【東京再開発マップ ⑥】品川・高輪・大崎

都市・再開発

― リニアが来る前提で組まれた、28haの巨大パズル

建設中 計画中 竣工済 インフラ事業

第6回は品川・高輪・大崎。⑤浜松町・田町から続く東京サウスゲートの本丸です。

このエリアの特殊性は、まだ開業していない交通機関を前提に街が組まれていること。品川駅は世界につながる羽田空港への玄関口であり、国内の都市を結ぶリニア中央新幹線の始発駅となる予定で、鉄道や道路等の基盤整備とともに各地区のまちづくりが計画的に進められています。

規模も突出しています。品川駅・高輪ゲートウェイ駅周辺で進行しているプロジェクトの総再開発面積は約28ヘクタール(2024年4月現在)。晴海五丁目西地区の約18haや第2六本木ヒルズ(六本木五丁目西地区)の約10haを上回り、さらにリニア中央新幹線の開通や環状4号線の延伸が加わることでエリア全体の大変貌が予測されています。


① TAKANAWA GATEWAY CITY(品川開発プロジェクト)

約13ha/2025年3月まちびらき、2026年に全体開業

JR東日本が旧国鉄清算事業団から取得した品川駅北側の広大な鉄道用地(約13ヘクタール)を舞台とするプロジェクトです。<cite index=”176-1″>約6,000億円を投じた国内最大級の再開発で、2025年3月27日に”まちびらき”を迎え、駅直結のツインタワー「THE LINKPILLAR 1(North/South)」とJR高輪ゲートウェイ駅が全面開業しました。</cite>

2026年春には複合棟II、文化創造棟、住宅棟など残りの施設が開業し、プロジェクト全体が完成する予定です。<cite index=”174-1″>文化創造棟は「MoN Takanawa: The Museum of Narratives」として開業しました。</cite>

このプロジェクトで最も建築的に興味深いのは、遺構の扱いです。2020年に明治初期の鉄道遺構「高輪築堤」が出土し、その歴史的価値から現状保存され、街づくりに活用される予定です。単なる商業開発ではなく、地域の歴史を継承する街として設計されている点が特徴のひとつといえます。

日本の鉄道発祥の遺構の上に、リニアの玄関口をつくる。時間軸の圧縮という意味で、これ以上ないくらい象徴的な敷地だと思います。

② (仮称)品川駅西口地区A地区新築計画

延べ面積 約31万㎡/2029年1月完了予定

旧シナガワグース(旧ホテルパシフィック東京)跡地です。地番は港区高輪三丁目417番31、用途は事務所・物販店舗・飲食店・集会場・ホテル・地域冷暖房施設・自動車車庫・バス乗降場。延べ面積311,810.76㎡、地上29階・地下4階、高さ152.36m。着工は2025年5月31日、完了予定は2029年1月31日で、建設・設計・施工は京浜急行電鉄と大成建設です。

解体は2021年11月に着手し、2022年11月に24階まで、2023年7月に地上部が完了、2025年5月に解体工事完了と同時に新築工事へ移行しました。2020年4月にはトヨタ自動車を共同事業者として迎えることが発表されています。

トヨタは2029年度に品川で新東京本社を開業する予定です。

解体だけで3年半という数字が、都心の超高層建替えの実際を物語っています。

③ (仮称)高輪三丁目品川駅前地区(品川駅西口C地区)

延べ面積 約19.4万㎡/地上30階・高さ約155m

品川駅西口地区はA・B・C-1・C-2・Dの5地区に区分され、A地区とC-1・C-2地区に複合ビルを建設する計画です。C-1地区は地上30階・地下3階、高さ約155m、延べ面積約194,000㎡で、事務所・店舗・住居・産業支援施設が入ります。C-2地区は地上1階・約10m、延べ約170㎡の集会場。B地区には区立高輪の森公園、税務署、大型ホテルなどが立地しています。

歩行者動線の設計が要です。品川駅西口からA地区の間には国道15号が走るため、西口からA地区まで国道上空をデッキでつなぎ、品川駅からの人の流れを直接西口地区内に引き込みます。地区内には歩行者専用通路も設置され、回遊性の向上が図られます。

A地区が「駅と公園を連続的につなぎ駅前のにぎわい形成に寄与する広場、公園と連続したまとまりある緑地」をテーマとするのに対し、C地区は「品川駅からの人の流れを受け止める広場、緑豊かな地域の憩いの場となる広場」をイメージしています。

④ 泉岳寺駅地区第二種市街地再開発事業

敷地面積 約8,486㎡/2031年度竣工見通し

東急不動産・京浜急行電鉄・鹿島建設が特定建築者となり、2024年11月に着工。地上30階・高さ約145m・延べ床面積約110,644㎡の複合ビルが建設されます。用途は住宅(約350戸)・業務・商業で、約250台の駐車場を備えるほか、泉岳寺駅に新たな出入口が南北2カ所設けられます。同時に都営浅草線のホーム・コンコース拡張やエレベーター増設など駅の大規模改良も実施され、混雑解消と乗降環境の改善が見込まれます。竣工は2031年度の見通しで、品川エリアの再開発プロジェクトの中では最も完成時期が後ろ倒しになっています。

京急は「泉岳寺駅の改良と一体的に、国際交流拠点として整備が進むエリアの新たなランドマークとして、鉄道施設や幹線道路等の都市基盤の整備と併せて住宅・オフィス・商業施設からなる複合ビルが誕生する」と説明しています。

なお竣工時期は資料によって差があり、2028年3月頃とする記載もあります。第二種市街地再開発事業(施行者が用地を全面買収する方式)で駅改良と一体化しているため、鉄道工事の進捗に左右される構造です。

⑤ 品川駅街区地区

計画進行中

品川駅そのものと一体化する形で進められる再開発で、JR東日本と京浜急行電鉄が連携して推進しています。品川駅は東海道新幹線・東海道線・横須賀線・京急線が乗り入れる国内有数のターミナル駅であり、将来的にはリニア中央新幹線の始発駅、東京メトロ南北線の延伸駅としての役割も担う予定です。駅の抜本的な改良と合わせて複数の超高層複合ビルの建設が計画され、東西連絡通路の整備やバスターミナルの再配置も見込まれています。具体的な建物スペックや着工時期は現在も計画が進行中です。

「駅を建て替えながらリニアの発着施設を地下に掘る」という条件下で、地上にどれだけの床を載せられるか。②八重洲・日本橋の首都高地下化と並ぶ、土木と建築の境界にある事業です。

⑥⑦ 大崎 ― 山手線南西部の静かな更新

大崎は品川ほど話題になりませんが、着実に建て替わっています。

大崎ステーションレジデンス(大崎駅西口F南地区第一種市街地再開発事業)は、地上37階・地下3階、高さ143m、総戸数445戸のタワーマンションで2026年2月に竣工。敷地面積5,054.42㎡、延床面積53,400㎡、設計は日建設計、施工は前田建設工業、参加組合員は住友不動産です。地下3階〜地下1階に駐車場等、1階に店舗・保育所等、2階〜5階に事務所・公益施設、7階〜36階に住宅を配置し、26階〜36階の106戸が賃貸住宅となっています。

再開発区域内は老朽化した小規模な木造住宅、集合住宅、店舗併用建物等が混在し、狭隘道路による防災上の課題、広場や緑地等のオープンスペースの不足といった課題を抱えていました。

次はその隣です。「大崎駅西口F東地区」は地上24階、高さ約142m、敷地面積約9,400㎡、延床面積約9万800㎡で、事業主は大崎西口駅前地区市街地再開発準備組合。用途は事務所・商業・住宅等。大崎駅とデッキで接続され、F南地区の大崎ステーションレジデンスともデッキで接続。両デッキ間を結ぶ通路も整備されるため、大崎駅西側の歩行者ネットワークが拡大されます。

東口側でも「大崎駅東口第4西地区第一種市街地再開発事業」が2026年1月の都市計画決定を目指して動いており、大崎リバーウォークガーデン(40階149m・20階104m)も進行中です。

大崎は1990年代から「山手線で唯一、副都心指定を受けずに再開発が進んだ駅」という独特の経緯を持ちます。デッキで結ぶ手法が一貫していて、都市デザインの実験場としても読み解けるエリアです。


まとめ:品川・高輪・大崎の10年後

事業規模完成時期
TAKANAWA GATEWAY CITY約13ha2026年(全体)
品川駅西口A地区延べ約31万㎡/152m2029年1月
品川駅西口C地区延べ約19.4万㎡/155m2030年代
泉岳寺駅地区約8,486㎡/145m2031年度
品川駅街区地区未確定未定
大崎駅西口F東地区約9,400㎡/142m2030年代

このエリアを他と分けているのは、「駅前広場」という概念が消えつつある点だと思います。品川では駅と街を結ぶのが平面の広場ではなく、国道15号上空のデッキであり、地下通路であり、人工地盤です。羽田空港への玄関口、リニアの始発駅、南北線分岐線の駅——複数の交通軸が重なる場所では、乗り換え動線そのものが都市空間になる。

一方で懸念もあります。①〜⑤で見てきたどのエリアよりも、ここは完成時期が交通インフラに依存しています。リニアの開業時期が動けば、街区の位置づけも変わる。2027年開業が事実上不可能となったいま、この28haがどのタイミングで「完成」するのかは、まだ誰にも見えていません。

高輪築堤の上に立つ街が、次の150年をどう始めるのか。それが決まるのはこれからです。

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