日本中で「アリーナ建設ラッシュ」が起きている理由

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ここ数年、「また新しいアリーナができるらしい」というニュースをあちこちで見かけませんか。
東京や横浜だけでなく、佐賀や沖縄、神戸、名古屋、香川…地方都市まで含めて、日本全国でアリーナ建設が一気に増えています。

この記事では

  1. まず「どこでどんなアリーナができているのか」をざっと整理し、
  2. そのうえで「なぜ日本全国でアリーナ建設ブームが起きているのか」を、スポーツ・音楽・都市政策の視点から掘り下げていきます。

1. いま日本で何が起きている?アリーナ新設・開業ラッシュの実態

首都圏:巨大アリーナが次々と

● ぴあアリーナMM(神奈川・横浜)
2020年開業。最大約1万2,141人を収容する、日本初の“民設民営”大規模アリーナとしてスタートしました。ぴあアリーナMM – PIA ARENA MM+1

● 有明アリーナ(東京)
東京五輪のバレーボール会場として整備され、その後は約1万5,000人を収容する大型多目的アリーナとして、スポーツから音楽ライブまで幅広く活用されています。ウィキペディア+1

● 東京ガーデンシアター(東京・有明)
2020年オープン、約8,000人収容の大規模ホール。どの席からもステージが近く感じられるように設計された、ライブ向け会場です。Real Sound|リアルサウンド

● Kアリーナ横浜(神奈川・横浜)
2023年9月開業。約2万人を収容できる「音楽特化型アリーナ」として世界最大級の規模を誇ります。開業から1年のライブ動員数は約184万人で、世界のアリーナランキングでマディソン・スクエア・ガーデンに次ぐ“世界2位”の動員数を記録しました。ウィキペディア+1

さらに2025年には東京駅前に「トヨタアリーナ東京(仮称)」が開業予定と報じられており、首都圏だけでもアリーナの“密度”は一気に高まっています。東洋経済オンライン+1


地方都市:Bリーグ&地域集客を担う「中核アリーナ」

ブームは東京・横浜にとどまりません。むしろ“熱い”のは地方都市です。

● 沖縄アリーナ(沖縄県沖縄市)
2021年完成。最大収容人数は1万人(スポーツ時8,500〜8,000人規模)で、沖縄県内最大の多目的施設。「観るためのアリーナ」を掲げ、Bリーグ・琉球ゴールデンキングスの本拠地として、そしてコンサートやMICEも担う集客拠点になっています。ウィキペディア+1

● SAGAアリーナ(佐賀県佐賀市)
2023年5月開業、最大約8,400人収容の「九州最大級アリーナ」。県のスポーツ拠点である「SAGAサンライズパーク」の中核で、スポーツだけでなくコンサートや展示会、地域イベントなど“交流拠点”としても位置付けられています。ウィキペディア+2佐賀イノベーションプレイス+2

● ジーライオンアリーナ神戸(兵庫県神戸市・ワールド記念ホール建替)
2025年春、1万人規模の新アリーナとして生まれ変わる予定。音楽・スポーツ・MICEを複合的に取り込む“港町神戸の新しい顔”として期待されています。アメーバブログ(アメブロ)+1

● IG アリーナ(愛知県名古屋市)
2025年夏開業予定、収容約1万7,000人クラスの大規模アリーナ。Bリーグやコンサート、展示会などを想定し、中部圏の新たなエンタメ拠点になる構想です。東洋経済オンライン+1

● あなぶきアリーナ香川(香川県高松市)
香川県立体育館の建て替えとして整備された新アリーナで、すでに2025年にはオープン済み。Bリーグやバレーボールなどの試合に加え、各種イベントを受け止める「四国のハコ」として機能し始めています。東洋経済オンライン+1

このほかにも各地で、老朽化した総合体育館や市民体育館の建て替えに合わせて、「旧来型の体育館」から「最新の多目的アリーナ」へと脱皮するプロジェクトが相次いでいます。旭川市や小樽市のように、築40〜50年の体育館の老朽化や耐震性不足、空調未整備を理由に、建て替え・機能強化を図るケースが代表例です。旭川市ホームページ+1


データで見る「アリーナ建設ラッシュ」

数字で見ても、この動きは“ブーム”と言っていい状況です。

  • スポーツ庁が2025年1月時点でまとめた資料によると、
    全国でスタジアム34件、アリーナ45件、合計79件の新設・建て替え構想が進行中 とされています。文部科学省
  • 別の調査では、政令市から中核市クラスまで含めると、大型アリーナの計画・構想はすでに100件超に達しているとも指摘されています。note(ノート)

つまり「なんとなくアリーナが増えている」どころではなく、
国策と市場の両方を背景にした、全国レベルのアリーナ建設ラッシュが起きている、というのが現状です。


2. なぜアリーナ建設がブームになっているのか? 6つの理由

では、なぜここまで日本中でアリーナが求められているのでしょうか。
背景を大きく6つに分けて整理してみます。


理由① Bリーグの「アリーナ構想」と新リーグ基準

まず大きいのが 男子プロバスケットボールBリーグの存在 です。

Bリーグは、観戦体験と事業規模を一段引き上げるために「アリーナ構想」を掲げ、
新リーグ(B.LEAGUE ONEなど)に向けて、入場者数や売上だけでなく、

  • 一定規模以上の観客席数(B1基準3,000席以上など)
  • 観客動線やVIP席、ホスピタリティスペースを備えた“専用アリーナ”

といったハード面の条件をライセンス基準に組み込み始めました。biz.more.tiget.net+1

これにより、

  • 既存の市立体育館では基準を満たせない
  • 新リーグに残るためには、クラブと自治体が協力して 新アリーナを整備する必要がある

という構造が生まれ、各地で「ホームアリーナ新設プロジェクト」が一気に動き出したわけです。
SAGAアリーナやLaLa arena TOKYO-BAY(千葉)、横浜BUNTAI など、多くがBリーグクラブを柱にした計画です。note(ノート)+2biz.more.tiget.net+2


理由② 国の「スタジアム・アリーナ改革」政策

もう一つの大きなドライバーが、国の政策です。

2016年、スポーツ庁は「スタジアム・アリーナ改革指針」を公表し、
スタジアム・アリーナを

「スポーツを通じた経済活性化・地域活性化の基盤」

と位置づけ、

  • 収益性向上
  • 民間資金の活用(PPP/PFI、コンセッション)
  • 周辺エリアとの一体開発

などの方向性を示しました。文部科学省+2文部科学省+2

この指針を受けて、地方自治体の側も

  • 老朽化した体育館の単純な建て替えではなく、
  • 「都市のランドマーク」「交流拠点」として、収益も見込めるアリーナを整備する

という発想に切り替わってきています。


理由③ ライブエンタメ市場の拡大と「ポストコロナ」の反動

アリーナブームは、音楽・エンタメ業界側のニーズとも強く結びついています。

ここ数年、K-POPやアニメコンテンツ、VTuber、フェス文化などに支えられて、
日本のライブ・エンタメ市場は再び拡大傾向にあります。

さらに、コロナ禍で一度止まったツアーが再開したことによる“反動需要”も重なり、
全国的に「アリーナクラスの公演枠」が足りない状態が続いています。biz.more.tiget.net+1

その結果、

  • アーティスト側:
    「地方も含めてアリーナツアーを組みたいけれど、使える会場が限られている」
  • 自治体側:
    「最新アリーナを整備すれば、全国ツアーの一拠点として選ばれ、観光客・宿泊客を呼び込める」

という利害の一致が起き、「音楽×スポーツ」のタッグでアリーナ整備が加速している、という構図です。biz.more.tiget.net+2biz.more.tiget.net+2


理由④ 老朽化した体育館の更新+防災拠点化

高度経済成長期〜1980年代に建てられた市民体育館や総合体育館は、
すでに築40〜50年を迎えているものが多く、

  • コンクリートや設備の老朽化
  • 旧耐震基準による耐震性不足
  • 空調設備がなく「夏は暑く冬は寒い」
  • バリアフリーやユニバーサルデザインへの未対応

といった課題を抱えています。旭川市ホームページ+1

旭川市や小樽市の計画資料を見ると、

  • 「改修では根本的な課題解決は難しいため、建て替えを選択」
  • 「災害時の防災拠点としての機能強化」
  • 「大会・イベント需要に対応できる多機能アリーナ化」

といったキーワードが並んでおり、
“古い体育館の更新”が“新しい多目的アリーナ整備”に置き換わっていることがわかります。旭川市ホームページ+1


理由⑤ 地方都市の「集客エンジン」としての期待

地方都市にとって、アリーナは単なる体育館ではなく、

  • 観光客・ビジネス客を呼び込む装置
  • 周辺のホテル・飲食・商業施設への波及効果を生む“エンジン”

として期待されています。

例えば、

  • 沖縄アリーナでは、開業から5年間で約31億円の経済効果が見込まれるとされています。公明党+1
  • SAGAアリーナはスポーツ庁の「多様な世代が集う交流拠点としてのスタジアム・アリーナ」に選定され、地域交流・観光振興の中核として位置付けられています。佐賀イノベーションプレイス+2SAGAサンライズパーク+2

Bリーグの試合やコンサートがある日は、

  • 宿泊需要(ホテル)
  • 外食・カフェ・バー
  • 物販(グッズ・土産物)

が一気に伸びるため、「アリーナ=地元経済の起爆剤」という考え方は、地方ほど強いと言えます。


理由⑥ PPP・PFIによる「民間ビジネス」としての可能性

最後に、**ビジネスモデルとしての“旨味”**も、アリーナブームを後押ししています。

近年のアリーナ整備は、

  • PPP/PFI方式
  • コンセッション(運営権売却)
  • デベロッパー×エンタメ企業×スポーツクラブのコンソーシアム

といった形で、民間資金を組み込むケースが増えています。note(ノート)+2経済産業省+2

例えば、

  • 商業施設やホテルと一体開発する
  • 周辺のオフィス・マンション開発とセットで街づくりを行う
  • 平日昼間は企業イベントや展示会、夜はスポーツ・ライブで稼働率を高める

といった **“アリーナ単体で赤字でも、街全体で黒字にする”**発想が一般化しつつあります。

もちろん、これがうまくいくかどうかは地域ごとに差がありますが、
少なくとも「民間が投資したくなるだけのビジネスの形」が見えてきたからこそ、
全国でアリーナ計画が一気に増えた、という側面は無視できません。あ、そんなことまで。|電音エンジニアリングの情報発信サイト+1


3. ブームの陰にあるリスクと課題

ここまで見ると“いいことづくめ”に見えますが、当然リスクもあります。

  • 地域の人口やイベント数に対してキャパシティが過大で、稼働率が上がらず赤字
  • Bリーグチームの成績や人気に依存してしまい、チームの浮き沈みがそのままアリーナの収益に直結
  • 周辺インフラ(交通・駐車場)が整備されず、住民からの反発を招くケース

など、過去の「箱もの行政」の再来を懸念する声も現れ始めています。note(ノート)+1

特にPPP・PFI方式の場合、

  • 需要予測が楽観的すぎると、
    → 公共側が“出資増額・補填”を求められるリスク
  • 逆に民間のリターンを優先しすぎると、
    → 地域住民の利用料金が高くなり、公共施設としての役割が薄れるリスク

も指摘されています。note(ノート)+1


4. まとめ:アリーナは「街のステージ」をどう変えるのか

日本全国でアリーナ建設がブームになっている背景には、

  1. Bリーグのアリーナ構想と新リーグ基準
  2. 国のスタジアム・アリーナ改革(地域経済の起爆剤という発想)
  3. ライブ・エンタメ市場の再拡大とポストコロナ需要
  4. 老朽化した体育館の更新&防災拠点化
  5. 地方都市が求める“集客エンジン”としての期待
  6. PPP・PFIなど、民間資金を呼び込めるビジネスモデルの成立

といった複数の要素が絡み合っていることがわかりました。

アリーナは、単なる「スポーツ施設」でも「コンサート会場」でもなく、
その街の“ステージ”そのものをデザインし直す装置になりつつあります。

  • そこにどんなスポーツチームが根付き、
  • どんな音楽やイベントが集まり、
  • 周辺にどんな人の流れや商業が生まれるのか。

アリーナ建設ラッシュは、
「日本の地方都市をこれからどんなかたちでアップデートしていくのか」
という、もっと大きな問いの一つの答え方だと言えるかもしれません。

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