1日の乗降客数が世界最多級の新宿駅。その駅と駅前広場と駅ビルを、まとめて作り替えるという構想があります。
「新宿グランドターミナル」です。東京都と新宿区が2018年3月に策定した「新宿の拠点再整備方針〜新宿グランドターミナルの一体的な再編〜」に基づく、2040年代を見据えた新宿駅周辺の全面再編です。
この連載では、新宿駅西口地区(旧小田急百貨店)、西南口地区の南街区・北街区、西新宿三丁目西地区を個別に扱ってきました。この記事では、それらがどう位置づけられ、全体としていつ何ができるのかを整理します。
構想の基本情報
地図:OpenStreetMap/位置・範囲は概略です。デッキ・広場・街区の配置は公表資料をもとにした模式表示です。スケジュールは東京都の公表値に基づきますが、南街区の竣工時期は事業者により「未定」に変更されています。情報は2026年9月時点。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名称 | 新宿グランドターミナル |
| 根拠となる方針 | 新宿の拠点再整備方針〜新宿グランドターミナルの一体的な再編〜(2018年3月策定) |
| 上位の指針 | 新宿の新たなまちづくり〜2040年代の新宿の拠点づくり〜(2017年6月策定) |
| 策定主体 | 東京都・新宿区 |
| 対象 | 新宿駅周辺地域、特に駅直近地区 |
| 完了予定 | 2046年度(新宿駅直近地区土地区画整理事業) |
策定までの流れ
| 時期 | できごと |
|---|---|
| 2017年6月 | 東京都・新宿区が「新宿の新たなまちづくり〜2040年代の新宿の拠点づくり〜」を策定 |
| — | 「新宿の拠点再整備検討委員会」を設置 |
| 2018年3月 | 「新宿の拠点再整備方針」を策定 |
| 2019年12月 | 先行して再編する都市基盤等に係る都市計画決定・変更 |
| 2021年7月 | 新宿駅直近地区土地区画整理事業に着手 |
2040年代に想定される社会変化を見込んで、長期的・広域的な視点から新宿の拠点づくりに取り組む——これが構想の出発点です。
構想の全体像がこちらです。



4つの基本方針
方針には、4つの柱が掲げられています。
| 方針 | 内容 |
|---|---|
| ① 一体的な再編整備 | 更新期を迎えた駅ビルの建替えを契機として、誰にとっても優しい「新宿グランドターミナル」とするため、駅、駅前広場、駅ビル等を一体的に再編整備する |
| ② 歩行者ネットワークの構築 | 東西のまちをつなぐ線路上空デッキの新設や、歩行者優先の駅前広場への再構成などを行う |
| ③ 顔となる空間の配置 | グランドターミナルの顔となる空間を随所に配置し、新宿らしい都市活動が展開される場を創出 |
| ④ 挑戦を生み出す機能の導入 | インキュベーションなど新たな挑戦を生み出す都市機能を積極的に導入 |
①が最も重要です。「駅ビルの建替えを契機として」という一文が、この構想の仕組みを表しています。
小田急百貨店、京王百貨店、ルミネといった駅ビルが更新期を迎えた。民間がビルを建て替えるタイミングで、公共が駅と広場も一緒に作り替える——これが新宿グランドターミナルの基本構造です。
3つのプロジェクトで構成される
再編事業は、3つのプロジェクトから成ります。
| プロジェクト | 主体 | 内容 |
|---|---|---|
| ① 鉄道施設整備 | 鉄道事業者 | 乗り換え経路の新設・拡充、駅施設の改良 |
| ② 公共施設整備 | 東京都・新宿区 | 東西デッキ、駅前広場、街路の再編 |
| ③ 駅ビルの建て替え | 民間事業者 | 各駅ビルの更新 |
行政・鉄道事業者・民間が役割を分担し、同時並行で進めるという体制です。
新宿駅には、JR東日本・小田急電鉄・京王電鉄・東京メトロ・都営地下鉄(東京都交通局)・西武鉄道が乗り入れています。これだけの事業者が連携して一つの駅を作り替えるのは、極めて異例のことです。
何ができるのか:5つの柱
① 東西デッキ(線路上空)
この構想の象徴です。
新宿駅は線路が街を東西に分断しており、東口と西口の行き来がしにくい駅でした。そこで線路上空にデッキを架け、東西の街をつなぎます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 位置 | バスタ新宿から甲州街道方向に広がるJR新宿駅の北側のエリア |
| 機能 | 西口駅前広場と東口駅前広場をつなぐ |
| 完成 | 2035年度(東西駅前広場の一部とあわせて) |
地下の東西自由通路とあわせて「東西骨格軸」を形成します。
② 東西の駅前広場の再構成
西口駅前広場と東口駅前広場が、主な滞留空間として再整備されます。
方針では「歩行者優先の駅前広場への再構成」が掲げられています。車のための広場から、人が待ち合わせ、滞留できる広場へという転換です。
東口駅前広場では、ルミネエスト新宿前の広場に、現代美術家・松山智一氏が設計したパブリックアートを含むにぎわい空間が2020年に先行して整備されました。
③ 道路空間の再編
東西骨格軸となる道路も歩行者優先に再編されます。
| 対象 | 内容 |
|---|---|
| 4号街路(地上・地下) | 道路空間の再編 |
| 新宿通り | 〃 |
| 中央通り(駅街路8号) | 〃 |
あわせて、新宿駅直近地区への自動車の流入を制限する方針も示されています。人の交流を主軸としたまちづくりへの転換です。
④ 鉄道の乗り換え改善
各鉄道事業者が、乗り換え経路の新設・拡充を進めます。この連載で扱った事例では、
- 小田急線新宿駅:新宿駅西口地区開発計画で2階に新設改札(2029年度)
- 京王線新宿駅:地下2階ホームを北側へ移動し、ホーム端部に改札を新設して丸ノ内線へ直接乗り換え可能に
さらに、西武新宿駅の地下とつながる地下街「新宿サブナード」と、JR新宿駅ともつながる「メトロプロムナード」の間を直結する長さ約140mの地下通路も計画されています。
⑤ 各街区の開発
駅ビルの建て替えが、構想を動かす原動力です。
| 地区 | 事業者 | 規模 | 竣工 |
|---|---|---|---|
| 新宿駅西口地区 | 小田急電鉄・東京メトロ・東急不動産 | 48階・約260m | 2029年度 |
| 西南口地区 南街区 | 京王電鉄・JR東日本 | 36階・約220m | 「未定」 |
| 西南口地区 北街区 | 京王電鉄・JR東日本 | 19階・約110m | 2040年代 |
東西デッキと駅前広場のイメージがこちらです。



全体スケジュール:2046年度まで
東京都が公表しているスケジュールを整理します。
| 時期 | できごと |
|---|---|
| 2019年12月 | 先行して再編する都市基盤等の都市計画決定・変更 |
| 2020年9月 | 新宿駅西口地区の開発について発表 |
| 2021年4月 | 新宿駅西口地区開発事業に係る都市計画変更 |
| 2021年7月 | 新宿駅直近地区土地区画整理事業に着手 |
| 2021年11月 | 西武新宿駅と新宿駅を結ぶ都市施設(通路)に係る都市計画変更 |
| 2022年4月 | 新宿駅西南口地区の開発について発表 |
| 2022年11月 | 新宿駅西南口地区開発事業に係る都市計画変更 |
| 2022年度 | 新宿駅西口地区 着手(既存建物の解体) |
| 2023年度 | 西南口地区(南街区)着手 |
| 2028年度 | 西南口地区(南街区)竣工(予定)※現在は「未定」に変更 ・西南口地下駅広場整備 ・渋谷区道1039線(葵通り)表層整備 ・ミロードデッキに接続する南街区デッキ |
| 2029年度 | 新宿駅西口地区 竣工(予定) |
| 2035年度 | ★東西デッキ・東西駅前広場の一部完成(予定) |
| 2040年代 | 西南口地区(北街区)竣工(予定) |
| 2046年度 | ★新宿駅直近地区土地区画整理事業 完了(予定) |
3つの節目
長いスケジュールですが、節目は3つに整理できます。
| 年 | 何が起きるか |
|---|---|
| 2029年度 | 新宿駅西口地区(約260m)が竣工。小田急線に2階の新改札 |
| 2035年度 | 東西デッキと東西駅前広場の一部が完成——構想の象徴が実現 |
| 2046年度 | 土地区画整理事業が完了。全体の完成 |
2035年度の東西デッキ完成が、最大のマイルストーンです。線路で分断されていた新宿の東西が、ついにつながる年です。
遅れのリスク
ただし、スケジュールどおりに進むとは限りません。
西南口地区の南街区は、2028年度竣工予定だったのが「未定」に変更されています(施工会社が決まらないため)。このスケジュールには、南街区の竣工とあわせて整備される項目が含まれています。
- 西南口地下駅広場整備
- 渋谷区道1039線(葵通り)表層整備
- ミロードデッキに接続する南街区デッキ
つまり南街区の遅れは、公共施設の整備にも波及する構造です。
また北街区は南街区の竣工後に着手なので、2040年代という時期も南街区次第です。
新宿グランドターミナルの中の各事業
この連載で扱ってきた新宿関連の事業を、構想の中に位置づけるとこうなります。
| 事業 | 位置 | 役割 | 状況 |
|---|---|---|---|
| 新宿駅西口地区開発計画 | 西口 | 駅ビル建替+2階新改札+交通広場 | 工事中/2029年度 |
| 西南口地区 南街区 | 西南口 | 駅ビル建替+甲州街道デッキ | 新築「未定」 |
| 西南口地区 北街区 | 西南口 | 京王百貨店建替+京王線駅改良 | 2040年代 |
| 東西デッキ | 線路上空 | 構想の象徴 | 2035年度 |
| 土地区画整理事業 | 駅直近地区 | 基盤整備の枠組み | 2046年度完了 |
| 西新宿三丁目西地区 | 西新宿 | 約3,200戸の住宅(構想の周辺) | 2035年度 |
「駅直近地区」の再編が構想の中心で、西新宿三丁目西地区などはその周辺で連動して進む事業という位置づけです。
まとめ:新宿グランドターミナルの全貌
- 東京都・新宿区が2018年3月に策定した「新宿の拠点再整備方針」に基づく構想
- 駅ビルの建替えを契機に、駅・駅前広場・駅ビルを一体的に再編
- 鉄道施設整備・公共施設整備・駅ビル建替えの3プロジェクトで構成
- 線路上空に東西デッキを新設し、地下の東西自由通路と東西骨格軸を形成
- 東西の駅前広場を歩行者優先に再構成
- 4号街路・新宿通り・中央通りの道路空間を再編、駅直近への自動車流入を制限
- 各鉄道事業者が乗り換え経路を改善(小田急2階改札、京王のホーム移動と新改札など)
- 2029年度に西口地区竣工、2035年度に東西デッキ完成、2046年度に土地区画整理事業完了
- 南街区の遅れが、公共施設の整備や北街区の時期にも波及する構造
新宿グランドターミナルは、「一つの巨大な建物を建てる計画」ではありません。
複数の鉄道会社の駅、行政が管理する広場と道路、民間が持つ駅ビル——所有も管理も別々のものを、時間をかけて一つのターミナルにまとめていくという構想です。
だからこそ2046年度までかかり、だからこそ一つの事業の遅れが全体に波及します。
2035年度、線路の上にデッキが架かったとき。その瞬間が、新宿が「分断された駅」から「一つのターミナル」に変わる日になります。
よくある質問
Q. 新宿グランドターミナルとは何ですか?
東京都と新宿区が2018年3月に策定した「新宿の拠点再整備方針」に基づく構想です。更新期を迎えた駅ビルの建替えを契機として、駅・駅前広場・駅ビル等を一体的に再編整備し、2040年代を見据えた次世代のターミナルをつくることを目指しています。
Q. いつ完成しますか?
新宿駅直近地区土地区画整理事業の完了は2046年度の予定です。主な節目として、2029年度に新宿駅西口地区が竣工、2035年度に東西デッキと東西駅前広場の一部が完成、2040年代に西南口地区の北街区が竣工する予定です。
Q. 東西デッキとは何ですか?
JR新宿駅の線路上空に新設されるデッキで、西口駅前広場と東口駅前広場をつなぎます。地下の東西自由通路とあわせて「東西骨格軸」を形成し、線路による東西の分断を解消します。完成は2035年度の予定です。
Q. どんな事業が含まれますか?
新宿駅西口地区開発計画(旧小田急百貨店跡地・2029年度)、新宿駅西南口地区開発事業(南街区・北街区)、東西デッキや駅前広場の整備、各鉄道事業者による駅改良などが含まれます。
Q. 予定どおり進んでいますか?
新宿駅西口地区は工事が進行中です。一方、西南口地区の南街区は施工会社が決まらず工期が「未定」に変更されており、南街区の竣工とあわせて整備される公共施設や、その後に着手する北街区の時期にも影響する可能性があります。


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