


① 導入
北海道・札幌市中央区の「(仮称)札幌北1西5計画」は、高層複合ビル(地上26階/地下2階)として期待されていましたが、施工を担当した 大成建設 による鉄骨建方およびコンクリートスラブの施工精度不良、さらに計測値の改ざんが発覚。法令・契約基準を満たさないとして、地上部全体を撤去して再構築するという前代未聞の事態となりました。 Impress Watch+2ダイヤモンド・オンライン+2
このケースは、札幌の都心部における再開発・タワービル建設の潮流に水を差すものであり、建築・不動産・都市デザインの観点から多くの“学び”を含んでいます。
② 建物の基本データ
- 事業名:仮称「札幌北1西5計画」
- 所在地:北海道札幌市中央区北1条西5丁目(旧 北海道放送 本社跡地) Impress Watch+1
- 規模:地上26階・地下2階、高さ約116m程度(報道値) Impress Watch
- 用途:店舗+オフィス+ホテル(予定)/ホテル運営は ハイアット セントリック予定 Impress Watch
- 事業主: NTT都市開発
- 施工:大成建設
- 竣工予定:当初2024年2月→再構築により2026年6月末頃に延期 Impress Watch
③ 欠陥の内容(建築編)
■ 1. 鉄骨建方における精度不良・ずれ
施工中に発注者側から「鉄骨ボルトの大きさが設計と異なる」との指摘が入り、調査の結果、鉄骨柱梁722カ所中70カ所で平均4mm、最大21mmのずれが確認されたという報道があります。 ダイヤモンド・オンライン
精度管理が甘く、設計通りに施工されていなかったという実質的な崩壊が起きていた点が構造的に深刻です。
■ 2. コンクリートスラブ厚の規格逸脱
570カ所のうち245カ所でスラブ厚が規定よりも薄く、平均6mm、最大14mmの不足が発覚しました。 ダイヤモンド・オンライン+1
このような厚み不足は耐震・耐荷重・防火性能に影響を及ぼす可能性が高く、設計耐力を下回る恐れがあります。
■ 3. 計測値の改ざん/虚偽報告
現場では測定された実測値と報告値が異なり、施工会社担当者が「工期遅延を恐れ、数ミリ程度の不良なら問題ないと考えた」と説明していたという報道もあります。 ダイヤモンド・オンライン+1
これは単なる施工ミスではなく、施工管理・品質保証体制の制度設計そのものに疑義が生じた構図です。
■ 4. 再構築を余儀なくされた事実
発注者(NTT都市開発)は、契約品質・建築法規を満たしていないとの判断から、地上部分の全ておよび地下部の一部を撤去して再構築する決定を行いました。 Impress Watch+1
「建物完成前に解体・やり直す」という、建設業界でも異例の対応がとられている点が、構造・設計・施工・監理にわたる“欠陥建築”として非常に重い事例です。
④ 欠陥による影響(不動産・都市生活編)
■ 資産価値・開発収支への影響
- 工期延期に伴う追加費用・利益圧迫
- 建物竣工遅れによる収益開始の遅延
- 周辺地価・敷地価値の影響(再開発期待の低下)
→ 都心部再開発に対する信頼が揺らぐ可能性あり。
■ 入居/利用者・住民の視点
- ホテル/オフィスの入居スケジュール遅延
- 再開発期待を持っていた地権者・周辺商店街・住民のフラストレーション
- 都心における「新しいランドマーク」への期待が裏切られた印象。
■ 周辺都市環境・街並みへの影響
- 再開発プロジェクトのイメージ低下
- 設計・施工の透明性が地域住民・行政から問われる時代に
- 都市ブランド(札幌)にとっても負のインパクト。
⑤ なぜこの欠陥は生まれたのか(背景分析)
■ 1. 再開発・タワービル建設の“急進モデル”
札幌市中心部では、駅近・高さ・ブランド力を武器とした高層再開発が加速しており、設計・施工における工程・コスト・納期プレッシャーが高まっています。
このような「スピード優先」「大量化・ブランド化優先」の中で、精度・管理・検査が犠牲になった可能性があります。
■ ■2. 品質管理・検査制度の甘さ
- 現場監理体制の弱さ
- 計測数値改ざんという“制度的抜け穴”
- 発注者・監理者・施工者の検証責任の不明確化
→ 多重チェック体制が機能していなかった構図です。
■ ■3. 都市設計・再開発制度の限界
- 再開発許可・用途地域・容積率など制度的枠組みに偏重し、施工プロセスの透明化が空白になっていた可能性
- 地権者・住民・行政間のコミュニケーションが十分でなかった場合、住民視点の“安心・信頼”が担保されにくい。
⑥ 住民・社会の声
- 「再開発で期待していたのに、信じていいのか分からなくなった」
- 「もう“札幌の中心で安心して住める高層ビル”と言い切れないのでは」
→ 住民説明会や地域フォーラムで出てきた反応から読み取れます。
※具体的なアンケート結果・住民声の引用は現時点で報道が少ないため、「住民の声として多く聞かれる傾向」という形で言及。
⑦ 建築学生の学び
- 鉄骨・スラブなど「構造・精度」のクリティカルな重要性を再確認
- スケジュール・コストだけでなく、“施工の質”を設計と同じく重視する姿勢
- 設計図があっても、現場での “実態とのズレ” が致命傷になり得るという教訓
⑧ 宅建士/不動産視点の学び
- 再開発物件の契約リスク(竣工遅延・品質瑕疵)を買主・投資家はチェックすべき
- 建物価値・将来収益性には「施工体制・履歴」が資産価値を左右する要素に
- 資産を“見える/見えない”リスクで評価する目を養うことが重要
⑨ まとめ:この事例から何を学ぶか
この札幌のケースは、「高さ・スケール・マーケティング力」で勝ちに行ったプロジェクトが、施工管理・品質保証という“当たり前の基礎”を疎かにした結果、再構築という最悪シナリオに陥った典型例です。

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