渋谷駅の東側、青山通りと六本木通りに挟まれた一帯で、渋谷エリア最大規模の再開発が進んでいます。「渋谷二丁目西地区第一種市街地再開発事業」、プロジェクト名は「Shibuya REGENERATION Project」です。
高さ約208mと約175mの41階建てタワー2棟。延床面積の合計は約32万㎡で、敷地面積・延床面積ともに渋谷エリア最大とされています。
ただしこの事業の本当のテーマは、ビルの大きさではありません。東京都の事業概要の冒頭には、こう並んでいます。バスターミナル、デッキの歩行者ネットワーク、大規模広場——つまり交通と回遊性です。
この記事では、渋谷の交通と回遊性がどう変わるのかを整理します。
事業の基本情報
地図:OpenStreetMap/位置・範囲は概略です。街区・デッキ・広場・バスターミナルの位置は公表資料をもとにした模式表示です。情報は2026年9月時点。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 事業名 | 渋谷二丁目西地区第一種市街地再開発事業(A・B街区) |
| プロジェクト名 | Shibuya REGENERATION Project |
| 所在地 | 東京都渋谷区渋谷二丁目12・13・14・16番地内 |
| 施行者 | 渋谷二丁目西地区市街地再開発組合 |
| 参加組合員 | 東京建物、UR都市機構 |
| 施行面積 | 約2.3ha(C街区を含む区域全体は約2.9ha) |
| 事業費 | 約1,800億円 |
| 位置 | 渋谷駅の東側、青山通り・六本木通り沿い |
事業は「1特区2事業」という構成です。
- A・B街区:市街地再開発事業(法定事業)
- C街区:東京建物等による任意の共同建て替え事業
この2つが同じ都市再生特別地区の中にあり、A・B・C街区一体のまちづくりを行います。
| 街区 | 規模 | 延床面積 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| A街区 | 地上5階・地下1階/高さ約44〜50m | 約2,940㎡ | 店舗、集会場、屋上広場等 |
| B街区 | 地上41階・地下4階/高さ約208m | 約246,850㎡ | 事務所、店舗、ホテル、人材育成拠点、バスターミナル、熱源機械室、駐車場等 |
| C街区 | 地上41階・地下2階/高さ約175m | 約63,000㎡ | 住宅、生活支援施設、駐車場等 |
プロジェクト全体では敷地約18,800㎡・延床約322,200㎡。B街区だけで約25万㎡あります。
ここにはみずほ銀行渋谷事務センター(1975年竣工・地上20階)と東建インターナショナルビル(1972年竣工)が建っていました。現在は解体工事中です。
完成イメージがこちらです。



変化①:バスターミナルができる
交通面で最大の変化がこれです。
東京都の事業概要は、この地区の特徴を「自動車交通の利便性の高い立地」と表現しています。青山通り(国道246号)と六本木通りという2本の幹線道路に面しているからです。
その立地を活かして、B街区に「国際空港や地方都市を結ぶバスターミナル」が整備されます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 位置 | B街区 |
| 役割 | 国際空港(羽田・成田)や地方都市を結ぶ |
| 立地 | 青山通り・六本木通りの幹線道路沿い |
現在、渋谷の高速バス・空港リムジンバスは渋谷マークシティの「渋谷マークシティ・バスターミナル」や路上の乗り場に分散しています。駅の東側にターミナルができることで、渋谷ヒカリエ側から直接バスに乗れるようになります。
この連載で扱ってきたYAESU CORE(国内最大級20バース)、浜松町(世界貿易センタービル)と同じく、都心のバス乗り場を建物内に集約する流れの一つです。
変化②:デッキで街がつながる
回遊性の面で最大の変化がこれです。
渋谷駅中心地区から周辺へデッキでつなぐ
東京都の事業概要には、「渋谷駅中心地区から周辺市街地へデッキレベルでつながる歩行者ネットワークの整備」とあります。
渋谷駅は谷底にあり、東側は宮益坂を上がった先の台地です。現在は、駅東口から青山方面へ向かうには坂を登り、大きな交差点を渡る必要があります。
このデッキが、前回の記事で扱った渋谷スクランブルスクエア第Ⅱ期の「2〜4階レベルのデッキネットワーク」とつながることで、
渋谷駅 → 渋谷ヒカリエ方面 → 渋谷二丁目西地区 → 青山方面
が地上に降りずに歩けるようになります。
青山通りを跨ぐ「横断デッキ」
特に重要なのが、A街区とB街区の間です。
A街区からB街区へは青山通りを挟みますが、約8mの横断デッキが整備されます。これにより街の分断を解消し、より便利に回遊できるようになります。
青山通り(国道246号)は、渋谷と青山を結ぶ大動脈であると同時に、歩行者にとっては大きな障壁です。上空には首都高速3号渋谷線も走っています。その道路を幅約8mのデッキで跨ぐ——これがこの事業の回遊性における核心です。
A街区の屋上広場
A街区の用途には「屋上広場」が含まれています。地上5階・高さ約44〜50mの低層棟の屋上を広場にし、デッキとつなげる構成です。
デッキ → 屋上広場 → 横断デッキ → B街区という上空の歩行者ルートが形成されます。
断面構成と歩行者ネットワークのイメージがこちらです。



変化③:大規模広場が生まれる
B街区には約2,220㎡の大規模広場が整備されます。
東京都の事業概要では、この広場を「渋谷駅周辺のにぎわいと憩いの核」と位置づけています。
渋谷駅の東側は、渋谷ヒカリエや渋谷クロスタワーなどの大型ビルが並ぶ一方で、人が滞留できる広場が少ないエリアでした。駅から少し離れた位置に2,000㎡超の広場ができることで、駅前の混雑を分散させる効果も期待されます。
さらに、この広場は防災面でも機能します。事業概要には帰宅困難者の一時滞在施設の整備が明記されています。大規模ターミナル駅の近くに、滞留空間と一時滞在施設をセットで確保する構成です。
変化④:人が集まる理由をつくる
回遊性は、道をつなぐだけでは生まれません。そこに行く理由が必要です。B街区とC街区には、そのための機能が用意されています。
| 機能 | 位置 | 内容 |
|---|---|---|
| オフィス | B街区 | IT・クリエイティブ産業のビジネス拠点 |
| 人材育成拠点 | B街区 | 次世代イノベーションの創出に資する人材育成 |
| ホテル | B街区 4〜9階 | ビジネス・観光の短期滞在ニーズを満たす国際水準の宿泊施設 |
| レジデンス | C街区 | 高度人材の入居を促す国際水準の居住施設 |
C街区のレジデンスは、多言語対応コンシェルジュ、外国人対応の幼児施設、ワーキングスペースなどを備える計画です。
つまり働く(オフィス)・学ぶ(人材育成)・泊まる(ホテル)・住む(レジデンス)がそろい、そこへバスで来て、デッキで歩いて回る——交通と回遊性と機能が一体で設計されています。
環境・防災
回遊性とは別に、街の基盤も強化されます。
- 帰宅困難者の一時滞在施設
- 自立・分散型エネルギーシステムの導入(B街区に熱源機械室)
- 建物の省エネルギー化による環境負荷低減
災害時にも電力と熱を自前で確保できる設計で、駅周辺の防災対応力を高めます。
スケジュール
| 時期 | できごと |
|---|---|
| 2022年3月 | 都市計画決定(都市再生特別地区・地区計画等) |
| 2023年1月31日 | 市街地再開発組合 設立 |
| 2025年3月〜 | B街区のみずほ銀行渋谷事務センター 解体(〜2026年12月) |
| 2025年7月〜 | C街区の東建インターナショナルビル 解体(〜2026年6月) |
| 2025年度 | 権利変換計画認可・着工(予定) |
| 2029年度 | 竣工予定 |
2026年9月現在は既存建物の解体工事の段階です。
渋谷全体の中での位置づけ
渋谷の再開発は、駅を中心に四方へ広がっています。
| 方角 | 主な事業 |
|---|---|
| 駅直上 | 渋谷スクランブルスクエア(第Ⅰ期2019年/第Ⅱ期2031年度) |
| 東(宮益坂側) | 渋谷ヒカリエ、渋谷二丁目西地区(2029年度)、宮益坂地区 |
| 南 | 渋谷ストリーム、渋谷サクラステージ |
| 西 | Shibuya Upper West Project(2029年度)、道玄坂二丁目南地区 |
渋谷二丁目西地区は、駅の東側の「奥」を担う位置にあります。渋谷スクランブルスクエア第Ⅱ期が駅の中の動線を作り、渋谷二丁目西地区が駅から東へ延びる動線を作る——2つの事業がデッキでつながって初めて意味を持つ関係です。
まとめ:交通と回遊性はこう変わる
交通
- B街区に空港・地方都市を結ぶバスターミナル
- 青山通り・六本木通りという幹線道路沿いの立地を活かす
回遊性
3. 渋谷駅中心地区から周辺市街地へデッキでつなぐ歩行者ネットワーク
4. 青山通りを跨ぐ約8mの横断デッキで、A街区とB街区の分断を解消
5. A街区の屋上広場を上空ルートの一部に
6. B街区に約2,220㎡の大規模広場(にぎわいと憩いの核・防災拠点)
人が集まる理由
7. オフィス・人材育成拠点・ホテル(4〜9階)・国際水準レジデンス
8. 区域約2.9ha・延床約32万㎡、渋谷エリア最大規模
渋谷の東側は、坂と幹線道路と首都高によって、駅から切り離されがちなエリアでした。この事業は、その3つの障壁をデッキと広場とバスターミナルで乗り越えようとしています。
208mのタワーは目立ちますが、渋谷の歩き方を変えるのは、青山通りの上に架かる幅8mのデッキの方です。
2029年度、渋谷駅の東側は「通り過ぎる場所」から「歩いて巡る場所」に変わります。
よくある質問
Q. 渋谷二丁目西地区の再開発はいつ完成する?
2029年度の竣工予定です。2026年9月時点では既存建物の解体工事が進んでいます。
Q. どんな建物が建つ?
A街区に地上5階・高さ約44〜50mの店舗・屋上広場の低層棟、B街区に地上41階・高さ約208mのオフィス・ホテル・バスターミナル等の超高層棟、C街区に地上41階・高さ約175mの住宅棟が建ちます。
Q. バスターミナルはどこにできる?
B街区に、国際空港や地方都市を結ぶバスターミナルが整備されます。
Q. 青山通りは渡りやすくなる?
A街区とB街区の間に、青山通りを跨ぐ約8mの横断デッキが整備され、街の分断を解消する計画です。
Q. 以前は何があった?
B街区には「みずほ銀行渋谷事務センター」(1975年竣工)、C街区には「東建インターナショナルビル」(1972年竣工)がありました。


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