大崎駅の西口で、性格の異なる2つの再開発が進んでいます。
F南地区は地上37階・高さ143mのタワーマンションで、2026年2月に竣工済み。一方F東地区は地上24階・高さ約142mのオフィスビルで、2026年度末の都市計画決定を目指す段階です。
高さはほぼ同じ143mと142m。ところが階数は37階と24階——ここに2つの事業の違いが表れています。この記事では、それぞれの概要を整理します。
2つの事業の比較
地図:OpenStreetMap/位置・範囲は概略です。街区やデッキの配置は公表資料をもとにした模式表示です。情報は2026年9月時点。
| F南地区 | F東地区 | |
|---|---|---|
| 正式名称 | 大崎駅西口F南地区第一種市街地再開発事業 | 大崎駅西口F東地区(大崎西口駅前地区) |
| 所在地 | 品川区大崎二丁目・三丁目 | 品川区大崎三丁目 |
| 面積 | 約0.6ha | 約1.3ha |
| 規模 | 地上37階・地下3階/高さ143m | 地上24階/高さ約142m |
| 延床面積 | 約53,400㎡ | 約90,800〜92,000㎡ |
| 主要用途 | 住宅(460戸)、事務所、店舗、保育所 | 事務所、商業、住宅 |
| 事業主体 | F南地区市街地再開発組合(参加組合員:住友不動産) | 大崎西口駅前地区市街地再開発準備組合 |
| 設計・施工 | 日建設計/前田建設工業 | 未定 |
| 状況 | 2026年2月中旬 竣工 | 2033〜2034年度 竣工予定 |
F南は住宅中心の細いタワー、F東はオフィス中心の太いビル。これが最も分かりやすい違いです。
F南は延床53,400㎡を37階に、F東は延床約9万㎡を24階に収めます。F東の方が延床は1.7倍なのに階数は少ない——つまりF東は1フロアが広いということです。オフィス用途に適した形です。
F南地区の完成した姿がこちらです。


F南地区:木造密集市街地の共同化
F南地区の事業目的は明快です。東京都の説明を整理します。
この地区は大崎駅西口駅前エリアにあって木造密集市街地でした。そこで建物の共同化により土地の高度利用・有効利用を図り、大崎副都心の拠点性を高めるとともに良質な都市型住宅の供給を図るという事業です。
整備される内容はこうです。
- 大崎駅南改札から後背地にいたる連続した歩行者デッキネットワーク
- 歩道状空地の整備
- 緑豊かなオープンスペースの形成
- 低層部への子育て支援施設や生活支援施設の整備
建物の中身
フロア構成が細かく公表されています。
| 階 | 用途 |
|---|---|
| 37F | 機械室等 |
| 7〜36F | 住宅(階高3.25〜3.4m) |
| 6F | 機械室 |
| 2〜5F | 事務所 |
| 2F | 店舗、公益施設 |
| 1F | 保育所等 |
| B1〜2F | 店舗 |
| B3〜B1F | 駐車場等 |
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 総戸数 | 460戸 |
| 敷地面積 | 5,054.42㎡ |
| 構造 | RC造(一部S造・SRC造)、中間免震構造 |
| 総事業費 | 約381億円 |
中間免震構造を採用しているのが技術的な特徴です。設計方針には制振および免震構造、ならびに災害復旧期間における居住生活が継続可能な計画と明記されています。
建築物環境計画書制度では分譲451戸となっていますが、住友不動産の高級賃貸マンションシリーズ「ラ・トゥール」になると言われています。分譲か賃貸かは公式発表を確認してください。
設計方針が明確
F南地区の設計方針は、都市デザインとして丁寧です。
| 方針 | 内容 |
|---|---|
| 街並みへの配慮 | 低層部に周辺建物と同程度の高さに基壇を設けることで街並みの連続性に配慮 |
| 住宅 | 多様なニーズに対応する都市型住宅 |
| 構造 | 制振・免震構造、災害復旧期間も居住継続可能 |
| 機能 | 公益施設等(保育所、店舗)、周辺の大型業務拠点を補完する事務所 |
| 防災 | 防災倉庫、災害時の一時避難場所 |
| 緑化 | 屋上や壁面の一部を緑化 |
「基壇(きだん)」という言葉が出てくるのが興味深い点です。143mのタワーを直接地面から立ち上げるのではなく、周辺の建物と同じ高さの低層部を先に作り、その上にタワーを載せるという手法です。木造密集市街地だった場所で、急激な高さの変化を緩和する配慮です。
20年かかった事業
| 時期 | できごと |
|---|---|
| 2006年10月1日 | 再開発協議会 発足 |
| 2007年8月5日 | 再開発準備組合 設立 |
| 2018年1月22日 | 地区計画 告示 |
| 2018年3月28日 | 都市計画決定 |
| 2021年3月5日 | 再開発組合 設立認可 |
| 2022年3月18・25日 | 権利変換計画認可 |
| 2022年3月1日 | 解体着手 |
| 2023年1月23日 | 新築工事 着工 |
| 2026年2月中旬 | 竣工 |
| 2027年2月末 | 事業完了予定 |
協議会発足から竣工まで約20年。木造密集市街地の共同化は、権利者が多く合意形成に時間がかかる典型例です。
F東地区:駅前の老朽マンション建て替え
続いてF東地区です。JR大崎駅から徒歩2分の約1.3haで計画されています。
事業の目的
F東地区の課題は老朽マンションです。
地区内にある旧耐震基準の老朽マンションなどを建て替えることで防災性の向上を図るとともに、立地を生かした業務・商業機能の導入を推進する、という方針です。
2018年にマンション再生まちづくり推進地区に指定されています。品川区が老朽マンションの建て替えを支援する制度上の枠組みです。
高低差を解消する
F東地区で最も重要な整備がこれです。
大崎駅と地区西側住宅市街地との高低差を解消して円滑なアクセス通路を確保するため、歩行者デッキやデッキ間を接続する通路など歩行者ネットワークを形成する。
大崎駅の西側は台地に向かって地形が上がっており、駅と住宅地の間に高低差があります。この段差が、駅から西側の住宅街への歩きにくさを生んでいました。
それをデッキとデッキ間の接続通路で解消します。あわせてエントランス広場を整備し、緑豊かな憩いの場を創出する計画です。
大崎駅にデッキで接続するオフィスビルという位置づけになります。
用途地域が2つに分かれている
F東地区の敷地条件は特殊です。
| 位置 | 用途地域 | 建ぺい率 | 容積率 |
|---|---|---|---|
| 街区東側(車道沿い) | 商業地域 | 80% | 500% |
| 街区西半分 | 準工業地域 | 60% | 300% |
同じ街区の中で容積率が500%と300%に分かれている状態です。これは大崎が工場街から副都心へ転換してきた歴史の名残です。
再開発によって用途地域や容積率が見直され、延床約9万㎡・高さ約142mの建物が可能になります。
F東地区の配置と鳥瞰イメージがこちらです。



F東地区のスケジュール
| 時期 | できごと |
|---|---|
| 2012年11月 | 大崎西口駅前まちづくり協議会 発足 |
| 2014年8月 | 大崎西口駅前地区再開発準備組合 設立 |
| 2018年 | マンション再生まちづくり推進地区に指定 |
| 2026年6月30日 | 品川区議会 建設委員会で近隣説明会の開催が報告 |
| 2026年度末 | 都市計画決定を目指す |
| 2027年度末 | 本組合 設立予定 |
| — | 権利変換計画の認可等を経て着工 |
| 2033〜2034年度 | 竣工予定 |
協議会発足(2012年)から竣工(2033〜2034年)まで、約20年以上。F南地区とほぼ同じ時間軸です。
周辺との位置関係
F東地区の隣には既存の高層ビルが建っています。
| 建物 | 規模 |
|---|---|
| シンクパークタワー | 地上30階・最高高さ140.5m |
| 大崎ステーションレジデンス等 | — |
F東地区はシンクパークタワーの北側に位置します。高さ約142mのビルが建てば、140.5mのシンクパークタワーとほぼ同じ高さのビルが並ぶことになります。
大崎駅西口の歴史を振り返ると、明電舎地区やソニー地区といった駅前の大規模工場街区の再開発から始まりました。1994年に品川区が「大崎駅西口地区のまちづくり」を提案し、東京都が「副都心育成・整備指針」を公表したことを受け、西口4地区と品川区で「大崎駅西口地区まちづくり協議会」を設立。以降、この協議会を中心に計画検討と事業間調整が行われてきました。
F南地区とF東地区は、その長い流れの中の最新の2事業という位置づけです。
まとめ:2つの事業の性格
F南地区(完成済み)
- 約0.6ha、総事業費約381億円
- 地上37階・高さ143m、延床約53,400㎡
- 住宅460戸が7〜36階、2〜5階に事務所、1階に保育所
- 木造密集市街地の共同化という目的
- 基壇型の低層部で街並みの連続性に配慮
- 中間免震構造、災害復旧期間も居住継続可能
- 2026年2月中旬 竣工(協議会発足から約20年)
F東地区(計画中)
- 約1.3ha、JR大崎駅から徒歩2分
- 地上24階・高さ約142m、延床約9万㎡
- 事務所中心(商業・住宅も)
- 旧耐震の老朽マンション建て替えが出発点
- 駅と西側住宅地の高低差を解消するデッキネットワーク
- エントランス広場を整備
- 2026年度末 都市計画決定 → 2033〜2034年度 竣工予定
大崎は工場街から副都心へ転換してきたエリアです。駅前の大規模工場が先に再開発され、残っていた木造密集市街地(F南)と老朽マンション街区(F東)が最後に手をつけられた——これが2つの事業の位置づけです。
そして両事業に共通するのが歩行者デッキです。F南は駅南改札から後背地へ、F東は駅と西側住宅地の高低差を越えて。大崎駅西口は、デッキで結ばれた街になっていきます。
よくある質問
Q. F南地区とF東地区の違いは?
F南地区は約0.6haに地上37階・高さ143mの住宅中心のタワー(460戸)で2026年2月に竣工済みです。F東地区は約1.3haに地上24階・高さ約142mのオフィス中心のビル(延床約9万㎡)で、2033〜2034年度の竣工予定です。
Q. F南地区はいつ完成した?
2026年2月中旬の竣工予定でした。事業完了は2027年2月末の予定です。2023年1月に新築工事が着工しています。
Q. F南地区は分譲マンション?
建築物環境計画書制度では分譲451戸とされていますが、住友不動産の高級賃貸マンションシリーズ「ラ・トゥール」になると言われています。最新の公式発表を確認してください。
Q. F東地区はいつ着工する?
2026年度末の都市計画決定、2027年度末の本組合設立を経て、権利変換計画の認可などの後に着工する予定です。竣工は2033〜2034年度の予定です。
Q. 大崎駅からの距離は?
F東地区はJR大崎駅から徒歩2分で、駅にデッキで接続する計画です。F南地区は大崎駅南改札から連続した歩行者デッキネットワークで結ばれます。

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