築地本願寺の目の前、東京メトロ日比谷線「築地」駅に隣接する街区で、高さ約110mのオフィスビルの建設が動き出しています。築地二丁目地区第一種市街地再開発事業です。
区域は約0.6ha。この連載で扱ってきた築地市場跡地(約19万㎡)やHIBIYA CROSSPARK(延床110万㎡)と比べると、かなり小ぶりな事業です。
ただしこのプロジェクト、築地エリア全体の変化の「先行開発」として位置づけられています。規模の割に影響が大きい。その理由を整理します。
事業の基本情報
地図:OpenStreetMap/位置・範囲は概略です。広場や動線の位置は公表イメージをもとにした模式表示です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 事業名 | 築地二丁目地区第一種市街地再開発事業 |
| 所在地 | 東京都中央区築地二丁目 |
| 施行者 | 日鉄興和不動産・NTT都市開発(個人施行) |
| 区域面積 | 約0.6ha |
| 敷地面積 | 約5,050㎡ |
| 延床面積 | 約56,300㎡ |
| 規模 | 地上20階・地下2階/高さ約110m |
| 主な用途 | 事務所、店舗、駐車場等 |
| 設計 | 日本設計 |
| 施工 | 西松建設 |
| 事業費 | 約432億円 |
注意点が一つ。階数と延床面積は資料によって「地上21階・約57,300㎡」と「地上20階・約56,300㎡」の2種類が流通しています。これは計画の精査による変更で、2026年の権利変換計画認可時点では地上20階・約56,300㎡が最新です。
この場所に建っていたのは、アーバンネット築地第一ビル(1990年)、第29興和ビル本館(1975年)、NTTデータ築地ビル(1977年)など築30〜50年の中規模ビル群でした。
完成イメージがこちらです。


何ができるのか
建物の中身はシンプルです。
| 部分 | 内容 |
|---|---|
| 中高層部 | オフィス(基準階面積約590坪の無柱空間) |
| 低層部・地下 | 商業施設(築地駅と平成通りを結ぶ歩行者動線沿い) |
| 地下 | 築地駅に直結、駐車場 |
基準階590坪というのは、築地エリアでは最高水準のオフィススペックです。周辺は中小規模のビルが中心で、これだけのフロアプレートを持つビルは存在しませんでした。
周囲への影響①:築地駅に「駅前広場」ができる
この事業で最も生活に直結する変化がこれです。
築地駅には、これまで駅前広場がありませんでした。新大橋通りの歩道に地下鉄の出入口が直接開いているだけで、人が滞留する空間がない。築地本願寺と場外市場に大量の観光客が訪れるにもかかわらず、です。
この再開発では以下が整備されます。
- 新大橋通り沿いに駅前広場(築地駅では初)
- 広場に新たな地下鉄出入口を新設
- 階段・エスカレーター・バリアフリー対応のエレベーターを整備
- 地下1階で築地駅と直結し、敷地内に新たな改札口を設置
- 平成通り側に大規模交流広場と緑化空間
つまり新大橋通り側から平成通り側へ、建物の中を通り抜けられるようになります。地下も同様で、築地駅から地下通路を通って平成通り側へ抜けられます。
約0.6haという小さな事業が、駅の使い勝手を根本から変える——これがこの再開発の実質的な意義です。
駅前広場と広場空間のイメージがこちらです。



周囲への影響②:3つの大事業に囲まれる立地
この事業の本当の意味は、周辺で何が起きているかを見ないとわかりません。
| 事業 | 内容 | 距離感 |
|---|---|---|
| 築地地区まちづくり事業 | 旧築地市場跡地・約19万㎡・5万人スタジアム | 徒歩圏 |
| 築地川アメニティ整備構想 | 首都高の大規模更新と連携した親水空間整備 | 隣接 |
| HIBIYA CROSSPARK | 日比谷の110万㎡再開発 | 日比谷線で数駅 |
施行者自身が、旧築地市場跡地の「築地地区まちづくり事業」や「築地川アメニティ整備構想」が具体的に進展し、街づくり機運が一層高まっているエリアだと説明しています。
そして自らを「築地地区における先行開発プロジェクト」と位置づけています。
順番が重要です。
- 築地二丁目地区:2031年1月竣工
- 築地市場跡地:まちびらき2030年代前半
つまりこの110mのビルが、築地の新しい姿の「第1号」になります。19万㎡の大事業が動き出す直前に、駅前が整備され、エリア最高水準のオフィスが供給される。受け皿を先につくるという順序です。
周囲への影響③:防災機能の底上げ
築地は観光客と通勤者が大量に集まるのに、滞留空間が乏しいエリアでした。この事業では防災面も強化されます。
- 災害時の一時待機場所となる大規模交流広場
- 地域用防災備蓄倉庫(約30㎡)
- 帰宅困難者用の防災備蓄倉庫(約50㎡)
- 雨水貯留施設(雨水利用分 約150㎥以上)
- 雨水貯留槽(流出抑制用 約260㎥以上)
築地本願寺と場外市場に観光客が集中する立地で、一時待機できる広場ができる意味は大きいと言えます。
スケジュール
| 時期 | できごと |
|---|---|
| 令和5年(2023年)8月 | 都市計画決定(高度利用地区) |
| 2024年7月31日 | 施行認可 |
| 2024年12月1日 | 既存建物の解体工事開始 |
| 2026年7月 | 権利変換計画認可/民間都市再生事業計画の認定 |
| 2027年2月1日 | 本体工事着工 |
| 2031年1月31日 | 竣工 |
※東京都の公表では「令和11年度(2029年度)完了予定」ですが、施行者の最新発表では2027年2月着工・2031年1月竣工となっています。計画の精査で後ろ倒しになっています。
現在は解体工事が進行中で、着工は2027年2月です。
まとめ:小さいが効く再開発
- 築地本願寺前・築地駅隣接の約0.6haで進む再開発
- 地上20階・高さ約110m、延床約56,300㎡のオフィス+商業
- 基準階約590坪の無柱空間——築地エリア最高水準
- 築地駅初の駅前広場と新改札口、地下直結
- 新大橋通りから平成通りへ地上・地下で通り抜け可能に
- 帰宅困難者用備蓄倉庫、一時待機場所となる大規模広場で防災性向上
- 築地市場跡地の大事業に先行する「第1号」という位置づけ
19万㎡のスタジアム計画に比べれば地味ですが、築地に通う人・訪れる人の体験を最初に変えるのはこちらの事業です。
築地駅を使ったことがある人なら、あの狭い出入口が広場に変わる意味がわかるはずです。竣工は2031年1月。まだ先ですが、2027年2月の着工で街の景色は一変します。
よくある質問
Q. 築地二丁目地区の再開発はいつ完成する?
施行者の発表では2027年2月1日着工、2031年1月31日竣工予定です。東京都の資料では令和11年度(2029年度)完了予定とされており、計画の精査で時期が変更されています。
Q. どんなビルが建つ?
地上20階・地下2階、高さ約110mのオフィス・商業複合ビルです。延床面積は約56,300㎡、オフィスの基準階面積は約590坪の無柱空間です。
Q. 築地駅とつながる?
はい。地下1階で東京メトロ日比谷線「築地」駅と直結し、敷地内に新たな改札口が設置されます。新大橋通り側には築地駅で初となる駅前広場も整備されます。
Q. 場所はどこ?
東京都中央区築地二丁目。築地本願寺や中央区立京橋築地小学校の近隣で、新大橋通りと平成通りに挟まれた区域です。
Q. 旧築地市場跡地の開発とは別事業?
別事業です。旧築地市場跡地は「築地地区まちづくり事業」(築地五丁目・六丁目)で、こちらは築地二丁目の民間再開発です。ただし施行者は自らを築地地区の「先行開発プロジェクト」と位置づけています。


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