浜松町駅の目の前に、地上46階・高さ約181mのタワーマンションが建っています。「WORLD TOWER RESIDENCE」。2024年11月に竣工し、2025年3月から入居が始まりました。
ただしこのプロジェクト、まだ完成していません。同じ事業の中で、港区立の公立劇場が2027年11月の開館に向けて工事中なのです。
分譲タワーマンションと自治体の文化施設が、同じ再開発事業の中で1つの建築になる——この珍しい組み合わせがどう成立しているのかを整理します。
事業の基本情報
地図:OpenStreetMap/位置・範囲は概略です。高層棟・中層棟の区分や連絡通路の位置は公表資料をもとにした模式表示です。情報は2026年9月時点。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 事業名 | 浜松町二丁目地区第一種市街地再開発事業 |
| 所在地 | 東京都港区浜松町二丁目 |
| 施行者 | 浜松町二丁目地区市街地再開発組合 |
| 参加組合員 | 世界貿易センタービルディング、鹿島建設 |
| 敷地面積 | 5,888.55㎡ |
| 延床面積 | 約74,860㎡ |
| 規模 | 地上46階・地下2階/高さ180.98m(最高185.43m) |
| 用途 | 共同住宅、事務所、店舗、文化芸術ホール、地下鉄施設、駐車場等 |
| 設計・施工 | 鹿島建設 |
| 位置づけ | 浜松町駅西口地区計画のC地区 |
売主は5社体制です。世界貿易センタービルディング、鹿島建設、三井不動産レジデンシャル、三菱地所レジデンス、東京建物。
注目すべきは地権者に港区が含まれていることです。港区が土地を所有する権利者として市街地再開発組合に参加することで、公立文化施設の整備が実現しました。
建物の外観がこちらです。


ホールとマンションはどう組み合わさるのか
ここが本題です。答えはシンプルで、「高層棟」と「中層棟」という2つのボリュームに分けたことです。
| 高層棟 | 中層棟 | |
|---|---|---|
| 位置 | 敷地の南側 | 敷地の北側 |
| 中身 | 住宅・オフィス・店舗 | 港区立みなと芸術センター |
| 竣工 | 2024年11月(完了済み) | 2027年5月(予定) |
同じ建築でありながら、住宅とホールを別のボリュームに振り分けているわけです。
高層棟の縦の構成
| 階 | 用途 |
|---|---|
| 14〜46F | 住宅「WORLD TOWER RESIDENCE」(389戸) |
| 13F | 共用施設(バーラウンジ、パーティルーム、ゲストルーム、ジム、ゴルフレンジ等) |
| 7〜12F | 賃貸オフィス「WTC annex」 |
| 3〜6F | 店舗、文化芸術ホール |
| 3F | 住宅エントランス |
| 2F | 防災センター、駐輪場 |
| 1F | 店舗 |
| B2〜B1 | 駐車場 |
住戸は専有面積40.15㎡〜148.21㎡、1LDK〜3LDK。オフィス「WTC annex」は基準階貸室面積939.66㎡(約284坪)、天井高2.8mです。
13階の共用部インテリアデザインはパトリシア・ウルキオラが監修しています。
ホールは3〜9階に入る
港区立みなと芸術センターは、地上3階から9階にオープンします。
つまり断面で見ると、
- 3〜9階の北側=ホール(中層棟)
- 3〜12階の南側=店舗・オフィス
- 13階以上=住宅(高層棟)
という構成です。住宅の足元にホールが横並びで入るのではなく、住宅が乗る低層部の一部にホールが収まっている形になります。
住宅エントランスが3階にあるのもポイントです。歩行者デッキのレベル(3階)でエントランスとホールが同じ階になる——住民と来館者が同じレベルで出入りする設計です。
建物の構成と中層棟の位置がこちらです。



港区立みなと芸術センター「m〜m」とは
ホール側の中身も見ておきましょう。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | 港区立みなと芸術センター |
| 愛称 | m〜m(むーむ)(公募により決定) |
| 開館 | 2027年11月1日(予定) |
| 所在 | 建物の地上3〜9階 |
| 劇場 | 客席約600席のプロセニアム形式 |
| ホール | 約100席の可動式観覧席を設えたコモンスペース |
| その他 | スタジオ、多目的ルーム |
愛称の「m〜m」には意味が込められています。mはminato(港)とme(私)を表し、地域と私の結びつきを示す。響きは「無」から生み出す「無限大」の可能性を表すとされています。
プログラム・ディレクターには相馬千秋氏が就任しました。
施設の目的は「鑑賞」だけではありません。文化芸術の鑑賞、参加及び創造活動を推進し、人材育成を図る——つまり「観る」「参加する」「創る」の3つを担う施設です。スタジオや多目的ルームがワークショップや稽古に使えるのは、そのためです。
なぜこの組み合わせが成立したのか
公立ホールと分譲タワマンが同じ建物に入るというのは、決して一般的ではありません。成立の理由は3つあります。
① 港区が地権者だった
この場所には東京都交通局大門庁舎などがありました。港区が土地を持つ権利者として組合に参加し、権利変換によって床(=ホール)を取得するという仕組みです。区が単独で土地を買って建てるのではなく、再開発の枠組みの中で文化施設を手に入れたことになります。
② 段階的に建てられる敷地だった
高層棟を先に建て、その後に中層棟を建てる。この工程により、マンションの販売・引き渡しを待たずに公共施設の工事を続けられます。実際、住宅は2024年11月竣工・2025年3月入居開始、ホールは2027年5月竣工・11月開館という時間差があります。
③ 駅前立地が両方に効く
浜松町駅から徒歩2分。ホールにとっては集客、住宅にとっては利便性。同じ立地価値を2つの用途が分け合っている構図です。
周辺との接続
この事業は単独では完結しません。
- 3階レベルの連絡通路で世界貿易センタービルディング南館と接続
- 南館を通って浜松町駅へ行き来できる
- 浜松町駅西口地区計画の中で、A街区・B街区と一体の歩行者ネットワークを形成
つまり駅からホールまで、雨に濡れずに3階レベルで到達できるわけです。600席の劇場にとって、これは大きな価値になります。
スケジュール
| 時期 | できごと |
|---|---|
| 2017年1月 | 都市計画決定 |
| 2018年11月 | 市街地再開発組合 設立 |
| 2020年3月 | 権利変換認可 |
| 2021年3月 | 建築工事着工 |
| 2024年11月 | 第一期工事竣工(共同住宅・事務所等) |
| 2025年3月 | WORLD TOWER RESIDENCE 入居開始 |
| 2027年5月 | 第二期工事竣工予定(港区立みなと芸術センター・商業施設等) |
| 2027年11月1日 | みなと芸術センター m〜m 開館予定 |
竣工予定は当初2026年12月24日でしたが、2027年5月17日に変更されています。開館は2027年11月です。
まとめ:住宅とホールの組み合わせ方
- 浜松町駅前・C地区の地上46階・高さ約181mの複合建築
- 高層棟(住宅・オフィス)と中層棟(ホール)に分けて段階整備
- 住宅は389戸、13階に共用施設、7〜12階に「WTC annex」
- 住宅は2024年11月竣工・2025年3月入居開始(完了済み)
- ホールは3〜9階、2027年5月竣工・11月1日開館予定
- 港区立みなと芸術センター「m〜m」——約600席の劇場+約100席のホール
- 港区が地権者として組合に参加し、権利変換で床を取得
- 3階の連絡通路で南館経由で浜松町駅と接続
再開発で公共施設が入る例は多くありますが、その多くは区民センターや図書館です。約600席の本格的な劇場が分譲タワマンと同じ建物に入るケースは珍しい。
しかもこの劇場、駅から3階レベルで直結します。公演後に雨の中を歩かなくていい劇場は、東京でもそう多くありません。
2027年11月、浜松町駅前に「観る・参加する・創る」の拠点が開きます。
よくある質問
Q. 浜松町二丁目地区の再開発はいつ完成する?
住宅・オフィス等の第一期は2024年11月に竣工済みです。港区立みなと芸術センターと商業施設を含む第二期は2027年5月竣工予定、ホールの開館は2027年11月1日予定です。
Q. WORLD TOWER RESIDENCEの規模は?
地上46階・地下2階、高さ180.98m(最高185.43m)、総戸数389戸です。専有面積は40.15㎡〜148.21㎡、1LDK〜3LDKです。
Q. ホールはどこに入る?
建物の地上3〜9階です。敷地北側の中層棟に配置され、客席約600席のプロセニアム形式の劇場と、約100席の可動式観覧席を備えたホールなどが整備されます。
Q. 「m〜m」とは?
港区立みなと芸術センターの愛称で「むーむ」と読みます。公募で決定し、mはminato(港)とme(私)を表します。
Q. 浜松町駅からどうつながる?
3階レベルの連絡通路で世界貿易センタービルディング南館と接続し、南館を通って浜松町駅へ行き来できます。駅からは徒歩2分です。


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