新宿駅から南西へ約1km。東京オペラシティと新宿パークタワーの間に、木造住宅が密集した一帯があります。
そこで計画されているのが「西新宿三丁目西地区第一種市街地再開発事業」。高さ約229mと約228mのツインタワーに、約3,200戸の住宅ができる計画です。
3,200戸という戸数は、東京の再開発でも最大級です。この連載で扱ってきた住宅を含む再開発と比べると、その規模が分かります。
| 事業 | 戸数 |
|---|---|
| WORLD TOWER RESIDENCE(浜松町) | 389戸 |
| 大崎駅西口F南地区 | 460戸 |
| 泉岳寺駅地区 | 約350〜385戸 |
| 西麻布三丁目北東地区 | 約500戸 |
| 六本木五丁目西地区 | 約850戸 |
| 西新宿三丁目西地区 | 約3,200戸 |
他の事業の4倍〜8倍です。この記事では、どんな住宅ができるのかを中心に整理します。
事業の基本情報
地図:OpenStreetMap/位置・範囲は概略です。街区・道路・広場の配置は公表資料をもとにした模式表示です。2026年1月時点で設計内容の見直しが進められており、数値は変更される可能性があります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 事業名 | 西新宿三丁目西地区第一種市街地再開発事業 |
| 所在地 | 東京都新宿区西新宿二〜四丁目 |
| 施行者 | 西新宿三丁目西地区市街地再開発組合 |
| 参加組合員 | 野村不動産、住友商事、東京建物、首都圏不燃建築公社 |
| 施行区域面積 | 約4.6ha |
| 総延床面積 | 約383,578㎡ |
| 住宅戸数 | 約3,200戸 |
| 総事業費 | 約2,387億円 |
| 基本設計 | 梓設計 |
| 特定業務代行者 | 前田建設工業 |
| 都市計画決定 | 2019年3月15日 |
| 組合設立認可 | 2023年2月1日 |
| 着工 | 2028年度(見込み) |
| 竣工 | 2035年度(見込み) |
区域内の権利者は、区分所有者も含めて約540者。これだけの権利者をまとめた事業です。
4棟で構成される
建物は4棟に分かれます。
| 地区 | 規模 | 用途 |
|---|---|---|
| A-1地区 北棟 | 地上63階・地下4階/高さ約229.4m | 住宅、店舗、事務所、生活支援施設、駐車場、保育所等 |
| A-1地区 南棟 | 地上62階・地下4階/高さ約228.4m | 〃 |
| A-2地区 | 地上9階・地下1階/高さ約35m | 住宅、店舗、駐車場 |
| A-3地区 | 地上9階/高さ約35m | 住宅、町会会館、店舗 |
A-1地区のツインタワーが住宅の中心です。約229mと約228m——ほぼ同じ高さの2棟が並びます。
完成イメージがこちらです。



どんな住宅ができるのか
① なぜ3,200戸なのか:木造密集市街地の解消
戸数の多さには理由があります。
東京都の事業概要によれば、この地区は四方を放射5号線(甲州街道)、環状6号線(山手通り)、補助線街路第61号線、十二社通りに囲まれた街区です。その内部が問題でした。
| 課題 | 内容 |
|---|---|
| 建物 | 老朽化した木造住宅が密集 |
| オープンスペース | 道路や公園などが不足 |
| 道路 | 細街路が多く宅地が細分化、緊急車両の通行が困難 |
| 交通 | 補助線街路第61号線はバス路線だがバスベイが未整備 |
| 歩行者 | 児童・園児の通学路で歩行者と自転車が混在 |
つまりこの事業は、タワーマンションを建てる事業というより、木造密集市街地を解消して、そこに住んでいた人と新しい住民をまとめて高層に収容する事業です。
東京都は事業の目的を**「安全安心な質の高い住環境の整備と土地の有効利用かつ高度利用」**と表現しています。
約540者の権利者がいるのは、もともと多くの世帯・事業者がここに住み、営んでいたからです。約3,200戸のうち一定数は、従前の権利者向けの住戸になります。
② 住宅以外の「暮らしを支える機能」
3,200戸という規模は、それだけで一つの町です。そのため建物内に生活機能が組み込まれます。
| 機能 | 位置 |
|---|---|
| 保育所 | A-1地区 |
| 子育て施設 | A-1地区 |
| 生活支援施設 | A-1地区、A-2地区 |
| 店舗(商業施設) | 各棟の低層部 |
| 事務所 | A-1地区 |
| 町会会館 | A-3地区 |
| 駐車場 | 各棟 |
A-3地区に「町会会館」が入るのが、この事業の特徴です。もともとこの地区にあった町会のコミュニティを、再開発後も維持するための施設です。約540者の権利者がいる地区だからこその配慮です。
「タワーマンションができてコミュニティが失われる」という批判は再開発によくありますが、この事業では町会会館を独立した棟に確保しています。
③ 低層棟にも住宅がある
注目すべきは、A-2・A-3地区(地上9階・高さ約35m)にも住宅が入ることです。
すべてを超高層に集約するのではなく、9階建ての中低層住宅も用意する——多様な住まい方の選択肢を残す構成です。木造密集市街地に住んでいた人にとって、63階の高層階より9階の方が馴染みやすいという選択もあり得ます。
④ ツインタワーの規模
参考として、初期の計画段階では以下のように報じられていました。
| 棟 | 内容(2018年の環境アセス時点) |
|---|---|
| 南棟 | 業務 約4,800㎡、商業 約14,700㎡、共同住宅 約153,000㎡・約1,550戸 |
| 北棟 | 商業 約9,000㎡、共同住宅 約●㎡ |
南棟だけで約1,550戸。つまり1棟あたり約1,600戸という計算になります。1棟で他の再開発の3〜4倍という規模です。
同じ高さ・同じ階数のツインタワーとしては、当時日本最高層になると報じられていました。
⑤ 都市基盤の整備
住宅の質は、建物の外側にも左右されます。この事業では以下が整備されます。
| 公共施設 | 内容 |
|---|---|
| 補助線街路第61号線 | 道路整備(バスベイの課題に対応) |
| 区画道路1号〜3号 | 街区内の道路 |
| 広場1号・2号 | オープンスペース |
| 歩行者通路1号 | 歩行者専用の動線 |
| 歩道状空地1号〜3号 | 敷地内の歩行空間 |
| 歩行者デッキ | 初台駅〜新宿方面の動線改善 |
| 水道道路の拡幅 | — |
緊急車両が入れない細街路が、区画道路と広場に変わる。通学路で歩行者と自転車が混在していた道に、歩道状空地が確保される。住宅の戸数以上に、この基盤整備が事業の本質です。
現地の様子と周辺環境がこちらです。



立地:2つの超高層に挟まれた場所
この事業の立地は独特です。
| 方角 | 隣接するもの |
|---|---|
| 東側 | 東京オペラシティ(地上54階・高さ約234m) |
| 北東側 | 新宿パークタワー(地上52階・高さ約235m) |
| 南側 | 甲州街道(放射5号線) |
| 西側 | NTT東日本本社ビル方面 |
| 最寄駅 | 京王新線「初台」駅、新宿駅から徒歩圏 |
東京オペラシティ(約234m)と新宿パークタワー(約235m)の間に、約229mと約228mのツインタワーが建つ——4棟の超高層が並ぶ景観になります。
京王線新宿駅と初台駅の間という立地で、新宿駅から南西へ約1km。西新宿の超高層ビル街と、住宅地の境界にあたるエリアです。
なぜ竣工が2035年度になったのか
この事業も、建設費高騰の影響を受けています。
3回の延期
| 時期 | 竣工予定 |
|---|---|
| 当初 | 2029年度 |
| 変更① | 2031年度 |
| 変更② | 2032年秋 |
| 変更③(2026年1月時点) | 2035年度 |
当初計画から6年の後ろ倒しです。
理由:事業費高騰による設計見直し
2026年1月の報道では、建設資材価格や人件費の上昇による事業費の高騰を受けて設計内容の見直しを進めていることが要因とされています。
| 項目 | 変更 |
|---|---|
| 既存施設の解体着手 | 2025年12月 → 2027年度 |
| 建築着工 | 2026年度 → 2028年度 |
| 竣工 | → 2035年度 |
設計内容の見直しが行われているため、戸数や規模も変更される可能性があります。本記事の数値は見直し前の計画値であることに注意してください。
事業自体は継続している
一方で、権利変換計画認可は2026年度の予定どおりとされています。都市計画決定済み・組合設立済みという段階にあり、事業の骨格は維持されているという評価です。
この連載でも、六本木五丁目西地区、HIBIYA CROSSPARK、神宮外苑地区、新宿駅西南口 南街区など、建設費高騰による遅れを複数扱ってきました。西新宿三丁目西地区も同じ構造の中にある案件です。
まとめ:どんな住宅ができるのか
- 約4.6ha、総延床約383,578㎡、総事業費約2,387億円
- A-1地区に高さ約229m(63階)と約228m(62階)のツインタワー
- 住宅戸数は約3,200戸——東京の再開発でも最大級
- 木造密集市街地の解消が目的。権利者は約540者
- 保育所・子育て施設・生活支援施設・店舗を建物内に整備
- A-3地区に町会会館——従前のコミュニティを継承
- A-2・A-3地区(9階・約35m)にも住宅があり、多様な住まい方を確保
- 区画道路・広場・歩行者通路・歩道状空地・歩行者デッキで基盤を整備
- 東京オペラシティと新宿パークタワーの間に立地
- 建設費高騰による設計見直しで、2028年度着工・2035年度竣工の見込み
この事業を一言でまとめると、**「木造密集市街地を、3,200戸の垂直の町に置き換える」**という計画です。
3,200戸という数字だけを見ると「巨大なタワマン」に見えます。しかし実態は、緊急車両が入れない細街路に住んでいた約540者の権利者を含めて、道路と広場と保育所と町会会館をまとめて作り直す事業です。
63階のタワーが建つのは結果であり、本体は「安全に住める場所をつくる」ことにあります。2035年度、西新宿の景色と暮らしが変わります。
よくある質問
Q. 西新宿三丁目西地区の再開発はいつ完成する?
2026年1月時点の見通しでは、2028年度の着工、2035年度の竣工とされています。当初は2029年度竣工の予定でしたが、事業費高騰による設計見直しなどで複数回延期されています。
Q. 何戸の住宅ができる?
約3,200戸が計画されています。ただし2026年1月時点で設計内容の見直しが進められているため、戸数が変更される可能性があります。
Q. 建物の規模は?
A-1地区に地上63階・高さ約229.4mの北棟と、地上62階・高さ約228.4mの南棟、A-2地区・A-3地区に地上9階・高さ約35mの建物が計画されています。4棟合計の延床面積は約383,578㎡です。
Q. 住宅以外に何が入る?
店舗、事務所、生活支援施設、保育所、子育て施設、駐車場が計画されています。A-3地区には町会会館も整備されます。
Q. なぜ再開発が必要なのか?
地区内部に老朽化した木造住宅が密集し、道路や公園などのオープンスペースが不足していました。細街路が多く緊急車両の通行が困難など、防災上の課題を抱える密集市街地だったためです。


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