〜“形”よりも“用途”で街をよくする建築を考えよう〜
はじめに:設計課題で「勝つ」とは何か
建築学科に入って最初の設計課題。
数メートル四方の小さな敷地に、思い思いの建物を建てるという課題がよく出されます。僕の大学では6メートル立方の土地でした。
多くの学生が最初に意識するのは「かっこいい形」や「面白い外観」でしょう。
でも、実はそれだけでは“勝てません”。
この課題で優秀作品に選ばれた経験から断言できます。勝てるわけがありません。
この設計課題で本当に評価されるのは、**建物の形そのものよりも、「その土地にどんな用途を与えたか」**という点です。
土地と建物の「用途」が街を変える
どんなに小さな敷地でも、建物を建てるということは街に新しい機能を加えるということです。
つまり、あなたの設計が「街をどう変えるか」が問われているのです。
たとえば──
| 用途 | 街にもたらす影響の例 |
|---|---|
| 小さなカフェ | 通りににぎわいを生む。人の流れができる。 |
| 住宅 | 生活の温かみや安心感をつくる。 |
| アトリエやギャラリー | 文化的な刺激を与える。 |
| 小さな図書室 | 学びの場を地域に開く。 |
| 学生のシェアスペース | 若い人同士の交流を生む。 |
たった数メートルの土地でも、どんな活動を生むかで街の印象は変わります。
設計とは、形をつくることではなく、人の行動や関係をデザインすることなのです。
「形」よりも「理由」が大切
設計課題で差がつくポイントは、形の派手さではなく、
その形に“なぜ”なったのかという理由が明確かどうかです。
- どうしてその用途を選んだのか?
- どんな人に使ってほしいのか?
- その活動が街のどんな課題を解決するのか?
この「理由」がはっきりしていれば、形は自然とついてきます。
逆に、形だけ先に決めてしまうと、発表のときに**「で、何の建物なの?」**と聞かれて答えられなくなります。
“街をよくする建築”を考えるという視点
建築の本質は「街の一部として、人々の暮らしを支えること」です。
たとえ模型が10cmでも、そこに込める思想は本物の建築と同じスケールで考えていいのです。
設計の初期段階で、こんな問いを自分にしてみてください。
- この土地の周りには、どんな人が通っているだろう?
- この街に足りないものは何だろう?
- この建物ができたら、人の動きはどう変わるだろう?
その答えを“用途”として設定することで、作品に一貫性と説得力が生まれます。
それこそが、設計課題で最も強い武器になります。
例:同じ土地でも、用途が変われば建築も変わる
たとえば、3m×3mの小さな角地があったとします。
ここに「休憩スペース」をつくるのか、「小さな本屋」をつくるのかで、建物の形や性格はまったく違います。
| 用途 | 主な利用者 | 建物の特徴 |
|---|---|---|
| 休憩スペース | 通行人 | 開放的・ベンチや日除けが中心 |
| 小さな本屋 | 近所の人・学生 | 壁を活かした本棚・静かな空間 |
| コーヒースタンド | 通勤者 | 軒下・通りと一体化した設計 |
| ギャラリー | 観光客・アーティスト | 光を制御・内部空間が主役 |
つまり、形態(フォルム)は用途の結果にすぎないのです。
用途を的確に設定できれば、建物の形には自然な説得力が宿ります。
よくあった例
全体の講評会でよく見かけたのは「カフェ」や「休憩所」です。用途があいまいなものを建ててどうするのでしょうか。廃墟になるだけですよ。どんなにカッコよくたって。
カフェも問題です。カフェが街に影響を及ぼす要素で最も大きいのはどんな経営をするのかですよ。建築の力ではありません。建築の力で街を良くしていけるような用途にしなければなりません。
形態が先行して用途を何にしようか迷ってるあなた。スクラップを設計していませんか。
設計課題で勝つコツ
- 土地の特徴を読み取る
日当たり、風、通りの人の流れ、近くの建物との関係。
土地を“読む力”がすべての出発点です。 - 用途を決めるときに「街への効果」を意識する
誰のために、どんな行動を起こすための場所かを明確にしましょう。 - 形は“後から”考える
用途と土地が決まれば、形は自然に決まっていきます。
形を“デザインする”というより、“導き出す”感覚が大切です。
おわりに:最初の課題は、建築の「原点」を学ぶ機会
初めての設計課題は、建築家としての考え方の原点をつくるチャンスです。
「どんな建物をつくるか」よりも、
「その建物で何を生み出すか」を考えてみてください。
建築は街をよくするための道具です。
あなたが考えた用途が、人を動かし、街の空気を少し変える。
そんな一歩を踏み出せた人が、設計課題で本当に“勝つ”人です。

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