【東京再開発マップ ⑦】渋谷

都市・再開発

―「100年に一度」の最終章は、2034年まで続く

建設中 計画中 竣工済

第7回は渋谷。「100年に一度の再開発」というフレーズが最も使われた街ですが、実はまだ半分も終わっていません

東急・JR東日本・東京メトロの3社は2025年5月、渋谷駅街区計画の今後を発表しました。2030年度に渋谷駅および駅を中心とした歩行者ネットワークが概成し、翌年度に渋谷スクランブルスクエア第Ⅱ期(中央棟・西棟)が完成。駅機能や都市基盤施設が段階的に完成・開業を迎える2030年度〜2034年度を「まちびらき最終章」と位置づけています。ハチ公広場などを含めた全体の完成は2034年度の予定です。 Tokyu

2012年の渋谷ヒカリエ開業から数えて、22年がかりということになります。


① 渋谷スクランブルスクエア第Ⅱ期(中央棟・西棟)

総延べ面積 約95,000㎡/2031年度竣工

中央棟は地上10階・地下2階、高さ約61m。西棟は地上13階・地下3階、高さ約76m。設計は日建設計・東急設計コンサルタント・JR東日本建築設計・メトロ開発JV、施工は東急建設で、2025年5月に着工しました。2019年11月に開業した東棟(地上47階、高さ229.697m)と合わせると延べ面積は約276,000㎡になります。中央棟は東棟と西棟の間で、山手線・埼京線の線路とホームを覆う形で建設されます。商業フロアは完成済みの第Ⅰ期(東棟)と併せて1フロアあたりの売場面積が最大約6,000㎡となり、首都圏最大級の商業施設になります。 Skyskysky + 2

注目すべきは工期の変更です。第Ⅱ期の完成は2027年度から2031年度に見直され、約4年遅れることになりました。 Skyskysky

線路の上に建てるという条件が、この遅れの背景にあります。営業中のターミナル駅の直上に人工地盤を架け、その上に建物を積む。作業時間は終電後の数時間に限られ、工程は天候にも左右される。渋谷が長引く理由は、規模ではなく施工条件にあります。

② Shibuya Upper West Project(東急百貨店本店跡地)

延べ面積 約119,000㎡/2027年度竣工

東急百貨店本店の跡地に、リテール、ミュージアム、ホテル、レジデンスで構成する地上34階・地下4階、高さ155.7m、延べ面積119,041㎡の超高層ビルを新設します。2025年1月に新築着工しました。東急、L Catterton Real Estate(LVMHグループの不動産開発投資会社)、東急百貨店の3社による共同事業で、洗練されたライフスタイルを提案するリテール、ワールドクラスのスモールラグジュアリーホテル、ハイクオリティな都市型居住を実現する賃貸レジデンスを有し、隣接するBunkamuraとのアート&カルチャーにおける融合により渋谷の新しいランドマークを目指します。建築デザインには、その土地の持つ背景やランドスケープに合わせたサステナブルでコンセプチュアルな空間づくりを得意とするノルウェーの建築・デザイン事務所「Snøhetta(スノヘッタ)」を起用。ホテルは「Swire Hotels」が展開するコンテンポラリーラグジュアリーブランド「The House Collective」が日本初進出します。キーコンセプトは「Tokyo’s Urban Retreat」。敷地面積はBunkamuraを含めて13,675㎡です。隣接するBunkamuraは2023年4月上旬から2027年度中まで一部を除き休館しています。 Skyskysky + 4

立地の読み解きが面白いプロジェクトです。神山町や富ヶ谷を中心とした「奥渋」エリアは隠れ家的な飲食店やセレクトショップが独自のコミュニティを形成していますが、これまで「駅から少し遠い」という心理的ハードルがありました。このプロジェクトが「中間拠点」となることで、駅から奥渋への歩行者動線がよりスムーズかつ魅力的になるという仮説が立てられます。 Fudousan-st

駅前を高密度化するのではなく、駅から離れた斜面に拠点を置いて人の流れを引き延ばす。渋谷の再開発の中では、やや異質で戦略的な位置づけです。

③ 渋谷二丁目西地区第一種市街地再開発事業

敷地面積 約18,800㎡/延べ約322,200㎡/2029年度竣工予定

規模だけなら、これが渋谷エリア最大です。A街区は地上5階・地下1階、高さ約50m、延べ約4,200㎡の店舗等。B街区は地上41階・地下4階、高さ約208m、延べ約255,000㎡の事務所・店舗・ホテル等。C街区は地上41階・地下2階、高さ約175m、延べ約63,000㎡の住宅・生活支援施設等。渋谷二丁目西地区市街地再開発組合、東京建物、UR都市機構が推進し、東京建物等を事業主体とする任意の共同建て替え事業(C街区)とともに再開発プロジェクト「Shibuya REGENERATION Project」を構成します。B街区にあった「みずほ銀行渋谷事務センター」は2025年3月〜2026年12月の工期で解体中。C街区の「東建インターナショナルビル」も2025年7月〜2026年6月30日の工期で解体されました。2025年度の権利変換計画認可を経て同年度着工、2029年度の竣工を目指しています。 SkyskyskySkyskysky

用途構成は明快です。自動車交通の利便性の高い立地を活かした国際空港や地方都市を結ぶバスターミナルの整備、渋谷駅中心地区から周辺市街地へデッキレベルでつながる歩行者ネットワークの整備、にぎわいと憩いの核となる大規模広場の整備により、渋谷駅周辺地区のにぎわい及び回遊性の向上を図ります。またIT・クリエイティブ産業のビジネス拠点としての発展に向け、次世代イノベーションの創出に資する人材育成拠点、国際水準の宿泊施設、高度人材の入居を促す国際水準の居住施設を整備します。なお2026年公示地価では渋谷区桜丘町が前年比+29.0%と東京都全用途で上昇率1位を記録しています。 Tokyo Metropolitan GovernmentIna-gr

④⑤ 渋谷駅を囲む中規模案件

道玄坂二丁目南地区第一種市街地再開発事業は地上30階・高さ約152mで工事が進行中。渋谷区の都市再生ステップアップ・プロジェクト「(渋谷地区)渋谷一丁目地区共同開発事業」も建設が進んでいます。渋谷区の市街地再開発事業としては、渋谷二丁目西地区、渋谷駅桜丘口地区、渋谷二丁目17地区、神宮前六丁目地区、道玄坂二丁目南地区が都市計画決定されています。 Cocolog-niftyShibuya Ward

渋谷駅を中心に半径500m以内で5つの市街地再開発事業が同時並行という密度は、東京でもここだけです。

⑥ 神宮外苑地区第一種市街地再開発事業

2030年まちびらき/2038年2月全体完成

このシリーズで唯一、賛否が大きく分かれている事業です。事実関係を整理します。

2025年9月の事業計画変更により全体の整備スケジュールが見直され、全体完成時期は当初の2035年・37年頃から2038年2月へ先延ばしされました。一方で2026年2月3日には再開発の第一弾となる「新秩父宮ラグビー場(Ⅰ期)」が着工し、2030年の開業に向けて動き出しています。秩父宮ラグビー場や神宮球場が場所を入れ替えながら建て替わり、オフィスやホテル、商業機能が一体となった街が誕生する計画です。 Shutten-watch

樹木の扱いについては、行政側からも継続的に要請が出ています。港区は2023年9月と2024年7月に施行者へ情報発信および銀杏並木の保全について要請。2025年10月には特別区道第1,107号線のいちょうの保全について改めて要請しました。施行者は2025年1月と2026年1月に、港区道等のいちょうの移植検討のための調査結果を公表しています。 Minato City

東京都は制度面をこう説明しています。センター・コア・エリアにおいて長期未供用の区域のある都市計画公園・緑地を含む区域を対象に公園まちづくり制度を活用することで、まちづくりと公園整備を両立させながら防災性の向上や緑豊かな都市空間の形成が可能になる、という枠組みです。また、まちづくり指針では絵画館やいちょう並木の眺望景観や風致を保全しつつ、地区の中心となるまとまった広場空間の確保や青山通り沿道等における土地の高度利用によるにぎわい創出を誘導方針として示しており、今回の計画は競技場などの容積を抑えて青山通りやスタジアム通り側にその容積を配分するものだと説明されています。 Tokyo Metropolitan Government

一方で、樹木の伐採本数、超高層棟の景観への影響、都市計画公園に民間開発を誘導する制度そのものの妥当性については、市民団体や専門家から強い批判が続いています。日本イコモス国内委員会をはじめとする団体が計画の見直しを求めてきた経緯もあり、訴訟も提起されています。

この事業をどう評価するかは読者それぞれの判断ですが、建築や都市計画を学ぶ立場としては、「容積の適正配分」という制度運用が公園でどこまで許されるのかという論点を押さえておく価値があると思います。

⑦ 西武渋谷店 ― 百貨店が消える街

西武渋谷店は2026年9月30日をもって閉店します。跡地活用について地権者側から具体的な計画は現時点で公表されていません。ただし渋谷の一等地であることから、何らかの建て替えや再整備が進む可能性は極めて高いとみられます。敷地は地権者が分かれており、それぞれ単独で大規模な超高層ビルを建てるにはやや手狭なため、「都市再生特別措置法」などを活用した一体的な再開発が有力とされています。 Kenbiya

東急百貨店本店(2023年閉店)、東急百貨店東横店(2020年閉店)、そして西武渋谷店。渋谷から百貨店という業態が完全に消えます。

日本経済新聞は2026年5月、再開発ビル群の谷間に沈む西武渋谷店を取り上げ、跡地に「休める場所」が求められていると報じました。 Nikkei

高密度化が進んだ街で、次に希少になるのは床ではなく何もしなくていい場所である、という指摘です。渋谷の次の10年を考えるうえで、いちばん本質的な論点かもしれません。


まとめ:渋谷の10年後

事業規模完成時期
スクランブルスクエア第Ⅱ期延べ約95,000㎡/61m・76m2031年度
Shibuya Upper West Project延べ約119,000㎡/156m2027年度
渋谷二丁目西地区約18,800㎡/208m・175m2029年度
道玄坂二丁目南地区152m建設中
神宮外苑地区2030年まちびらき/2038年2月
渋谷駅街区 全体2034年度

渋谷の再開発は、他のエリアと決定的に違う点があります。谷地形です。丸の内や品川が平坦地に床を積むのに対し、渋谷は谷底の駅と、その周囲の坂の上を垂直動線でつなぐという課題を抱えている。だからスクランブルスクエアもヒカリエもストリームも、建物というより巨大な階段室として設計されている。

東急は本計画を「駅とまちが一体となった都市再生に関するモデル的な計画」と位置づけています。ハチ公広場が完成する2034年度、その22年がかりの答え合わせができることになります。 Tokyu

そのとき、西武渋谷店の跡地に何が建っているか。渋谷が単なる高層ビル街になるのか、それとも「休める場所」を持った街になるのか。個人的にはそこが見どころだと思っています。

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