2019年11月、渋谷駅の真上に高さ約230mの渋谷スクランブルスクエア東棟が開業しました。屋上展望施設「SHIBUYA SKY」は、今や渋谷を代表する観光地です。
その隣で進んでいるのが第Ⅱ期(中央棟・西棟)。2025年5月に着工し、2031年度の完成を目指しています。
ところが第Ⅱ期は、第Ⅰ期とはまったく性格の違う建物です。高さは約61mと約76m。東棟の3分の1にも満たない。その代わり、駅と広場と歩行者動線を作り直すことに重点が置かれています。
この記事では、第Ⅰ期とどう違うのか、どこに何ができるのかを整理します。
第Ⅰ期と第Ⅱ期の比較
地図:OpenStreetMap/位置・範囲は概略です。各棟・パビリオン・広場・デッキの位置は公表資料をもとにした模式表示です。情報は2026年9月時点。
| 第Ⅰ期(東棟) | 第Ⅱ期(中央棟) | 第Ⅱ期(西棟) | |
|---|---|---|---|
| 状況 | 2019年11月1日 開業済み | 2031年度 完成予定 | 2031年度 完成予定 |
| 階数 | 地上47階・地下7階 | 地上10階・地下2階 | 地上13階・地下4階 |
| 高さ | 約230m | 約61m | 約76m |
| 延床面積 | 約181,000㎡ | 中央棟・西棟あわせて約95,000㎡ | 〃 |
| 主な用途 | 事務所、店舗、展望施設(SHIBUYA SKY) | 店舗、駐車場等 | 店舗、駐車場等 |
| 位置 | 渋谷駅の東側 | JR渋谷駅の直上 | 旧東急百貨店東横店の跡地周辺 |
事業主体は3期とも東急・JR東日本・東京メトロの3社。全体完成時の延床は約276,000㎡になります。
第Ⅰ期と第Ⅱ期の違いを一言で言えば、こうです。
- 第Ⅰ期=縦に高く積む(オフィス・展望台)
- 第Ⅱ期=横に広げてつなぐ(商業・広場・動線)
第Ⅱ期はオフィスを持たず、用途は店舗と駐車場等。高層ビルではなく、駅と一体の低層商業施設です。
完成後の駅前の姿がこちらです。



なぜ第Ⅱ期は低いのか
東棟が230mなのに、中央棟は61m。この差には明確な理由があります。
中央棟はJR渋谷駅の直上に建ちます。営業中の駅の上で工事をするため、建物の重さにも工法にも制約があります。
加えて渋谷駅は、事業者自身が説明するようにJR山手線・埼京線と東京メトロ銀座線が立体交差し、さらに建物とホームが一体の構造物になっているという極めて複雑な構造です。
西棟は旧東急百貨店東横店の跡地周辺。2020年3月31日に閉店した東横店の西館・南館を解体した場所です。
つまり第Ⅱ期の敷地は、駅の真上と、駅に接する百貨店跡。高く積むより、駅と街をつなぐ役割が優先される場所なのです。
どこに何ができるのか
ここからが本題です。第Ⅱ期で生まれるものを、場所ごとに整理します。
①中央棟・西棟:首都圏最大級の商業フロア
第Ⅱ期の建物の主役は商業施設です。
完成済みの東棟と併せて、1フロアあたりの売場面積が最大約6,000㎡となる首都圏最大級の商業施設になります。
東棟の商業フロアはタワーの足元にあるため、1フロアの面積に限りがありました。第Ⅱ期で中央棟・西棟と横につながることで、1フロアが一気に広がるわけです。
回遊性が向上し、多様な店舗・商品を選ぶ楽しさが増える——これが第Ⅰ期にはなかった価値です。
②中央棟10階屋上:SANAAの「10階パビリオン」
第Ⅱ期で最も注目される施設がこれです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名称 | 10階パビリオン(仮称) |
| 位置 | 中央棟の10階屋上 |
| 内容 | 各国大使館などと連携したグローバルな文化交流体験を提供 |
| 眺望 | 渋谷スクランブル交差点・大型ビジョン群と新宿方面の街並みの両方を見渡す |
| デザイン | SANAA(プリツカー賞受賞) |
| 完成 | 2031年度 |
東棟のSHIBUYA SKY(地上約230m)が「渋谷を上から見下ろす」場所だとすれば、10階パビリオン(約61m)は「スクランブル交差点を近くから眺める」場所です。
高さが違うから、見える景色も違う。第Ⅱ期が低いことを、むしろ価値に変えています。
③中央棟4階:隈研吾の「4階パビリオン」
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名称 | 4階パビリオン(仮称) |
| 位置 | 中央棟4階/JR山手線・埼京線のすぐ上 |
| 内容 | 最先端技術を活用したコンテンツを体感できる施設 |
| 眺望 | 渋谷スクランブル交差点を至近で見渡せる |
| デザイン | 隈研吾建築都市設計事務所(東棟のデザインにも関与) |
| 完成 | 2033年度 |
線路の上に文化施設を作る——渋谷駅の上空という立地を最大限に活かす計画です。
つまり第Ⅱ期には、SANAAと隈研吾という2人の建築家による2つのパビリオンが、4階と10階に重なって作られます。
④西棟前面:内藤廣の「西口3階上空施設」
西棟の西側には、約3,000㎡の歩行者デッキが整備されます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名称 | 西口3階上空施設(仮称) |
| 規模 | 約3,000㎡ |
| つなぐもの | JR・銀座線の3階改札と渋谷中央街方面・桜丘方面、西棟 |
| デザイン | 内藤廣建築設計事務所 |
| 一部概成 | 2030年度 |
現在、西口はバスターミナルと道路で分断されています。そこに3階レベルの広いデッキが架かることで、駅から道玄坂側へ地上に降りずに行けるようになります。
つまり第Ⅱ期では、SANAA・隈研吾・内藤廣という3人の建築家が、それぞれ別の場所を担当するという構成です。
歩行者空間と改札前のイメージがこちらです。



駅はどう変わるのか
第Ⅱ期は建物だけの計画ではありません。渋谷駅の改良と一体です。
東西を結ぶ幅20m超の自由通路
地上レベルでは、駅の東西を結ぶ自由通路が2本整備されます。
| 位置 | 最大幅員 |
|---|---|
| JRハチ公改札前 | 最大22m |
| JR南改札前 | 最大23m |
幅20mを超える通路です。渋谷駅の課題だった東西の分断と混雑を解消し、東側の宮益坂方面、西側の道玄坂方面へのアクセスが大きく向上します。
銀座線ホームの真上に「4階東口スカイウェイ」
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名称 | 4階東口スカイウェイ(仮称) |
| 位置 | 銀座線渋谷駅ホームの直上 |
| 機能 | 空中回廊として通行可能、中央棟に接続 |
| 眺望 | 渋谷駅東口エリア、新宿方面・恵比寿方面まで見渡せる |
| 概成 | 2030年度 |
事業者はこれを、東棟のSHIBUYA SKYとともに渋谷を代表するスポットになると位置づけています。
2〜4階レベルのデッキネットワーク
3階のJR線・銀座線コンコースの概成、4階東口スカイウェイ、西口3階上空施設。この3つがそろうことで、
渋谷駅を中心に東西南北をつなぐ、2〜4階レベルのデッキ階の歩行者ネットワーク
が誕生します。宮益坂上と道玄坂上をスムーズに移動できるようになる——谷底にある渋谷駅の地形を、デッキで越える計画です。
アーバン・コア
中央棟4階とハチ公広場をつなぐ縦動線として「アーバン・コア」が整備されます(2033年度)。
アーバン・コアとは、エレベーターやエスカレーターにより多層な都市基盤を上下に結び、地下やデッキから地上に人々を誘導する、まちに開かれた縦軸空間のこと。渋谷ヒカリエやスクランブルスクエア東棟でも採用されてきた、渋谷再開発の定番の手法です。
5つの広場
2034年度までに、計約20,000㎡の5つの広場が誕生します。
| 広場 | 位置 |
|---|---|
| ハチ公広場 | 地上・駅西側 |
| 東口地上広場 | 地上・駅東側 |
| 中央棟4階広場(JR線路上空)(仮称) | 4階・線路の真上 |
| 西口3階上空施設(仮称) | 3階・西棟の前面 |
| 中央棟10階広場(仮称) | 10階屋上 |
地上・3階・4階・10階と、4つの高さに広場が分散しているのが特徴です。
これらの広場は非常時の一時避難場所としての機能も持ちます。世界有数の大規模ターミナル駅の直近に、約2万㎡の避難空間が確保されるわけです。
なおハチ公広場の最終形状は、ハチ公像の位置も含めて関係者で検討中とされています。
スケジュール
事業者はこの期間を「まちびらき最終章」と呼んでいます。
| 時期 | できごと |
|---|---|
| 2019年11月1日 | 第Ⅰ期(東棟)開業 |
| 2020年3月31日 | 東急百貨店東横店 閉店 |
| 2025年5月19日 | 第Ⅱ期 起工式・着工 |
| 2030年度 | 渋谷駅の概成、自由通路、4階東口スカイウェイ、西口3階上空施設(一部)、デッキネットワーク誕生 |
| 2031年度 | 第Ⅱ期(中央棟・西棟)完成、10階パビリオン |
| 2033年度 | 4階パビリオン、アーバン・コア |
| 2034年度 | ハチ公広場などを含めた全体完成 |
当初は2027年度の完成を目指していました。
見直しの理由として、事業者は以下を挙げています。
- インバウンドを含めた来街者の増加による来街者ニーズの変化
- 歩行空間や広場空間に求められる機能の多様化
- 立体交差と一体構造という複雑な駅構造に伴う、度重なる施工計画の見直し
- 広場空間と歩行者動線の再編、防災性・安全性強化のための都市基盤施設の変更
営業中の駅の上空で行う工事であることや資材高騰も影響したと報じられています。
2010年頃から検討が始まった計画が、2034年度にようやく完結します。
まとめ:第Ⅰ期と第Ⅱ期の違い
- 第Ⅰ期(東棟):高さ約230m・47階、オフィスとSHIBUYA SKY。縦に高く積む建物
- 第Ⅱ期(中央棟・西棟):高さ約61m・約76m、店舗中心。横に広げてつなぐ建物
- 中央棟はJR渋谷駅の直上、西棟は旧東急百貨店東横店の跡地周辺
- 東棟と合わせて1フロア最大約6,000㎡の首都圏最大級の商業施設
- 10階パビリオン(SANAA):スクランブル交差点と新宿方面を見渡す文化交流施設
- 4階パビリオン(隈研吾):線路のすぐ上、先端技術の体感施設
- 西口3階上空施設(内藤廣):約3,000㎡のデッキ
- 幅22〜23mの自由通路、4階東口スカイウェイ、2〜4階のデッキネットワーク
- 地上・3階・4階・10階に計約20,000㎡の5つの広場
- 2030年度駅概成 → 2031年度第Ⅱ期完成 → 2034年度全体完成
第Ⅰ期は**「渋谷で一番高い場所」を作りました。第Ⅱ期は「渋谷で一番通りやすい場所」**を作ります。
渋谷駅は谷の底にあり、しかも線路と道路で四方が分断された駅でした。第Ⅱ期の本質は、その谷と分断を、デッキと広場とパビリオンで越えていくことにあります。
230mの東棟の隣に建つ61mの中央棟は、目立ちません。しかし渋谷の使い勝手を変えるのは、低い方の建物です。
よくある質問
Q. 渋谷スクランブルスクエア第Ⅱ期はいつ完成する?
中央棟・西棟は2031年度の完成予定です。駅と歩行者ネットワークの概成は2030年度、ハチ公広場などを含めた全体完成は2034年度の予定です。当初は2027年度の完成を目指していました。
Q. 第Ⅰ期との違いは?
第Ⅰ期(東棟)は高さ約230m・地上47階でオフィスと展望施設SHIBUYA SKYを持つ超高層ビルです。第Ⅱ期は中央棟が高さ約61m・地上10階、西棟が高さ約76m・地上13階で、用途は店舗・駐車場等が中心です。
Q. 中央棟と西棟はどこに建つ?
中央棟はJR渋谷駅の直上に、西棟は2020年3月末に閉店した東急百貨店東横店の跡地周辺に建設されます。
Q. SHIBUYA SKYのような展望施設はある?
中央棟の10階屋上に、SANAAデザインの「10階パビリオン(仮称)」が整備されます。渋谷スクランブル交差点と新宿方面の街並みの両方を見渡せる文化交流施設です。
Q. ハチ公像はどうなる?
ハチ公像の位置を含め、ハチ公広場の最終形状は関係者で検討中とされています。


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