品川駅高輪口の北西側。老朽化した建物が密集し、幅4m未満の狭い道や行き止まり道路が入り組んだ一帯があります。
そこで進むのが「高輪三丁目品川駅前地区第一種市街地再開発事業」——品川駅西口地区のC地区にあたる事業です。地上30階・高さ約155mの高層棟が計画されていますが、この事業の本当のテーマは「駅前の広場をどう作るか」にあります。
しかも広場は1か所ではありません。地上と上空(デッキレベル)の2層で作られます。この記事では、その仕組みを整理します。
事業の基本情報
地図:OpenStreetMap/位置・範囲は概略です。街区・広場・デッキの配置は公表資料をもとにした模式表示で、確定した区画ではありません。情報は2026年9月時点。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 事業名 | 高輪三丁目品川駅前地区第一種市街地再開発事業 |
| 通称 | 品川駅西口地区 C地区 |
| 所在地 | 東京都港区高輪三丁目 |
| 施行者 | 高輪三丁目品川駅前地区市街地再開発組合 |
| 事業協力者 | 三井不動産、野村不動産、東京建物、大成建設 |
| 面積 | 約2.2ha |
| 事業費 | 約1,445億円(144,478百万円) |
| 都市計画決定 | 2022年12月 |
| 組合設立認可 | 2024年2月20日 |
街区は2つに分かれています。
| 街区 | 規模 | 用途 |
|---|---|---|
| C-1街区 | 地上30階・地下2階/高さ約155m/延床約186,900㎡ | 事務所、住宅(約40戸)、店舗、MICE、産業支援施設 |
| C-2街区 | 地上1階/高さ約10m/延床約170㎡ | 集会場 |
約18万㎡の高層棟と、170㎡の集会場。桁が3つ違う2棟が同じ事業に含まれているのが特徴です。
完成イメージがこちらです。



なぜ広場が必要なのか
この地区が抱えていた課題は明快です。
| 課題 | 内容 |
|---|---|
| 建物 | 老朽化建物が大半を占め、防災上の課題 |
| 土地 | 低未利用地が多く、一部敷地が細分化 |
| 道路 | 4m未満の狭隘な道路や行き止まり道路 |
| 歩行者 | 安全で快適な歩行者環境が確保されていない |
| 回遊性 | 駅や周辺市街地との歩行者ネットワークが不足 |
品川駅に近接しているのに、細分化された敷地と狭い道のせいで土地が使われていなかったわけです。
一方で品川駅高輪口は、新幹線、在来線、空港アクセス、周辺ホテル利用など複数の人流が交わる場所。駅前の「受け止め機能」が求められていました。
つまりこの事業は、細分化された敷地を集約して、その分を広場と通路に還元するという構造になっています。
広場はどう作られるのか
ここが本題です。広場は3つのレベルで整備されます。
①地上部:交通結節機能と広場・緑地
地上部には地域交通を担う交通結節機能が配置されます。バスやタクシーなど、地域の足を受け止める機能です。
同時に地上部の広場・緑地が整備されます。
道路インフラも一体で更新されます。
| 公共施設 | 幅員 |
|---|---|
| 放射第19号線 | 幅員約21.6m(全幅員約43.25m) |
| 歩行者専用道路 | 幅員4.5〜10m |
| アクセス車路 | 幅員約8.0m |
4m未満だった道が、歩行者専用道路として4.5〜10mに広がる。これが最も実感できる変化です。
②デッキレベル:上空の広場空間
この事業の核心がここです。
品川駅西口地区の計画では、地上部に交通結節機能を配置し、上空の広場空間を含めて「重層的な西口駅前」を形成するとされています。
つまり、
- 地上 → 車とバスの空間
- 上空(デッキレベル) → 歩行者の広場空間
という階層による使い分けです。
さらに広域的な回遊性向上のため、放射第19号線上空から環状第4号線方向へのデッキレベルでの歩行者ネットワークが整備されます。
C地区の事業でもデッキレベルの広場が整備対象として挙げられており、地上の広場・緑地と合わせて2層の広場が生まれることになります。
③高層棟を「広場に面して」配置する
配置計画にも明確な意図があります。事業計画書にはこう書かれています。
隣接するA地区と連携した駅前空間となるよう、高層棟を広場に面して配置する——これにより駅前の顔づくりと憩いの場を創出するとされています。
またC-1街区では幹線街路や歩行者専用道路等の境界線から壁面を後退させるという壁面後退の制限が設けられています。
155mのビルを敷地いっぱいに建てず、広場側に面を向けて後退させる。この2つの操作で、駅前に開いた空間が確保されます。
品川駅西口地区全体の広場と歩行者ネットワークの構想がこちらです。

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緑のネットワーク:既存の地形を活かす
広場は「平らな空き地」として作られるわけではありません。この土地の地形が活かされます。
品川駅西口地区の計画では、既存の崖線・緑地、高輪公園、高輪森の公園等を活かした緑のネットワークを形成する方針が示されています。
品川駅西口は台地の縁にあたり、崖線(がいせん)と呼ばれる斜面が残っています。A地区の記事でも触れたとおり、この一帯は傾斜地です。
そこで、
- 既存の崖線と緑地を保全・活用
- 高輪公園・高輪森の公園とつなぐ
- 周辺の緑と一体のネットワークを形成
という構成になります。
さらに「風の道」や地形などの地区特性を考慮した市街地とする方針も掲げられており、主要な風の道に配慮・暑熱環境の対策が挙げられています。
広場をどこに置くかが、風の通り道と暑さ対策に直結する——これは都市計画的に重要な視点です。
C-2街区の「集会場」という選択
見落とされがちですが、この事業で最も特徴的なのがC-2街区です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 規模 | 地上1階/高さ約10m |
| 延床面積 | 約170㎡ |
| 用途 | 集会場 |
約18万㎡の高層棟とは別に、170㎡の集会場を独立した街区として建てる。これは地域交流のための施設です。
大規模保留床を供給する高層棟とは別に、地域利用を想定した公共性のある機能を街区内に組み込んでいる点が、第一種市街地再開発事業としての性格を示しているという評価もあります。
そしてC-1街区の低層棟には従前の地権者向けの住宅等が配置されます。住宅戸数は約40戸。もともとここに住んでいた人の住まいを確保するという、再開発の本来の機能です。
155mのタワー、40戸の権利者住宅、170㎡の集会場、そして広場。この組み合わせが、この事業の全体像です。
高層棟の中身
広場の話が中心ですが、建物の用途も見ておきましょう。
| 部分 | 用途 |
|---|---|
| 低層階 | にぎわい空間の形成に資する商業施設 |
| 中層階 | MICEおよび産業支援施設 |
| 高層階 | 高規格のオフィス(広域的な交通結節機能を活かし、国内外の人材集積に資する) |
| 低層棟 | 従前の地権者向けの住宅等(約40戸) |
低層階に商業を置いて広場と連続させる——これが広場を賑わいの場にするための仕掛けです。広場に面した低層部に店舗があれば、人が滞留します。
スケジュール
| 時期 | できごと |
|---|---|
| 平成30年度 | 品川駅西口地区地区計画 都市計画決定 |
| 令和4年度 | 同 変更 |
| 2022年12月 | 都市計画決定(本事業) |
| 2024年2月20日 | 市街地再開発組合 設立認可 |
| 2025年3月 | 権利変換計画認可(当初予定) |
| 2026年度 | 着工予定 |
| 2028〜2029年度 | 竣工予定 |
隣のA地区(旧シナガワグース跡地)が2029年度開業なので、A地区とC地区がほぼ同時期に完成する見通しです。両地区が連携した駅前空間が、そのタイミングで姿を現します。
まとめ:広場の作られ方
- 約2.2ha、事業費約1,445億円。C-1街区に155m・約18.7万㎡、C-2街区に170㎡の集会場
- 細分化された敷地を集約し、その分を広場と通路に還元する構造
- 地上部=交通結節機能+広場・緑地
- デッキレベル=上空の広場空間 → 重層的な西口駅前
- 放射第19号線上空から環状第4号線方向へデッキの歩行者ネットワーク
- 狭隘道路を幅4.5〜10mの歩行者専用道路に整備
- 高層棟を広場に面して配置し、壁面を後退させる
- 崖線・高輪公園・高輪森の公園を活かした緑のネットワークと「風の道」への配慮
- A地区と連携した駅前空間として、2020年代後半に完成へ
この事業を一言でまとめると、「駅前の空間を、地上と上空の2層で作り直す」という話です。
品川駅高輪口は、これまで国道15号と狭い道に挟まれた、通過するだけの場所でした。それが地上は車、上空は人という整理によって、滞留できる駅前に変わります。
155mのタワーは目立ちますが、このプロジェクトの成果物は広場の方だと思います。
よくある質問
Q. 高輪三丁目品川駅前地区の再開発はいつ完成する?
2026年度の着工、2028〜2029年度の竣工が予定されています。資料により竣工時期に幅があり、進捗により変動する可能性があります。
Q. どんな建物が建つ?
C-1街区に地上30階・地下2階、高さ約155m、延床約186,900㎡の高層棟(事務所・住宅・店舗・MICE・産業支援施設)。C-2街区に地上1階・延床約170㎡の集会場が建ちます。
Q. 広場はどこにできる?
地上部に交通結節機能とあわせた広場・緑地、上空のデッキレベルに広場空間が整備されます。高層棟は広場に面して配置される計画です。
Q. 品川駅西口地区のA地区・B地区とは別事業?
別事業です。A地区は旧シナガワグース跡地で京急とトヨタが進める新築計画、B地区は公園整備が位置づけられる地区、D地区は住宅・商業等が計画されています。C地区はそのうちの1つです。
Q. 元々ここには何があった?
老朽化した建物が密集し、幅4m未満の狭隘な道路や行き止まり道路が存在する地区でした。低未利用地も多い状況でした。


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