1. 静岡・東静岡に計画される「新アリーナ」とは?
静岡市は、JR東静岡駅北口の市有地に、多目的大規模アリーナを整備する計画を進めています。想定されているのは、**8,000席以上(最大約1万人収容)**の屋内アリーナで、Bリーグのトップカテゴリー対応のバスケットボール試合や、大規模な音楽ツアークラスのコンサートが開催できる規模です。静岡市+2静岡市+2
アリーナは、同じ東静岡エリアにあるグランシップや、整備が検討されている新県立中央図書館との連携も想定されており、スポーツ・文化・教育の拠点として周辺まちづくりと一体的に開発するビジョンが描かれています。静岡市+1
主なスペックと特徴
- 収容規模:8,000〜10,000人程度(音楽・スポーツともに)静岡市
- 立地:JR東静岡駅・静鉄長沼駅に近接し、両駅をペデストリアンデッキで接続する計画静岡市
- 機能:
- VIPルーム・プレミアムラウンジ
- セントラルキッチン
- トラックがそのままアリーナ内へ搬入できるバックスペース
- 災害時は物資集積・避難所として活用できる防災拠点機能静岡市+1
- 事業スキーム:PFI(BT+コンセッション方式)で、設計・建設・運営を一体的に民間へ委ね、市は運営費を負担しない形を想定。市の負担上限は約300億円程度とされています。静岡市+1
- スケジュール案:2024年度 基本計画決定 → 2025〜26年度 事業者選定 → 2026〜29年度 設計・建設 → 2030年春オープンを目標。静岡市+1
市としては、人口減少・少子化が進む中で、「観る」スポーツやエンタメを核にした都市の魅力づくり・経済活性化・若者定着を狙う“投資施設”として位置づけています。静岡市
2. 寄付金が集まらない…300億円計画と3,800万円のギャップ
このアリーナ計画では、市の負担を少しでも減らすため、市民や企業からの寄付金募集が並行して行われています。静岡市は「みんなで創ろう!夢の新アリーナ」というキャンペーンを立ち上げ、ふるさと納税や企業寄付を呼び掛けています。静岡市+1
しかし、報道によれば、事業費約300億円に対して、2025年10月末時点の寄付額はおよそ3,700〜3,800万円程度にとどまっているとされ、同規模の他都市アリーナと比べてかなり見劣りする状態です。TBS NEWS DIG+2YouTube+2
なぜ寄付が伸びないのか?考えられる要因
① 「本当に必要なのか」という市民感情
- アリーナ整備には約300億円という巨額の投資が必要になる一方で、
教育・福祉・老朽インフラ更新・防災など「他にもお金をかけるべき場所があるのでは?」という声が強い。 - 静岡市では、過去30年近くアリーナ構想が浮かんでは消える歴史もあり、「また大風呂敷だけ広げて終わるのでは」といった不信感も一部で指摘されています。アットエス+1
② ビジネスモデルへの漠然とした不安
検討委員会の資料では、8,000席以上の規模であれば運営段階では黒字が見込まれる一方、建設費まで含めると不足額が生じるとの試算が示されており、収支の前提や稼働率に対する質問・懸念が委員から相次いでいます。静岡市+1
「本当に採算が取れるのか」「将来、市民負担が膨らむのではないか」といった不安が、寄付をためらわせる一因になっていると考えられます。
③ 「民間主導」と「寄付」のメッセージがかみ合っていない
PFI・コンセッション方式で民間事業者が運営・収益を得るモデルである一方で、「市民の寄付で建設費を支援してください」という呼びかけは、市民から見るとやや分かりにくい構図です。静岡市+1
「儲かるなら民間に任せればいいのでは?
そこに市民の寄付まで必要なの?」
という感覚とのギャップを埋めるストーリーづくりが、現時点では十分とは言い難い状況です。
④ 競合アリーナとの比較が逆風に
SNSや報道では、他地域の新アリーナでは数十億円規模の寄付が集まっているという事例が紹介される一方、静岡市は数千万円にとどまっていることが指摘され、「地元経済界の温度感が低いのでは」といった見方も出ています。X (formerly Twitter)+1
3. 計画そのものが抱える課題
寄付金問題のほかにも、アリーナ計画にはいくつかの構造的な課題があります。
① 軟弱地盤ゆえのコスト増リスク
検討委員会資料では、東静岡周辺は支持層が深い軟弱地盤であり、基礎工事費が高くなる可能性が指摘されています。スポーツイベントやコンサート時の振動への影響も懸念事項として挙げられており、地盤調査と対策がコストを押し上げる要因となり得ます。静岡市
② 交通渋滞・生活環境への影響
地元住民からは、大規模イベント時の交通渋滞や騒音への不安が強く、静岡市長が説明会で理解を求めている状況が報じられています。アットエス
市は、JR東静岡駅と静鉄長沼駅をペデストリアンデッキで結び、歩車分離を図るほか、公共交通の活用や周辺道路対策を検討していますが、**「日常の暮らしとイベント時のにぎわいをどう共存させるか」**は引き続き重要な論点です。静岡市
③ 採算性と利用料金のバランス
- 類似アリーナの稼働率は概ね5〜8割とされ、静岡でも一定の稼働が見込まれる一方、
- 事業者ヒアリングでは、「エコパアリーナと比べて利用料が高すぎると使われないが、事業性のためにはある程度高く設定せざるを得ない」という指摘も出ています。静岡市+1
採算性確保と、主催者・市民が「使いやすい料金」の両立は、計画の肝となる部分です。
④ コンテンツ競争の中で“選ばれるアリーナ”になれるか
全国的にアリーナ建設ラッシュが続く中、横浜アリーナや愛知県新体育館、日本ガイシホールなど、首都圏・東海圏にも強力なライバル施設が揃っています。事業者からは、「独自コンテンツを持たないと厳しい勝負になる」との声も上がっています。静岡市+1
4. 既存アリーナ「エコパ」とどう棲み分けるのか?
静岡県内にはすでに、いくつか大規模な屋内アリーナがあります。その中でも最大クラスが、袋井市の**小笠山総合運動公園エコパ(エコパアリーナ)**です。
エコパアリーナのスペック
- 正式名称:静岡アリーナ(愛称:エコパアリーナ)
- 所在地:袋井市愛野(JR愛野駅から徒歩約15分)
- 延床面積:約22,500㎡、地上5階建
- フロア面積:4,165㎡(85m×49m)
- 収容人数:最大10,000人(固定席4,868席+可動席1,440席+仮設席など)ecopa.jp
- 竣工:2001年(平成13年)
バレーボールやバスケットボール、各種インドアスポーツ、大規模コンサート、展示会など、多目的に利用されてきた県内最大級のアリーナです。ecopa.jp
加えて、
- 浜松アリーナ(最大約7,600席)
- このはなアリーナ(約4,000席)
- グランシップ(多目的ホールで最大約4,600席)
など、県内にはすでに複数の大規模施設が存在します。静岡県公式ウェブサイト+1
「エコパと競合するのでは?」という懸念
アリーナ検討の過程で、市が行った事業者ヒアリングでは、エコパアリーナなどとの関係について、さまざまな見方が示されています。静岡市
- 競合するという見方
- 「エコパアリーナ級の施設を東静岡に整備すると、現状のエコパの需要を取り合うことになる」
- 「エコパは利用料がかなり安く、競合を考慮する必要がある」
- 東静岡が優位という見方
- 「アクセスや宿泊環境を考えると、東静岡はエコパより圧倒的に魅力的」
- 「東静岡に同程度のキャパのアリーナができれば、コンサートはほとんどこちらに来るのではないか」
- 棲み分けは可能という見方
- 商圏・アクセス面から、浜松アリーナ・エコパアリーナとの棲み分けは可能
- 規模や種類を差別化し、競合先はむしろ名古屋の日本ガイシホールなど全国の大都市アリーナになる、という指摘も。静岡市+1
実際にどう差別化していくのか
静岡市の基本計画案では、次のような点で差別化を図ろうとしています。静岡市+1
- アクセス性の高さ
東海道新幹線・在来線・静鉄が使える「東静岡」という立地により、東京・名古屋・県内各地からの集客のしやすさで優位に立つ。 - Bリーグ新基準を満たすホームアリーナ
プロバスケットボールBリーグの新リーグ基準を満たす設備を整え、ベルテックス静岡などのホームアリーナとして位置づける。静岡市 - グランシップ・新県立中央図書館との連携
MICEや展示会、文化イベントと組み合わせた複合的なイベント誘致を想定。静岡市
一方で、**エコパ側から見れば、「県内に10,000人クラスのアリーナが2つになる」**ため、コンサートやスポーツ興行の取り合いが起これば稼働率低下リスクもあります。
結局のところ、
- 「県全体のイベントのパイが増え、両方が潤う」のか
- 「限られた需要を取り合い、どちらか(もしくは両方)が苦しくなる」のか
は、具体的な運営戦略・料金・アクセス改善・コンテンツ誘致力によって大きく変わってきます。
5. まとめ:静岡の新アリーナは“希望”にも“リスク”にもなり得る
静岡市の新アリーナ構想は、
- 8,000〜10,000人規模の多目的アリーナ
- 事業費約300億円、PFI・コンセッション方式
- プロスポーツと大規模エンタメの両方を取り込む「観るアリーナ」
として、都市の未来への大きな投資である一方、
- 寄付金がほとんど集まっていない現状
- 軟弱地盤・建設費高騰リスク
- 交通・生活環境への不安
- 既存施設(とくにエコパ)との競合問題
など、多くの課題も抱えています。静岡市+3TBS NEWS DIG+3静岡市+3
鍵になるのは、次の3点だと思います。
- 「なぜ東静岡に、この規模のアリーナが必要なのか」を、既存施設との関係も含めて丁寧に説明すること
- 寄付をお願いする以上、ビジネスモデル・市負担・リスクをできる限り“見える化”し、市民との信頼関係を築くこと
- Bリーグや音楽・MICEなどのコンテンツと連携し、「静岡ならでは」の価値を具体的に示すこと

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