て替えではなく、道路工事と一体で進む必要がある——そこがこの再開発の特殊性です。
事業の基本情報
地図:OpenStreetMap/位置は概略です。街区範囲・首都高地下化ルートは模式的に表示しています。正確な区域は内閣府・東京都の公表資料をご確認ください。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 事業名 | 日本橋室町一丁目地区第一種市街地再開発事業 |
| 所在地 | 東京都中央区日本橋室町一丁目 |
| 区域面積 | 約1.1ha |
| 施行者 | 日本橋室町一丁目地区市街地再開発組合 |
| 参加組合員 | 三井不動産 |
| 事業費 | 約1,585億円(2025年5月時点) |
| 位置づけ | 国家戦略特別区域の特定事業/日本橋リバーウォークの一角 |
都市計画決定が2019年10月、組合設立認可が2022年6月。場所は東京メトロ銀座線「三越前」駅前で、中央通りに面しています。
4つの街区に分かれている
この事業を理解する鍵は、A街区と、日本橋川沿いのB〜D街区に分かれていることです。
| 街区 | 位置 | 規模 | 中身 |
|---|---|---|---|
| A街区 | 中央通り側 | 地上34階・地下4階/高さ約173m | 店舗・ライフサイエンス産業支援施設・オフィス・住宅 |
| B街区 | 日本橋川沿い | 1〜3階建て | 店舗 |
| C街区 | 日本橋川沿い | 1〜3階建て | 倉庫・防災倉庫 |
| D街区 | 日本橋川沿い | 1〜3階建て | 倉庫・防災倉庫 |
配置の考え方は、この連載で見てきた日本橋川沿いの他事業とまったく同じです。川側は低く、通り側に高さを集約する。東京ミッドタウン日本橋も八重洲一丁目北地区も同じ断面をとっています。
川沿いに低層棟を置くのは、首都高地下化後に生まれる親水空間に建物が壁をつくらないようにするためです。
A街区に何ができるのか
超高層棟となるA街区のスペックはこうです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 階数 | 地上34階・塔屋2階・地下4階 |
| 高さ | 約173m(172.9m) |
| 敷地面積 | 約4,800㎡ |
| 延床面積 | 約116,100㎡ |
| 構造 | SRC造・RC造・S造 |
| 用途 | 事務所、住宅、店舗、駐車場等 |
縦の構成は低層=店舗+ライフサイエンス産業支援施設/中層=オフィス/高層=住宅という三層構造です。
注目したいのが2点あります。
① ライフサイエンス産業支援施設
日本橋は三井不動産が「ライフサイエンス」の拠点として長年育ててきたエリアです。この施設はその戦略の延長線上にあります。単なるテナントビルではなく、産業クラスターを厚くするための機能が組み込まれています。
② 高層部の住宅は分譲
住宅は区分所有で総戸数約66戸。2LDK相当(約80〜100㎡)が8戸程度、3LDK相当(約100〜300㎡)が58戸程度という構成が見込まれています。300㎡の3LDKという規格からして、明確にラグジュアリー層向けです。
また、敷地内にあった「むろまち小路」は再開発で一度閉鎖されましたが、貫通通路として生まれ変わる計画になっています。路地の記憶を動線として残す形です。
デザイン面では、日本橋地区の街並み景観ガイドラインに沿って下層階を百尺(31m)ラインに揃える計画とされています。丸の内3-1プロジェクトと同じ手法が、日本橋でも使われているわけです。
首都高が撤去された後のこの一帯の姿がこちらです。



どんな工事が行われるのか
ここがこの記事の本題です。工事の進み方が非常に特殊です。
ステップ1:解体工事(2025年12月〜2027年12月)
まず既存建物の解体です。大林組の施工で、2025年12月1日から2027年12月31日までの工期が予定されています。約2年かけての解体です。
ステップ2:A街区の建設(2026年8月末着工〜2032年3月末竣工)
超高層棟の着工は2026年8月末の予定。竣工は2032年3月末です。着工から竣工まで5年半かかります。
一般的な超高層ビルが3〜4年程度であることを考えると長めですが、地下4階まで掘る工事に加え、隣接する首都高の工事との調整があるためと考えられます。
ステップ3:B〜D街区の建設(2032年度以降)
日本橋川沿いのB〜D街区は、A街区の竣工後に着工します。
- B街区:2033年度竣工予定
- C街区・D街区:2034年度以降竣工予定
なぜ後回しなのか。その地下を首都高が通るからです。
最大のポイント:敷地の地下を首都高が通過する
この事業の最も特徴的な点がこれです。
首都高の日本橋区間地下化にあたり、C街区の一部とD街区の地下が地下化ルートになっています。しかも敷地の浅い場所をトンネルが通る計画です。
つまりこの街区は、
- 建物を解体して敷地を空ける
- その地下に首都高のトンネルを通す工事が入る
- トンネルの上に低層の建物を建てる
という順序を踏む必要があります。再開発事業が道路事業に工事のタイミングを合わせているわけです。B〜D街区の竣工が2034年度以降とされているのは、首都高の工事スケジュールに依存しているためです。
さらにこの事業には、日本橋川沿いの新たな親水空間の創出という役割も与えられています。首都高地下化への協力と、水辺空間・歩行者動線の整備。それが日本橋リバーウォークという枠組みにおけるこの事業の担当分です。
日本橋リバーウォークの中での位置づけ
この事業は単独ではなく、5つの再開発と首都高地下化事業が連携する枠組みの一員です。
| 事業 | 状況 |
|---|---|
| 日本橋一丁目中地区(東京ミッドタウン日本橋) | 2026年9月竣工・2027年秋開業 |
| 八重洲一丁目北地区 | 2029年度/2032年度竣工予定 |
| 日本橋室町一丁目地区 | 2032年3月末〜2034年度以降 |
| 日本橋一丁目東地区 | 計画中 |
| 日本橋一丁目1・2番地区 | 計画中 |
川幅を含め幅約100m・長さ1,200mにおよぶ親水空間と川沿い歩行者ネットワークをつくるのが全体の目標です。2025年春には一般社団法人日本橋リバーウォークエリアマネジメントが設立され、プレゼンテーション拠点「VISTA」も開設されています。
この事業は、その中で最も北側(三越前寄り)を担当する一角という位置づけです。
まとめ
- 中央通り側のA街区に地上34階・高さ約173mの超高層棟
- 低層=店舗+ライフサイエンス産業支援施設、中層=オフィス、高層=分譲住宅約66戸
- 日本橋川沿いのB〜D街区は1〜3階建ての低層で、水辺に開く
- 解体は2025年12月〜2027年12月(大林組)
- A街区は2026年8月末着工・2032年3月末竣工
- C・D街区の地下を首都高のトンネルが通るため、これらは2034年度以降
- 「むろまち小路」は貫通通路として再生、下層部は百尺ラインに揃える
完成が2034年度以降という、このシリーズで扱ったなかで最も長期のプロジェクトです。逆に言えば、いま現地で見られる解体工事の光景は、これから10年近く続く変化の「第1章」にすぎません。
三越前駅前という人通りの多い場所なので、定点観測の対象としては最適です。
よくある質問
Q. いつ完成する?
A街区(高さ約173m)が2032年3月末竣工予定、B街区が2033年度、C・D街区が2034年度以降の予定です。
Q. 高さと階数は?
A街区が地上34階・塔屋2階・地下4階で高さ約173m、延床面積約116,100㎡です。B〜D街区は1〜3階建ての低層棟です。
Q. 何ができる?
A街区は低層部に店舗とライフサイエンス産業支援施設、中層部にオフィス、高層部に分譲住宅(約66戸)が入ります。B街区は店舗、C・D街区は倉庫・防災倉庫の計画です。
Q. なぜ工期がこんなに長い?
C街区の一部とD街区の地下を、地下化される首都高のトンネルが通るためです。道路工事との調整が必要で、川沿いの街区はA街区の竣工後に着工します。
Q. 事業主体は?
日本橋室町一丁目地区市街地再開発組合で、三井不動産が参加組合員として参画しています。


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