六本木交差点の南側、約9.2haの一帯で計画されている巨大再開発があります。六本木五丁目西地区第一種市街地再開発事業。通称「第二の六本木ヒルズ」です。
高さ約327mのオフィスタワーと、約288mのタワーマンション。事業規模は約7,000億円。森ビルと住友不動産が組む、国内最大級のプロジェクトです。
ただし現在、この事業は当初計画から大きく遅れています。2025年度着工・2030年度竣工だったスケジュールは、2027年度着工・2032年度竣工へと見直されました。この記事では概要と、なぜ難航しているのかを整理します。
事業の基本情報
地図:OpenStreetMap/位置・範囲は概略です。街区配置は公表資料をもとにした模式表示で、確定した区画ではありません。情報は2026年9月時点。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 事業名 | 六本木五丁目西地区第一種市街地再開発事業 |
| 所在地 | 東京都港区六本木五丁目・六丁目、麻布十番一丁目 |
| 施行区域面積 | 約9.2ha |
| 総延床面積 | 約108万㎡ |
| 事業規模 | 約7,000億円(2024年3月時点の見通し) |
| 事業協力者 | 森ビル・住友不動産 |
| 都市計画決定 | 2024年4月8日 |
区域は、六本木交差点を起点に外苑東通り、芋洗坂、環状第3号線、鳥居坂に囲まれた範囲です。
比較すると規模感がわかります。六本木ヒルズは約11.0haを総事業費約2,867億円で完成させました。この事業は敷地が狭いのに事業規模は2倍超です。
完成イメージがこちらです。



何ができるのか——5つの街区
事業はA〜Eの5街区(Aはさらに3分割)で構成されます。
| 街区 | 建物 | 用途 |
|---|---|---|
| A-1 | 地上66階・地下8階/高さ約327m | 事務所、ホテル、店舗、展望施設、集会場、劇場 |
| A-2・A-3 | — | 関連施設 |
| B | 地上70階・地下5階/高さ約288m | タワーマンション 約850戸 |
| C | — | — |
| E | 地上9階・地下3階/高さ約35m | 住宅、店舗等 |
数字のインパクトが大きい2棟です。
- A-1街区の327mは、完成時に日本で2番目に高い超高層ビルになる見込み
- B街区の288mは、タワーマンションとして日本一の高さになる見込み
A-1街区は敷地面積約38,600㎡、延床約79万4,500㎡。この1棟だけで、他の大規模再開発の全体規模を上回ります。
ホテルは「ローズウッド東京」。2026年5月15日に発表されたもので、世界25か国で43軒を運営するラグジュアリーホテル運営会社の東京初進出です。約200室の客室、複数のレストラン、宴会場、スパを備え、メインタワー最上層部に入ります。
「都心の森」という特徴
このプロジェクトで建築的に注目すべきは、人工地盤の上に設けられる緑地です。
- 人工地盤上に約16,000㎡の「都心の森」
- 地上に約4,600㎡の駅まち広場
ローズウッド東京は、この1万6,000㎡の都心の森を眼下に見下ろす位置に配置されます。
六本木ヒルズが毛利庭園を核に据えたのと同じ発想を、人工地盤の上でさらに大規模に展開する構成です。
そして六本木駅に直結し、地下通路や広場によって「駅と街」「街と街」をつなぐ計画になっています。
街区構成と配置計画がこちらです。



本題:なぜ難航しているのか
この事業の特徴は、準備段階に異常な時間がかかったこと、そして今も遅れ続けていることです。
準備組合設立から都市計画決定まで16年
| 年 | できごと |
|---|---|
| 2006年10月 | 鳥居坂西地区安全安心まちづくり協議会 設立 |
| 2008年3月 | 六本木五丁目西地区市街地再開発準備組合 設立 |
| 2023年夏 | 森ビル・住友不動産が都市計画の案を提出 |
| 2023年9月 | 港区が地区計画の原案を報告(2025年度着工・2030年度竣工の予定) |
| 2024年3月 | 森ビル社長が事業規模約7,000億円と表明 |
| 2024年4月8日 | 都市計画決定 |
準備組合設立から都市計画決定まで16年かかっています。
理由は地区の条件にあります。この一帯は細街路、旧耐震建物、土砂災害特別警戒区域を抱えるエリアでした。六本木の一等地でありながら、防災上の課題が深刻だったわけです。
地権者の構成も複雑です。日本銀行(鳥居坂分館)、川崎定徳、港区(グラウンド跡地)といった大規模地権者に加え、東洋英和学院、国際文化会館、旧ロアビルの各代表者が発起人となっています。準備組合に参加しているのはおよそ7割の地権者とされています。
都市計画決定後も進まない
都市計画が決まれば一直線、とはなりませんでした。
2024年度:組合設立認可の予定でしたが、組合員への説明会で事業費や工期といった具体的な内容は示されませんでした。理由は、建設会社による技術の精査と、他地区の事例調査に時間がかかっているため、と説明されています。
森ビル社長(当時)の辻慎吾氏は、2025年の年頭所感でこう述べています。「非常に難しいプロジェクトであるうえ、工事費や工期などの見極めも難しくなっている」。同時に「権利者の合意形成を進めながら、事業計画の中身を一つひとつ細部まで詰め切っていく」と意欲も示しました。
2026年、竣工遅延を公式に認める
そして決定的な発表がありました。
2026年5月15日の決算記者会見で、森ビルは2030年度の竣工予定が遅延する可能性があると明らかにしました。主因は建築費と金利の上昇です。
現在のスケジュールはこう見直されています。
| 項目 | 当初 | 現在 |
|---|---|---|
| 地区計画変更 | — | 2026年度 |
| 権利変換計画認可 | 2025年度 | 2027年度 |
| 着工 | 2025年度 | 2027年度以降 |
| 全体竣工 | 2030年度 | 2032年度 |
2026年3月時点で工事はまだ始まっていません。2023年9月の区資料では2025年度着工予定でしたから、2年以上の遅れが生じています。
難航の3つの要因
整理するとこうなります。
① 建設費の高騰
森ビルは麻布台ヒルズで、事業費が当初の約5,800億円から約6,400億円へ膨らむ経験をしました。この事業の7,000億円という数字も、2024年3月時点のものです。
② 金利の上昇
7,000億円規模の事業では、金利が1%動くだけで負担が桁違いに変わります。工期が延びれば金利負担はさらに増える——この悪循環が効いています。
③ 合意形成の難しさ
準備組合への参加が約7割という状況で、組合設立認可にまだ至っていないことが、事業の難しさを物語っています。
森ビルという再開発の本命が「2030年に間に合わないかもしれない」と表明したインパクトは大きく、業界全体に建築コストと金利環境の厳しさを突きつけた形になりました。
まとめ:現在地を正確に押さえる
- 六本木交差点南側の約9.2ha、総延床約108万㎡の超大規模再開発
- A-1街区に327m(日本2位)、B街区に288m(タワマン日本一)
- ホテルはローズウッド東京が東京初進出
- 人工地盤上に約16,000㎡の「都心の森」、六本木駅直結
- 準備組合設立(2008年)から都市計画決定(2024年)まで16年
- 2026年5月、森ビルが竣工遅延の可能性を公式に表明
- 現在は2027年度着工・2032年度竣工を目指す(2026年7月時点)
大事なのは、この事業が中止になったわけではないという点です。2026年5月にはローズウッドの誘致が発表され、計画自体は前進しています。森ビル社長は2026年3月に「工事に向けて大詰め」とも述べています。
ただし当初の数字をそのまま信じるのは危険です。着工前の大規模再開発では、工期・事業費・スペックのすべてが動きます。この事業はその典型例として、今後も注視する価値があります。
よくある質問
Q. 六本木五丁目西地区の再開発はいつ完成する?
2026年7月時点では、2027年度の権利変換計画認可を経て着工し、2032年度の全体竣工を目指すとされています。当初は2025年度着工・2030年度竣工の予定でした。
Q. なぜ遅れている?
建築費の高騰、金利の上昇、人手不足が主因です。森ビルは2026年5月の決算会見で竣工遅延の可能性を公式に表明しています。
Q. どんなビルが建つ?
A-1街区に地上66階・高さ約327mのオフィス・ホテル・展望施設などの複合ビル、B街区に地上70階・高さ約288m・約850戸のタワーマンションが計画されています。
Q. ホテルは何が入る?
ラグジュアリーホテルブランド「ローズウッド」の東京初進出となる「ローズウッド東京」が、メインタワー最上層部に約200室で入る予定です。
Q. 「第二の六本木ヒルズ」と呼ばれるのはなぜ?
森ビルが手がける大規模複合開発で、六本木ヒルズの東側に位置し、規模も匹敵するためです。ただし正式名称ではありません。


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